彼氏と別れた。

彼氏と別れた。3ヶ月だった。知り合ってからは半年。
マッチングアプリで出会った人だった。
私には高校2年生のとき、彼氏がいた。10ヶ月で別れちゃったけど、波長がめちゃくちゃ合って、話すのが楽しくて、すらすら一緒にいられるような人。
そんな彼氏と別れて、めちゃくちゃ泣いた。めちゃくちゃ引きずった。別れてからも気持ちは十分伝えたし、復縁を申し込んだこともあったけど、全部だめだった。早く忘れたいのに、高校3年生にして同じクラスになって、掃除の班も同じになって、嫌でも顔を見るから、忘れたくても忘れられなかった。なによりその彼氏の顔が好きだった。めちゃくちゃタイプだった。別れ際にその人にされた悲しいことを思い出しても、顔が好きすぎて、上回るくらいだった。
その人は関西に、私は東京に進学した。
結局別れてから最後までまともに話さなかったし、距離も離れてるんじゃ、もう二度と会わないんだな、と思った。
顔を見なくなってからは、さすがにだんだん忘れられるだろうと思ってたし、それを望んでいたはずなのに。
あの人のことを忘れる、その現実味を帯びだしてからは、やっぱり悲しくて仕方がなかった。
早くその人の存在丸ごと忘れてしまいたかった。
私は、マッチングアプリを始めた。


マッチングアプリは高校生以下は使えないから、4月1日になった瞬間に始めた。
まだ大学もバイトも始めていなくて、東京に知り合いがいないうちに。
スワイプ、スワイプ、スワイプ。

君がいた。

私に来た「いいね!」欄、当時18歳の私にお見合いを申し込むおじさんや、ナルシストなお兄様方、普通に特に惹かれなかった人たち。
スワイプ、スワイプ、スワイプしているうちに、君が現れた。

あっぶねー、流れでスワイプするところだった。

言語化するのは難しい。真顔、だけど少し照れてそうな、なんとも言えない顔で自撮りピースをサムネイルにしていた君。
トップ一言は、「東京在住、20歳、(ユザネ)といいます」。
自己紹介文が良かった。自己主張がなく、ナルシストみも、自己肯定感が低い感じも出ていない。ただ、自分らしく生きているような人だと思った。
他の写真も良かった。他撮りばっかりで、それも人が撮りたくて撮った写真を引っ張ってきたような、他撮りと言えどもポーズを決めているわけでもなく、とにかく、刺さった。
自分の写真をたくさん出すのにも抵抗が無さそうなところも良かった。過度に自分に自信があるわけでもなく、ないわけでもなく。

好きなものカード欄もよかった。
好きなもの、野球観戦、ポケモン、自然、寝ること、綺麗な海。
一緒に行きたいところ、チームラボ、イルミネーション、ディズニー、水族館。
その中に一枚だけ、「真剣に付き合いたいです。」というカードを選んでいたのもかわいかった。
私がスワイプしてきた人たちは、「混浴好き」とか、「居酒屋デートあり!」とか、「低身長好き」「付き合ったら一途です」とか、絶妙に気持ち悪いな、と思うカードを選んでいることが多かったから。

いちばんいいな、と思ったのは、君の自己紹介文の、「先日2年間付き合った彼女と別れてしまったのでアプリを始めてみました。」
利害の一致。傷の舐め合い。
友達になれると思ったんだ。


そこからはトントン拍子だった。たまたまログインしている時間帯が同じだったのがでかいと思うけど、DMの一言目が、「よろしくお願いします!仲良くしてください仲良くしてください🙏」。
なんでこの人2回も仲良くしてください繰り返してるんだ、てかなんか芸人みたいだな。
他にもマッチングした人はいたけど、いちばんアプリらしくない、定型文らしくない、よそよそしくない、親しみのある文章だった。
その時点でもう気に入ってしまっていた。メッセージを返すのに気後れは全く無く、「絶対に友達になりたい」という気持ちでポンポン返した。
トントン拍子に通話する流れになった。

実際話してみたら思ったより芸人ぽくはなく(というか全く)、絶え間なく話し続けるような人ではなかった。
でもきちんと私の話を聞いてレスポンスしてくれるのが嬉しくて、いい子だな、と思った。
絶対逃したくないと思ったから、私から「今度会おうよ」と誘った。
少し間が空いたあとに、「…いいよ!」と返事が来た。「初めてだ」と笑っていた。
照れていたのがかわいくて、実際に会うだけじゃなく、通話自体もしたのは私が初めてだと言っていて、嬉しかった。私も同じだったから。
しかも向こうはアプリは1週間前に始めたと言っていたのに、通話したのも私が初めてになれて嬉しかった。

インスタを交換した。直接会うんだし、リアアカを交換するのはまあいいんだけど、あの人、ただのリアアカじゃなくて、名前が本名漢字フルネームだった。地元の友達とのストーリーズハイライトや投稿もしてあって、リアアカすぎるリアアカだった。警戒心とか無いのか、大丈夫か、と思ったけど、絶対この人悪い人じゃないな、と分かったから、安心できた。
大丈夫だよ、私もあなたを攻撃しないから。


