ウイルスに学ぶビジネス【ウイルスマーケティング概論】
神楽坂でお店を初めて3ヶ月。「どうやって集客するか」というビジネスにおける永遠の課題を悶々と考えていたら、ウイルスにたどり着いたのでここにまとめます。
皆様もご存知の通り、このウイルスの伝播力は凄まじいものがあります。テレビの視聴率20%でも奇跡!すごい!と言われますが、記憶に新しい「コロナウイルス」は日本人の半分の人がかかったとも言われます。 日本人の半分です。つまりインフルエンス能力でいえば右に出るものはございません。
コロナウイルスに限らず、毎年夏に流行るアデノウイルス、受験生の敵インフルエンザウイルス、撲滅された天然痘ウイルス…。ウイルスは気の遠くなる年月をかけて進化・淘汰を繰り返し今に至っています。よってウイルスのインフルエンス力を学ぶことは、マーケティング=商品を売る・広げる・インフルエンスすることにおいて非常に重要だと考えました。
バズるという言葉の語源もウイルスから来ているとされる説があります。
こうした考えから、わたしは変なマーケティング講座に行くより、ウイルス様に学んだ方がいいと考えウイルスを勉強し始めました。そしてこの学問のことを、私は「ウイルスマーケティング論」と名付け深めていくことにしました。
※バイラルマーケティングという専門用語はありますが、ここではウイルスは「話題を急速かつ広範囲に伝播させる」だけではありません。もっといろいろなウイルスの生存戦略がありますので、新たにウイルスマーケティング論とすることにしました。
ウイルスとは?ウイルスのズルい増え方
まずウイルスとは、非常に小さな病原体で、細菌と混同されがちですが、細菌はウイルスよりもずっと大きな存在です。細菌が大きな市バスだとすると、ウイルスはサッカーボールほどの大きさになります。
超絶に小さいものですから、ウイルスは1人で増えることができません。ウイルスは他の生き物の細胞に入り込み、宿主の遺伝情報=タンパク質の設計図に自分のウイルスの設計図をそっと挿入し、作らせるのです。ズルい!!
そして出来上がったウイルスは宿主の細胞を飛び出し、次の細胞へと感染します。こうして指数関数的に増えたウイルスにより病気を発症するという仕組みです。
この時、症状として体内で増えたウイルスが飛沫や体液を経由して他の生物個体に取り込まれ、また同様に発症が起こります。これが感染です。この時、1つの個体から2つ以上の個体へと感染が起こると、感染者数は増えます。逆に1つの個体が1つ以下の個体へしか感染させることができなかった場合、ウイルスは衰退の一途を辿っていきます。
以上のことをまとめます。ウイルスが感染者数を上げていくためには、3つの要素が必要です。
ある個体の中で十分に増えること
感染可能な状態でウイルスに感受性がある個体に会って話すこと
2個体以上に感染させ続けること
さて、これをマーケティングに置き換えてみます。 ここでいうマーケティングとは商品やサービスを効果的に届けるための活動全般を指すことにします。そして口コミを通じて商品やブランドがお客様に広がっていく過程をウイルスから学んでみます。
ウイルス感染と口コミの共通点
まず、口コミとは、商品を享受したお客様の中でその商品への熱量が増殖し、誰かに伝えたい!!と居ても立ってもいられなくなる、状態だと思います。そして口コミがたくさんの人伝えられ、その中で感受性があった人が新・宿主となります。ウイルスも商品と同じで、その時に新宿主が2人以上生まれれば、どんどん伝播していくことになります。
では商品が感染するには、何が必要なのか。実はウイルスが宿主の細胞に入る方法には2種類あります。1つ目は、細胞が外部のものを取り込む働きを使って、偽の通行書で入る方法です。偽紋所を掲げて目に入らぬかということですね。2つ目は、宿主の細胞膜と同じ細胞膜を持っていて、それを融合させてぬるっと入る方法です。
