
坩堝の騎士オルドビスは自己との闘い
概要
エルデンリング本編のダンジョンボス、坩堝の騎士オルドビス戦を通して自分の一部を知った。それが面白かったし、受け入れたくない部分でもあったのでメモしたいと思った。
結論から言うと、このボスは本作でも特に好きなのだが『苦戦してるのは自分が短気だから』という事実に至らせてくれたからである。
推しボスでもあるので、個別に記事を書こうと思う。
前提として執筆時は既に2周目で撃破済であり、私のビルドは生命10の筋力と信仰99、持久40位の超脳筋である(1周目は筋力70~80位?)。
坩堝の騎士オルドビスとは
アルター高原王都外郭、アウレーザの英雄墓のボスである。
アウレーザの英雄墓はおそらく結構有名なダンジョンではないかと思う。
まずチャリオットが厭らしいし、その割にちょっと複雑で謎解きも謎のまま終わる。そしてここのボス撃破で手に入る武器『オルドビスの大剣』は筋バサの強武器として知られる一方、今回の主題であるボス『坩堝の騎士オルドビス』の難易度が結構高いということもあり、印象深い人も多いのではないかと思う。
坩堝の騎士オルドビスは坩堝の騎士シルリアと並んで坩堝騎士達の筆頭とされるボスだ。剣タイプ(以下、オルドビス型)だけでも強敵として知られるが、このダンジョンではそれを槍タイプ(以下、シルリア型)と2体同時に相手することになる。
繰り返すが、2体同時に相手する事になる。神肌のふたりと同じである。他の英雄墓でもここまで厄介なボスはおらず、難易度が高くなるのは必然だろう。
坩堝の騎士達の特徴
『エルデンリング』を象徴するかのような中ボスだと思う。嵐の丘の封牢でオルドビス型相手に苦しめられた人も多いだろう。
どちらの型にも共通の特徴があるので順々に列挙していこうと思う。
ここも結論だけ、1体だけならパリィに集中すればぶっちゃけ弱いが、パリィが出来なければ相当強い。
強弱の特徴がハッキリしているタイプの敵である。
以下特徴を順々に整理
1.回復狩りがえげつない
回復狩りの性能だけなら追憶ボス込みでも最高クラスだろう。ほぼ確実にボタンに反応して攻撃してくるため、回復する事が難しい。彼らの攻撃中ですら難しい。回復した途端、攻撃から踏み込み突きに派生して狩ってくる。緋雫に親でも殺されたんじゃないかと思うレベルである。
この攻撃は他ボスの回復狩りと比べても圧倒的な性能を有しており、スピード、リーチ、追尾性能全てにおいて隙が無い。神肌の黒炎などと比べても明らかに精度が高く、回復後の回避はほぼ間に合わないと考えた方が良い。
ボスとしては神肌の方が断然強い。だがあちらはある程度の距離があれば回復後の回避が間に合う。一方で、坩堝の騎士達は信じられないほど長い踏み込み距離を持つ上、普段からこちらとの間合いを詰めてこようとするAIも相まって間合いを取ること自体が難しい。猛ダッシュで逃げても場合によっては踏み込み突きに狩られてしまうからだ。
これにより、HPがミリまで減っていようと回復を我慢する勇気が求められる。つまり体力が多くても回復できずにやられてしまう事が多いボスだろう。彼らが強いと言われる最大の理由がこの回復狩りだと思う。
2.強靭が高い
次に、彼らは強靭が高い。怯まないわけではないものの、フィールドに出てくる敵としては最高クラスの強靭を有している。更にかなり攻撃的なAIとなっている点が厄介で、即ち無暗やたらと攻撃してしまうと確実に反撃を貰うことになる。
更に彼らはHPが高めで、1周目で順当なレベルで出会えばまずゴリ押すことはできないだろう。今回は2周目だったが、相性などもあってか結局ゴリ押しできないだけの硬さを有していた。体感は1周目の方が柔らかかったのではないかと思うほどだ。
3.攻撃が単純に強い
厄介な特徴である。
坩堝の騎士のモーションは標準的な大剣のモーションで、つまり無骨で無駄のない動きばかりだ。ここまで順当に武器を振るだけの敵も珍しいと思う。
他の中ボス達は多少大味なモーションを持っていることが多いが、坩堝の騎士は隙のできるモーションが極端に少ない。絵に書いたような剣術で戦う。当然、威力も十分に高い。
更に攻撃の派生が多く、大きな反撃のチャンスが少ない。特にオルドビス型ではこれが顕著だと思う。
HPが半分を切ると祈祷を使うようになるものの、これも大した隙にはならないどころか、威力と強靭の高さが相まってこちらの動きを制約するような技が多いため順当に強化される形となる。