巣鴨駅の改札外で待ち合わせをした。いた。
初めて姿を見たとき、本当にびっくりした。
めっっっっちゃかっこよかった。肌も白くて綺麗で、あの人の周りだけ発光しているように見えた。キラキラしていた。『流れ星レンズ』という少女漫画があるけど、まさにあんな感じだった。
写真もだいぶかっこよかったけど、実物がとんでもなかった。
写真より実物の方がかっこいい人に、初めて会った。
しかも顔がめっちゃ彫刻みたいだった。私は自分の顔が彫りが浅いから、男顔な人がかっこいいなと思うんだけど、あの人はまさにそうだった。
眉間から鼻根にかけての骨格がめちゃ綺麗で彫刻だと思ったし、エラは張ってないのにちゃんと立体的に出てる頬骨が本当に理想で、かっこよかった。
なんだけど色は白くて当時はロン毛だったから暑苦しくもむさ苦しくもなく、中性的すぎることもなく、本当にタイプだった。ドンピシャだった。
私はなんて当たりを引いたんだ、と思った。
まだ集合しただけの段階だったけど、もうすでに十分で、満足していた。

東京タワーに行った。普通に楽しかった。私はFさんという作家が好きなんだけど、その人が自身の書籍で「初デートは東京タワーに行った。東京のシンボルだし、初デートという大事な場面においてはいかにもなところに行くのがいいと思ったから」的なことを言っていて、納得したから。
まあ私たちの場合は初デートというより初マッチングアプリ会いだったけど、思い出として残しておくには東京タワーが舞台なのは美しい気がして、いかにもって感じで、満足していた。

東京タワーから六本木まで歩いて、都営大江戸線で新宿まで行き、ガストで夜ご飯を食べた。
普通に自分の分を支払おうと思ったら、奢ってくれた。私が食べた800円分。
奢ってもらうつもりじゃなかったからびっくりしたけど、向こうが引かなくて、奢ってもらった。
「年上なんで」とニヤついていたのが、良いと思った。

今日は楽しかったなー、もうこれで二度と会わないの悲しいな、でも良い思い出になったな。
好きな顔の男の人と一日遊べて楽しかったな、良い人で良かった、ほんとに私は当たり引いたな。

なんて思っていたら、向こうが「今日楽しかった」「また遊ぼ」って誘ってくれた。
正直顔がタイプすぎたし、イケメンで話しやすいのにオラついてなくて、でも陽キャな雰囲気で、でも元カノとは2年続くぐらいの一途さを持っていて。絶対モテるんだろうなと思ってたから、全く信じてなかった。
一緒にいて沈黙も気まずくなかったし、私はこれはこれでありだと思ってたけど、元彼と比較すると波長がぴったり合うわけでもなかったし、ずっとベラベラ自然と話し出すくらい盛り上がったわけでもなかったから。
だから、自分が気に入ってもらえた心当たりがなくて、信じてなかった。


でも君は本当に次も遊んでくれた。秋葉原のメイドカフェ。嫌がるかなと思いつつ、内心ニヤニヤしながら誘ったら意外とノリ気になってくれて、楽しみにしていて、びっくりしたけど嬉しかった。この人になら、素を出しても「引かれないかな」とか過度に気にする必要がなくて、羽が伸ばせるかもと思った。

結局付き合うまで7回遊んだ。かかった期間は3ヶ月。東京タワー、メイドカフェ、映画、映画、映画、カラオケ、散歩。

最後の方は手を繋いだり、頬を触られたり、ちょっと恋バナしたりしたけど、結局最後まで手を出されなかった。
マッチングアプリで出会った人にしては誠実すぎて、本当に感動した。
私は最悪殺されてもいいかって気持ちで、身分証は家に置いて、友達に誰とどこに行くから帰ってこなかったら警察と捜索求む、まで言って会いに行ってたから。




唐突ですが、このnoteはここで終わりです。
これは別れてから1,2週間の頃の私が泣きながら、過去に想いを馳せながら、書き留めた備忘録です。
途中で泣き疲れて寝てしまい、そのままにしていました。
別れてから1ヶ月と少しが経った現在、当時と比べてだいぶ考え方も変わったし、彼を見つめる眼差しも変わってきました。
また、時間があるときに、書き留めます。
別れてからすぐの時も今も変わらず思うのは、彼に出会えて良かったということ。
私にも全然、非あるわ。
別れてから一度も連絡を取っていないので、彼に別れてから時間が経ったあと二度目の拒否をされた経験がないので、まだ未来に希望を感じてしまいます。
でもまだ、連絡はしない。今はそのときじゃない。
3ヶ月後とかに私がさらに成長していたら、感情が落ち着いていたら、まだ彼のことを覚えていたら、また2人の歯車が回り出してくれないかなと思っています。
私は元気です。
あと、振られる側の方が楽です。

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