東京クロノスをネタバレなしで絶賛する

ごきげんよう
吸血鬼と人間のハイブリッドティーンエイジャー、九条林檎だ

つい5分前に全てを終わらせたばっかりの我だ
新鮮な感想を持ってきたぞ

東京クロノスとは

東京クロノスとはVRミステリーアドベンチャーゲームだ

先程終えたばかりの我はそれだけでは言い表せないと言葉を連ねてしまいそうになるが、
ここは堪えてもう少し説明しよう

国産VRゲームの中でも豪華なスタッフ陣が製作を務めたクオリティの保証されたゲームであり、
事前のクラウドファンディング(特定の目的の為資金を不特定多数から募ること)では驚異のスピードで目標金額を達成した

鮮やかなビジュアル、豪華なスタッフが話題を呼び、製品版への期待は非常に高かったと言えよう

ストーリーは、
誰もいない渋谷に閉じ込められた幼馴染8人が、
「私は死んだ。犯人は誰?」のメッセージを軸に失った記憶を手繰り寄せながら、
時に疑い、時に逃げ、時に衝突し、時に助け、助けられて脱出を目指すというものだ
その中で貴様は死に向き合い、疑い、そして貴様が殺すかどうかを決めるんだ

そう、誰でもない貴様だ
貴様はHMDの中で圧倒的な説得力に殴られるんだ
興味が湧いたか?

それでは気兼ねなく絶賛させてもらおう

ゲームの枠に収まらない体験

ゲーム、と聞いて尻込みする奴は我の他にもいるはずだ

特にミステリーともなればゲームが苦手な人間で正解が一生見つからず
真実が押し入れの中にあるという奴も少なくないだろう

このゲームに至ってはそんな心配はしなくていい

常に選択肢はわかりやすく、何度だってやり直すことも出来る
クリアした者の中で選択肢の少なさやそのわかりやすさへの不満がある者も見かけるが、
"ゲーム"に特段苦手意識があるような人間にこそ勧めたい

そして我がその時使う言葉はこうだ
"4Dのひとつの答えがここにある"

4Dと聞いて貴様は何を思い浮かべるか

映画という奴はなかなか多いだろう、我はそうだ
メガネをかけて飛び出してくる映画を3Dとして何を付け足せばもう1つ上の段階に持っていくことが出来るのか

匂いという答えもある、見ている者自身の動きという答えもある、その他にも風、煙、水しぶき……それら全部という答えだってある
我は実のところいまいちそれらの答えに釈然としていなかった
それらは全て刺激的な映画でしか本領を発揮しないからだ

静かに、だがしかし力強く心を揺さぶる映画とあまりにも相性が悪い
そういうストーリーをもう1段階上へは連れて行ってくれない

そういう考えを持った我が東京クロノスのクリアした今ひとつの答えとして、
これこそが4D、ストーリーをもう1つ上の段階に連れて行ってくれる力強い手だと言える

もちろんVRのゲーム全てが全てこういう訳ではない
この東京クロノスが丁寧に丁寧に作られたものであるからに他ならないのだ

本当に丁寧に作られたものはどこがいいだのそういうことさえ気づかせない
我なりに頑張って探したいい所を貴様に紹介しよう

それは画面の向こうの話だった

基本的には体験版をやれば分かる話と今クリアして感じた気持ちとで話していこう

全てを終えてスタッフロールを見ていた時我の脳裏には名作と言われたゲームの数々が浮かんでいた
MOTHER、メタルギア、シュタインズ・ゲート、ニーア……

自慢じゃないが我は感受性が高いため
怖いシーン驚くシーン悲しいシーンが極端に苦手だ、最終的には幻聴さえ聞こえてくる
そこにバッドエンドなんて来てみたらどうだ

絶命する

いいストーリーと言われるものは往々にしてハッピーエンドはない
人間に正解はなく不正解もないからだ
そういうストーリーは人間の心当たりを抉り、エモーショナルを生み出し、心を揺さぶる

画面の向こうから人生に、大きな、後味を残してくれるんだ

それもまた名作の形だ
人生はエモーショナルで構成される、それを彩ってくれる素晴らしい名作たち

だが我は影響され過ぎる
本当のところ少し怖かったんだ
東京クロノスはミステリーだ、誰かはもう既に死んでいる
悲しい展開は避けられないだろう
体験版を遊びその丁寧さを再確認した時、我は悲しみに暮れて永遠に戻ってこれないような気がしていた

しかしクリアした今我は気分が高揚し
爽やかな後味を何度も何度も思い出しながら味わっている

人を悲しませたりするのは意外と簡単なものだ、我がそうなりやすいだけかもしれんがな、ははは
この東京クロノスはVRの圧倒的な説得力で後味が爽やか、しかし決して物足りなくない奇跡のバランスを見せつけたんだ

誰にもある悲しみ、怒り、憎しみ、後悔、欲望の心当たりを的確に鮮やかに描きながらも、
決して見捨てず、正解のひとつを共に探してくれた

安易なハッピーエンドは不可解や不満、一種後味の悪さを感じさせるが、
東京クロノスは画面の中に貴様を引き入れ、点と点を綻びなく結びつけさせるんだ
そう、貴様に

貴様は貴様の手でハッピーエンドを手繰り寄せる

料理も自分で作ると美味いだろう?