総じて『ただの強い重装騎士』なのだが、だからこそ厄介なのだ。
4.パリィに弱い
今までの特徴だけ読むと相当強く見えそうだが実は簡単に倒せる。パリィに弱すぎるからだ。
彼らの攻撃は無駄がなく威力も高いものの、重装騎士らしく初動が遅めの攻撃が多いのでパリィのタイミングを掴みやすい。これは特にオルドビス型で顕著だが、シルリア型でも慣れてくるとやりやすい部類だと思う。そこらの雑魚兵の方がよほどパリィしにくいかもしれない。
しかもなんと、パリィ一回でダウンする。重装騎士なのに。
5.つまり坩堝の騎士とは
つまり彼らはモーション等が非常に強いが、それらを全てパリィで解決できる敵である。特長と照らし合わせて考えると分かりやすい。
パリィすれば回復したり、攻撃の派生も止められる。
強靭が高く隙が少ないのでカウンターが向く。
特徴を整理すると分かりやすいが、明らかに『パリィが推奨されるボス』として作られている。パリィできれば弱い。しかし失敗すると手痛い反撃を貰う事となってしまう。
言い方を変えると、坩堝の騎士とはハイリスクハイリターンな戦闘を楽しみやすくした良ボスなのだ。
でも2体同時はキツいって
つまり坩堝の騎士は『ただの強い重装騎士故に厄介だが、パリィが明確な弱点として設定されているボス』だ。
だからタイマンならパリィを練習するだけで良い。出来れば倒せる。出来なければ負ける。なーんだ単純 ♪
しかしそれが2体同時にいたらどうだろう。地獄である。
何度も書いているが、坩堝の騎士はパリィに弱い以外は全て強いのだ。回復狩り性能の高さ、詰め寄る動きと間合いの長さ、純粋に隙の少ない攻撃、高い強靭。全部強い。
いくらパリィしやすいといっても、その横に坩堝の騎士がもう1体敵がいたらどうなるか考えて欲しい。
彼らの攻撃判定と角度、位置が完全に一致していないと同時にパリィする事はできない。つまりそこには『ただの強い重装騎士』だけが残る。
このプレッシャーがヤバい
パリィを狙い、致命を入れて悦に浸っている中、後ろにフリーの坩堝の騎士がいるのだ。しかも大体すぐ近くにいる。
こっちは致命中で動けないのに、いつでも攻撃できる間合いで立っているのだ。そして実際にいつ攻撃してきてもおかしくないのだ。怖すぎでしょ。
しかも一度攻撃を食らったら(私の場合ビルドの関係で即死だが)回復が難しい。彼らの回復狩り性能が高すぎるからだ。オルドビス型でも十分高いのにシルリア型は更に高い。つまり被弾リスクが尋常じゃなく高い。
また特徴を整理するが、彼らはあまり距離を離さない点が『神肌のふたり』より厄介である。AIの関係上じりじりと距離を詰めて来るし、どちらも重装騎士なので行動のテンポが被っているからだ。更に間合いが長いので、つまりダウンを取っていない方のプレッシャーから開放される時間はほとんどないのである。
複数ボス全般にいえる事だが、実際にはフロムの配慮で完全に同時に攻撃してくることは多くはなく、順番待ちをしているような状態が多い。しかしそれでもその圧が半端ないとしか言いようがない。いつでも攻撃できるのだから当然である。まあ同時行動も結構な頻度でやってくるし。
更にHPが約6割になってからの形態変化がキツい。これは各々別の特徴を持っており、このボスの厄介さに拍車をかけている。
オルドビス型は通りすがる長距離突進により本体が大きく動く上、超広範囲攻撃をするようになる。
シルリア型は長距離からプレイヤーの場所に的確に突撃してくる上、遠距離攻撃とディレイのかかった投げをするようになる。
特徴が違うが、1体形態変化するだけでも戦況がかなり変わることが分かるだろう。
具体的には、オルドビス型が先に変化した場合、両者に挟まれる形になるのでどちらかがカメラから外れるため、カメラを含めて位置調整をやり直す必要が出てくる。これは単純に厄介なのが分かるだろう。
一方で、シルリア型が先に変化した場合は固定砲台が表れるようなイメージだ。シルリア型が先に変化するという状況は、そちらを先に処理しようとしている時に起こる。しかし彼が固定砲台化すると、その間にオルドビス型が距離を詰めてくるのでシルリア型に集中し辛くなってしまう点が厄介だ。
ということで、つまり『3×3=9』みたいな感じで、彼らはかなり高いシナジーを持っている。だからこそ強いのだが、しかし楽しいボスでもある。
丁寧に戦えば良いだけ
特徴から考えられる近接での攻略法は一つしかない。