この2つの感染方法から考えてみます。1つ目は大概するならば「共感性」です。「あっ、これ俺だ」と思わせるということです。その本質がウイルスでも、細胞にとって必要な物質でも、「あっ、これ俺に必要だ」という通行書さえ掲げれば、細胞の中には入れるわけです。ここでは「俺だ」と思わせる通行書にポイントがあります。つまりお客様の感受性がどの方向性に向いているのかを掴む必要があります。どんな言葉を使って、どんな色味で、どんなコンセプトを掲げているのか。それによって紋所の姿形は変わってきます。これがいわゆるブランディングなどの可視情報によって情報をキャッチしてもらうタイプです。
2つ目はステルス的に細胞へ入り込むやり方です。お客様も気付かぬ間に感染され、気づいた時には生活の一部になっているということです。えっ、そりゃいいじゃん、最高じゃん!頑張らなくてもいいじゃん!いえいえ、そんなうまい話ないよ。この方法で侵入するウイルスではエンベロープウイルスが発生した起源はわかっていませんが、宿主に感染しまくって偶然、宿主の細胞膜も一緒に持って出てきちゃった!みたいな変異から生まれたと言われています。つまり、めっちゃ時間かかるんです。ステルス細胞侵入はこうした仕込み時間がかかります。
なので初めの一歩は偽紋所。これはお客様のフックにしっかりかかる、ブランド・商品の軸です。可視要素。フロントです。ウイルスで言えばカプシドタンパク質という、外殻を覆う紋所です。宿主が「これはわたしのものだ!」と錯覚し中へ取り込んでしまうくらい、深く刺さるコンセプトであること。
これによってお客様に刺さったら、自然と宿主の中でそのコンセプトは増え続けます。寝ても覚めても「これはわたしの自己実現、自己表現だ」と思うため、もっと理解を深めたり、調べたり、さらに商品を買ったりします。この行為の繰り返しにより誰かに語れる状態、つまりウイルスで言えば誰かに感染させることができるくらいまでウイルス量が高まってきます。
この状態でお客様が感受性(似たようなフック)がある人に熱量高く商品のことを話すことで、相手も「これは自分のための商品だ」と思います。相手もも感染するのです。
そしてここで大切なのは時間で、宿主にも免疫機関、ホメオスタシスがあるため元に戻る作用が働きます。つまり感染して、かつ誰かに感染させることができるのはせいぜい数週間。この間に次の誰かに感染させなければいけません。
ウイルスに学ぶ「流行」の作り方
ウイルスの伝播には宿主への感染、自然治癒までの他個体2つ以上への感染が必要です。ではこれらを達成するためにウイルスがとった戦略を、ウイルス種によって見ていきましょう。
インフルエンザウイルス:ちょっとずつ変異型
インフルエンザは渡り鳥によって運ばれてきます。南北を渡る間に色々な動物への感染、同時に変異を繰り返します。去年より微妙に性質を変えてくるので、同じインフルエンザウイルスという名前でも、毎年ワクチンを打たねばならないのです。この場合、中身はほとんど同じだけれど少しずつ変異をして感染し続ける。かつ、渡り鳥に行動の主を置くことで季節依存性を持たせることができる。つまり時間と場所において集中的に感染を起こすことができるのです。
アデノウイルス:イベントを狙って伝播型
別名プール熱とも呼ばれ、水辺の共同利用などにより感染するウイルスです。プールといえば夏なので、夏によく流行るウイルスです。こちらは人は夏に水辺に行くという人間の行動に合わせて仕込み、感染を広げていく方法です。
帯状疱疹ウイルス:宿主の体調依存型
こちらは水疱瘡のウイルスと同じウイルスです。幼少期に一度感染したこのウイルスはその後、じっと神経節にひそみ、宿主の体調が悪くなったらヒラヒラと舞い出てきて増殖します。高齢化、ストレス、病気、免疫抑制などのシグナルによって増殖のスイッチが入るため、爆発的な感染はありませんが、面白い生存戦略をとっているなと思います。