ハッピーエンド保証、どんなにゲームが苦手でも貴様が諦めなければ道は開け、天使は微笑む
どんな悲しみにもショックにも立ち向かい貴様も早くここに来るといい

説得力、その訳は

体験版をプレイした時にある程度書いたが、今一度東京クロノスの説得力の訳を探そう

まず今回製品版でやっと気づいたんだが(我はそういうことに鈍いんだ)
基本的に全てがちょっと大きい、まさに映画サイズなんだ

我は体感2倍くらいに感じたがそれは丁度映画館で見る人物の大きさであるように思う

動画を作っていて画面の大きさを考えることがある、自身をどこまで映すか
人は最終的に人物やその顔に目がいく生き物だろう、それが眼前に占める割合が低いと物足りなさを感じることもある

我は配信を始めた当初はだいたい自分と同じくらいの目線の高さにカメラを置いていたんだが
途中から少し下げ我が画面に占める割合を増やしたんだ
ズームする手も考えたが我はあまりによく動くからな、フレームアウトしてしまうんだ、ははは

この東京クロノスではそこでズームをしたと考えられる

実際VRゲームの類で人と相対した時見えすぎてしまうと感じることがあるんだ
背景が視界に占める割合が大きい、リアリティと言えばリアリティだがせっかく自由にできるVRでわざわざリアルに寄せる必要もないだろう

丁度ノベルゲームを遊ぶ時画面を通して見ていた視界がそれによって再現されているようにも思う
視界が絞られることによって情報が絞られて人物の情動により引き込まれる

東京クロノスのプレイする中で一番動揺させられたのはやはり目線だろう
ノベルゲームを普通に遊んでいて絵の中の人物の目線が気になることなんてない
それが画面の中で全員に見つめられてみろ
貴様は幼馴染の1人として弁明しなければいけない気持ちになったり向けられる疑念に焦燥する

音楽には音が大きいと高音質に聞こえる効果がある

もちろん何事もやりすぎては毒だが今回のことで視界にも同じことが言えると確信した
適切に大きくすれば説得力を増すスパイスとなり引き込む際の強力な助けとなる

大きくなって説得力を増すのは人物だけでない
一瞬しか出てこないような背景がとても丁寧に知恵を凝らして作られている
それはズームすることで世界により集中させてくれるんだ

書けば書く程にその丁寧さを思い出して頭が下がるばかりだな

誰もいない渋谷という現実味がないがきちんと実在している舞台に貴様は飛び込んで手放しでそのうごめく感情に身を任せることが出来る
最後の爽快感はなかなか味わえるものではないだろう、貴様ら全員に体験させてやりたい気持ちでいっぱいだ

彼らはいるんだ

彼らはいる

一見動いていないと思う時もあるかもしれないが、よく目を凝らしてみるといい
髪は揺れ、瞬きをする

貴様が他の奴と話している時も表情を変え、手振りを変え、きちんとそこにいる
意識して見なければそれまでだが見てみるとその一つ一つの空間の厚さに圧倒されることだろう

嗚呼いい体験だった
ここまで書くのに2時間かかっているが未だ薄れることはない
濃厚で爽やかで決して後悔させない、素晴らしい体験だ

この心持ちは体験版だけでは味わうことが出来ない
VR機器を持っている全日本人がやるべきだ
最後まで気を緩めず全身全霊で飛び込めば東京クロノスは膨大なエモーショナルをくれる

LAM様を褒めるためだけに作ったコーナー

LAM様とは東京クロノスのキャラクターデザインを務めたイラストレーターのことだ

我はLAM様にこの姿を創り出していただいてこの人間界でバーチャルタレントとして活動している
故にファンである

いや正確にはその前からだがそれはここでは省くとして
LAM様、ママ上様パパ上様合体してマパ上様の描く目が何よりも好きなんだ

マパ上様の描く黒髪は鮮やかで瑞々しくて軽やかな美しさがある
瞳には万華鏡のように色彩が広がり
可愛いまつげには先にちょんがある、可愛い

もはや天才という他ない

マパ上様の絵には特に色において現実にはありえないような事ばかりだが
先程も言った通りVRをリアルに寄せる必要はないと考えているし、エンターテインメント全般にして我はそんなスタンスなんだ
だからマパ上様の絵は我の瞳にとても魅力的に映る

マパ上様の描いた浮き世離れしたその人物達は画面の中から現実ではない方法で
浮き世から誰もいない渋谷へ連れて行ってくれる

このゲームに関して言えばモデルのクオリティも賞賛すべきだろう
元の絵は好きだけど3Dになったらイメージ変わっちゃって嫌だな……みたいなことはよくある
そこの落差を最小限に抑え、魅力を最大限3Dに描き出した登場人物のビジュアル、大好きになった

人物や背景を隅から隅までじっくりと眺められるDLCを我はお待ちしております

最後に

褒めるべき点はまだまだあるがシステムやUIに関しては体験版の感想でほとんど言ってしまった


幾分か今回の感想よりも冷静だな、ははは


製品版で追加されたことと言えばOPやEDが単体で何度も見られることやスマホゲームなどで平面的に飛び出していたメニューが実際に飛び出す様を見られることやメニューで手軽に時間を確認できることや……おっともう1つ章が増えてしまうところだった

褒めても褒めたりないな、ここら辺で止めておこう

これは貴様の価値観を変えるゲームだ
爽やかで濃厚でかけがえのない体験を買えるんだ

OculusGoは安いぞ、VIVE proを使う我でも画質は全く気にならない
すぐに買って飛び込んで来い


我はいつだって全てを終えた貴様の興奮を共にしよう
それではごきげんよう、いい体験を