彼らに距離が空くよう誘導し、じっくりとそのタイミングを待って瞬間的に1対1の状況を作る。そしてパリィを成功させて致命を取り、またその状況を待つ。これだけでいい。書くと単純である。プレッシャーはただの感情なのだから考えなくていいのだ。
しかし実際にやってみるとこれができなかったのだ。何故できなかったのか。苦戦してしまったのか。
プレッシャーに負けてしまうのだ。そして何より、欲張ってパリィを取りに行きたくなってしまうのである。これが本記事のポイントとなる。
真の敵は自分だった
ここまでで記載した通り『坩堝の騎士、オルドビス』は明確な回答があるタイプのボスだ。もちろんアクションゲームなら概ねそういうものなのだが、このボスではそれが特に顕著である。正解は見えている。安全に、丁寧に、そして怖気なければ確実に勝てるボスなのだ。強いし厄介なのだが、負けた時は自分が悪いボスだ。
オルドビス戦を近接で攻略する際のステップは必ず以下のようになる。
1.各々の攻撃に対応できるようになる
2.どちらを先に倒すか決め、狙う
3.丁寧にそれを実行する
1と2はゲームの腕の問題なので割愛する。人によって違うだろう。
しかし3はゲームの腕ではない。己との闘いが始まるのだ。このボスはそれが如実に表れる。
丁寧に戦えばいい。即ちビビらず、欲張らず、迷わなければいい。
しかしどれかが崩れた時、死ぬ。
私はオルドビス相手にかなり苦戦した。1周目でもそうだった。
つまり自分はどれかが崩れていて、崩れた要素から自己の弱さが分かってしまう。
私の場合、難しかったのは「欲張らない」ことだった。
ビビらないのは案外すぐできた。車に乗ると強気になる人がいるのと同じで、私はゲームをする時強気になるからだ。これは長くアクションゲーマーだった故、カウンター戦法への飽きに由来するものだ。
リスクに対してリターンを得ようと試みれるのは良い事なので、これは私の中で問題ではない。
「欲張らない」ことが苦手
リターンを得ようと試みれるのは良いが、やりすぎてしまうのだ。リスクリターン管理ではなく、負けに向かってしまう。つまり、欲張らない事が難しかった。
2体が密着していてもパリィを狙い、致命を取ろうとしてしまう。その可能性を考えてしまう。結果として実行し、2/3で負けるジャンケンの状況が出来上がり、死ぬ。
答えは単純で、引けばいい。つまり欲張らなければいいだけだ。
しかし、それが分かってからも中々やめられなかった。どうしても完全に安全でもないのに攻めてしまう。やめようとしても、その可能性を考えてしまう。考えは迷いとなり、対処が遅れて死に繋がる。フロムゲーマーなら分かるだろう。迷えば、敗れる。
オルドビス戦は3日ほど、2周目では4日ほどかかった気がするが(1日のプレイ時間が短いのもあるけど)その半分は自己との闘いだった。もう半分はステップ1と2。
自分で思っていたより自分は短気
3のステップで苦労し、その原因は「欲張らない」ことへの苦労だった。ここから簡単に分かる事実がある。自分は気が短いのだと知った。
欲張らない事ができない。即ち我慢が苦手なのだ。リスクの高い状況を回避せず、攻撃というリターンを求めてしまう傾向が強いという事がよく分かる。
アクションゲームにおける操作の要因で死んだこともあるが、後半は精神性に起因する死亡回数の多さに驚き、そしてその度に己の器の小ささを感じることとなった。正直ちょっと凹んだ。
死ぬ度に自らの気の短さを突き付けられ、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせた。焦るな焦るな。安全に丁寧に…。
意識を強くして戦い続け漸く倒せた時、少しでも自分が我慢強くなれていたのだろうかと思った。
少なくとも趣味のゲームではそうなったのだろう。しかし現実では分からない。きっとこの短気な内面は生活でも、仕事でも表れているはず。
坩堝の騎士オルドビスは自己との闘い
そんなわけでタイトルに戻る。
エルデンリングで難しい方とされている『坩堝の騎士オルドビス』では、2体の坩堝の騎士と同時戦闘を求められる。
このボスのプレッシャーは尋常ではない。2体の強力なボスからの圧力にずっと耐え続け、正確にパリィのタイミングを覚え、実行し続けなければならない。
しかし、実際に目の前にいるのは自己の内面であった。
この2つのオブジェクトが自己精神の弱さの権化なのだ。まるでサイレントヒル2の三角頭のようで、自分の弱さと直面しているかのような気分を味わえた。
なので記事にしようと思った。『坩堝の騎士、オルドビス』良いね!