オリジナリティは組み換え変異で生まれる
ゼロイチという言葉があります。「0→1」を意味し、何もないところからコンセプトを打ち出し、刺さる商品を作ることを言います。これを作成する過程で大事なのは「TTP(徹底的にパクる)」とか言われますが、その通りです。ウイルスがやっているからです。何万年もの淘汰を乗り越えて、我々の人知には及ばないほどの試行錯誤を繰り返しているウイルスがやっていることは、だいたい正しいのです。
豚はウイルス変異の最高級土壌
豚という動物がいます。家畜として知られている彼らは、ウイルス界では「ミキシングボウル(混合容器)」と呼ばれます。豚は、いろんなウイルス株に感染しやすい特徴を持っています。通用する紋所の種類が多いのです。例えば、豚は鳥由来のインフルエンザウイルスとヒト由来のインフルエンザウイルスの両方に感染しやすい特性を持っています。
これらが同時期に豚の中に存在すると、遺伝子再集合という現象が起こります。これにより、それまでは渡り鳥→ヒトにはダイレクトで感染できなかったウイルスが、渡り鳥→豚→人間のプロセスを経て感染できるように変異するのです。
オリジナリティとは組み換え変異の結果
ここから言えるのは、オリジナリティがあると呼ばれて伝播しているものも、結局はもともと何かの遺伝子だった可能性が高いということです。もともと伝播する可能性が高い要素を掛け合わせたり、削ぎ落としたり、混合させることにより、さらに伝播力の高いウイルス、商品へと変化させることができるのです。
よってオリジナリティのある商品を作るためにするべきことは、インプットをし続けることです。たくさんの種類のウイルスを体の中に住まわせることで、遺伝子再集合を起こし、自分発信で伝播させることでそれはオリジナルになるのです。
天然痘ウイルス撲滅からオワコン化を考える
今でも現役なウイルスがいる反面、実は淘汰されてしまったウイルスもあります。天然痘です。
天然痘は、感染力が高く、一度かかると半分の人が亡くなる恐ろしい病気です。今は根絶宣言がされていますが、日本でも天然痘ウイルスは猛威を振いました。日本で流行ったドラマ「大奥」では男性だけにかかる赤面疱瘡によって江戸幕府の将軍が女性になる、というフィクションがありました。あれも実際に江戸で感染が爆発的に広がった天然痘から着想を得て作成されたお話です。
天然痘はオワコンと化した
天然痘ウイルスは、現在は根絶宣言が発表されています。これは人間にとって素晴らしいことですが、ウイルスからすると面白くありません。なぜ他のウイルスは毎年感染できているのに、天然痘ウイルスは根絶されてしまったのでしょうか?きっとこの理由の中に、商品がオワコン化してしまう原因があるはずです。
天然痘撲滅の理由①:ワクチン
まず、天然痘に対するワクチンができたことは大きな要因です。ワクチンを接種することにより身体に免疫を作り、感染しても増殖する前に排出されてしまう、という仕組みです。ですがインフルエンザもワクチンがありますが毎年かかる人がいます。コロナウイルスもワクチンがありますが、今でもかかる人がいますよね。
なぜワクチンが有効だったのか、それは天然痘ウイルスが他のウイルスに比べ変異が少ない性質があったからです。つまり、自らの感染力・罹患率に酔いしれ、変化することを躊躇した瞬間があったのです。(ウイルスにそんな意思があるかは分かりませんが。)まぁいいや、今はやってるし、俺いけてるし。こうした考えからあぐらをかいてしまったのです。
この性質から、一度天然痘にかかり、治った人は一生を通じてもう一度天然痘にかかることはなかったのです。よって猛威を振るった後に生き残った人々の間で再感染が起こることはなく、パンデミックは一時的でした。
天然痘撲滅の理由②:強すぎる