なぜ良ボスなのか
プレイしている時も思っていたことがある。別に他のボスでも、他のゲームでもそうじゃね?という点である。
『丁寧に戦えばいいだけ』、それで全て解決できるからだ。
しかしSEKIROというブレイクスルーを経験した人なら分かると思うが、アクションゲームは所謂『ヒットアンドアウェイが最適問題』を既に超えてしまっている。
即ち『丁寧に戦えばいい』から、『リスクリターンのギリギリを詰める楽しさを求める』ことこそが今のゲームに求められているのだ。
そこで坩堝の騎士オルドビスの特徴を振り返ってみよう。こいつらはほぼ確実にこの戦法が最適解になる設計になっている(近接のソロプレイで攻略しようとした場合)。
正直ビルドもあまり関係ないと思う。HPが高ければ試行回数が増える代わりに死ににくくなり、HPを攻撃力に振れば試行回数が減る代わりに危険性が高まるだけだからだ。
「試行回数×死のリスク=ボスの危険性」と考えれば、本質は変わらないだろう(強いて言えば回復が難しいので火力振りの方が安全に思える)。
多分それが良かったのだと思う。つまり近接でこのボスと戦う時、エルデンリングはRPGではなく純粋なアクションゲームとなる。偶然か意図的なものかは開発者にしか分からないが、それは(戦闘テンポや能動性は全く違えど)SEKIROと同じく、アクションゲームそのものの本質を追求したボスとなっている。ファミコンと同じという事だ。攻撃はL2とR1しか押していない。
私の場合は『欲張らない』事が苦手だったが、『ビビらない』ことは出来ていたとも言える。『ビビりすぎ』が原因で苦労する人もいるだろう。こいつら相手にビビってしまうと攻撃機会の損失だけが増えていく。
即ち試行回数が増えないのにリスクだけが増えてしまうため、上記の掛け算で考えるとボスの危険性が上がるためだ。
(一応補足すると、反撃を試みない間にもボスは攻撃をし続けるためである。戦闘という時間の中で、プレイヤーが攻撃を試みていないと死のリスクだけが増えていくということ。つまり逃げに徹して安全に行動しているつもりが、実際のところリスクだけを負っている。これはアクションゲームの初心者が陥りやすい状況である。上級者でも序盤に様子見を優先する人はいるが、それは回避方法の模索であり、攻撃機会を獲得するための行為である点が異なる。)
そう考えると合点がいった。このボスは2体が上手く連動していて、更にシステムの噛み合いが非常によく、大半の人が同じ天秤の中で丁度良いバランスを探すことになる。そのシンプルさ故、アクションそのものを楽しめるのだ。
だから面白い。確信を持って良ボスだと言える。
ツリーガードのBGMの熱さも合わさり、戦闘自体が楽しかった。
エルデンリングの中でも特に、ほとんどのプレイヤーが同じ物差しの上で自分の最適解を探せる点が良ボスである所以である。
私はエルデンリングのパリィがあまり好きではなかった。
なぜならば、エルデンリングの特徴であるビルドの楽しさを失う行為だからである。パリィに関係するのは盾の方で、武器は関係ないので特大武器でも慈悲短剣でも持てば良くなってしまう。武器の個性をほとんど全て無くしてしまう。
対マレニアの動画など観てみると分かりやすい。パリィ主体の戦法では武器なんてなんでも良いのだ。
しかし、ここまで極端にパリィに寄せたボスと対面すると、結局楽しめてしまった。先に述べた通り、パリィ主体は武器自体の個性を消してしまう戦法だろう。しかしそれによって選択肢が減ることで、結果的にエルデンリングはRPGから純粋なアクションゲームになる。
他の倒し方もあるのだが、少なくとも近接ならほぼ共通だろう。
結論、『坩堝の騎士、オルドビス』はエルデンリングでは珍しく、純粋なアクション性の要素が非常に強いボスなのだ。
他のボスでパリィを『選択肢の一つ』として考えるのも面白いのだろう。今後何かの武器で試してみても良いのかもしれない。
パリィだけで戦うのは周回を考えると面白味に欠けると思うが、通常攻撃も含めた攻撃の補完として考えると案外楽しそうだ。
本作にはDLCも含めると多様なボスがいるが、こいつはその中でも最上級に好きになれたボスのうちのひとつであった。