もう一つの要因として、天然痘ウイルスは強すぎたということです。天然痘ウイルスに暴露すると、ほぼ100%感染し、感染すると100%症状が出ます。無症状の患者がいないため病気の囲い込みが容易で、収束に向かって対策しやすかったのです。
他にもワクチンの輸送が容易だった…などの理由があるみたいですが、やはり天然痘が撲滅された大きな要因は「変異しない」「強すぎる」ことにありそうです。
強くても再購入に繋がらない商品はオワコンと化す
ここから学べることは、こういったウイルスは、インパクトは非常に強い(教科書に載るレベル)けど、インフルエンスは持続しない、ということです。変異しなければ再感染=再購入が期待できない。また毒性が強すぎると伝播する宿主がいなくなってしまうため、結果的に衰退の一途を辿ってしまうのです。毒性のレベルはウイルスにとって非常に難しい課題であり、弱すぎると伝播しないし、強すぎると宿主が弱ってしまうし…。
これをマーケティング的に考えると、発信側は受け手側の変化(PC:認識変容、BC:高度変容)を期待するわけですが、この変化は毒性とも言えます。なぜならそれまでのホメオスタシスから逸脱させるわけですから、多少の痛みが伴うわけです。強い刺激・毒性は宿主を急激に変化させ、インパクトは大きい。でも離れる=オワコン化のスピードも速い。
事業の目的をどこに置くかにもよりますが、ゆっくりコンスタントに、なのか、スピード感を持って、インパクト重視、なのか。これは途中で変異してもいいし、変異しない選択肢を選択肢をとっても良いし、それぞれの生存戦略で試してみるほかありません。
ビジネスの終点はウイルスと同じ
ですがこのマネーゲーム、ウイルス感染ゲームの目的は?最終ゴールは?そんな気持ちになったことはありませんか?永遠に感染→免疫→恒常状態を繰り返すウイルス人生。その先に何があるのか?絶望したことはありませんか?
人間のDNAの8%はウイルス由来
実はウイルス界にはこれ!というゴールがあるのだと思います。実は人間のDNAの8%はウイルス由来なのです。えっ、どういうこと?と思われたと思いますが、我々が子孫に受け継ぐDNAの中に今まで感染してきたウイルスが含まれているのです。
これは体細胞(喉の細胞とか)に感染したウイルスが体の中をまわりに回って、生殖細胞に取り込まれたと考えられます。これにより、半永久的に後世に伝えられる遺伝情報となったのです。ウイルスにとっての勝ちです。
胎盤はウイルス由来のDNAから成り立つ
これは人間にとっては害なのでは?と考えられるかもしれませんが、実は我々はウイルス由来のDNAに大感謝しなければいけません。例を挙げると、胎盤はレトロウイルス由来の遺伝情報によって作られています。なぜ血液型が違う母子が同じ体内で生活できるのか?それはレトロウイルスが持っていた膜の構造を胎盤に特別に利用することで、血液は触れることなく酸素と栄養の交換ができるようになったからです。他にも脳の進化や免疫系の調整にウイルス由来のDNAが活躍しています。
DNAにコンセプトを埋め込め!
これをマーケティングに置き換えるなら「子供にもさせてあげたい」「子供にあげたい」コンテンツになります。その代表がマクドナルドハッピーセット戦略だと思います。子供の時に経験したことがDNAレベルで埋め込まれて、親になった時に、自分の子に買い与えようと思うのです。そしてその行為に結果としてよってメリット:家族団欒の時間など、が生まれる。これはほぼ永久機関。水平感染から垂直感染へ。これがビジネスの、一つの方向性付であり、最終地点なのではないでしょうか。
今後は実践を併せて理論を深めていきます
ここまでが現在の概論です。マーケティングとウイルスを掛け合わせて考えてみました。これから、この考えをもとにビジネスを実践し、この理論を深めていきます。新しい情報が入り次第、随時更新していきますので、フォローください!インフェクション!