うっかりイスラエルについていったら、空港で兵隊さんに取り囲まれちゃった話

タイトルまんまのお話です。物騒ですね!今思い返すと、何て無謀だったんだ……とゾッとします。タイムスリップしたら当時の自分を殴ってやりたい。そして、

「貧乏だからって、CDプレーヤーをセロハンテープでとめるな!!」

と叱咤したい。何のこっちゃ分からないですよね。答えは数行後にあります。

それは私がまだピチピチ(世代なんで……)の大学生だった頃、突然「死んでもいいからイスラエルに行きたい」と言い出した親に、うっかりついていった時の出来事。

一家全員英語力ゼロなのに、個人旅行で行く

というかなりイカれ……いえ、ファンキーな計画だったのです。

あらゆる困難に遭いながらも何とか現地にたどり着き、ガイドさんと合流しました。その方も、

「よくその英語力で無事来られたね!」

なんて満面の笑みでおっしゃっていたので、相当な実力なんだと思います。そもそも何で個人で行こうとしたんだ、我が両親よ。しかし私は私で、勉強不足なものだから、飛行機の中で出会った民族衣装を着た方々を、

「あ、マジシャンだー!!」

て一人勘違いして盛り上がってましたよ。親が親なら子も子ですね。見掛けたら是非笑ってやって下さい。

それはさて置き、現地ではガイドさんがいるおかげで、恙無く観光が出来ました。きらびやかな施設から、マニアックな土地まで。日本では決してお目にかかれない景色に、家族全員で感嘆しました。

が。

事件は帰りの空港で起きました。

荷物のチェックを受けたところ、私の鞄が引っ掛かったのです……。

ポータブルCDプレーヤーが。

お若い方はご存知ないかもしれません。CDが外でも聴けちゃう機械。当時既にiPodなどが主流になっていたのに、アナログな私はこちらをずっと愛用していました。

壊れてもセロハンテープで修理(?)したまま。

はい、ここ重要ですよ~テストに出ます!大切なので二度言いました!

警備員もあまり見たことがなかったんでしょう。私とガイドさんは呼び出され、しつこく質問されました。

これは何に使うのか、何故持ってきたのか、誰かにもらったものではないのか。

ガイドさんに通訳してもらい、初めは呑気に答えていたのですが、全然解放してくれず、徐々に焦りだします。

これ、かなりピンチじゃない??

飛行機の出発の時間が、刻一刻と迫っています。そこへガイドさんから、妙案を出されました。

ねぇ、もうCDだけ返してもらわない?

今考えると??なんですけど、切羽詰まっていた私は了承しました。そして警備員は眼前でプレーヤーの蓋を開けました。するとどうしたことでしょう。

禍々しい骸骨の絵柄が描かれたCDが、飛び出してきたじゃありませんか。

……。

やっべぇ……。

その瞬間の凍った空気、未だに忘れられません。

ビジュアル系バンドに嵌まっていた私は、それはそれはダーティな世界観のCDを所持していたのです。ってかさ、

本当に何で持って行ったんだ、私。

せめてアムロちゃんとかドリカムとかにしとけば良かったものを……。そういう問題じゃないけど、ほら、何か平和になりそうじゃないですか。骸骨は、ねぇ……。

おかげで余計に怪しまれたらしく(当たり前だ)、それからも警備員の詰問は続きました。で、訊かれたのです。

何でセロハンテープでとめてるの?

これ、当時は分からなかったのですが、細工して何か仕込んでるんじゃないだろうな?って意味だったようです。更にそういうことをするのは、貧しい方が多いようで。

しかしさすが私、無知っぷりを発揮し、

「貧乏だからセロハンテープでとめて使ってるって言ってください」

と恥ずかしげもなく言い、ガイドさんがでも空気を察してオブラートに包んで答えていたら、何となく物足りない気がして、

「ビコーズアイムプア!アイムプア!(私は貧乏!私は貧乏!)」


と主張しまくりました。

皆様、お察しのとおりです。

私、阿保なんです。

警備員の表情はますます険しくなり、もうCDもプレーヤーも置いていくから、と申し出ても、全く了承してくれません。あと少しで飛行機が離陸する!という所まで追い詰められ、

ついにブチぎれ、警備員と激しく口論し出すガイドさん。

挙げ句こちらの腕を掴み、ご立腹の様子で「もう行こう!らちが明かない!」と引っ張っていきます。

無論警備員が黙っているはずもなく、めちゃくちゃ大声で「ウエイト!ウエイト!」と繰り返します。

えー……ヤバくね??

そう嫌な予感がしたとおり、

あっという間に銃を持った兵隊に取り囲まれました。

うわぁ~こんな間近で拳銃見たの初めて~☆とか言ってる場合ではありません。齢二十歳にして、生命の危機を感じました。

ああ、もう二度と日本には帰れないのかも……家族と友達ともさようならか……グッバイ、エブリバディ……今までありがとう……と心の中で謝辞を述べていたら、

小柄な白髪のおじ様が華麗に登場。

ガイドさんと会話を交わし、アハハ!と笑い合った後。

無事に釈放されました。CDプレーヤー達と共に……!

ヒャホー!!と喜び踊っている暇はなく、全力で飛行機へと向かい、ギリギリセーフ。ホッと安堵の息を漏らしました。

先程のおじ様は空港の幹部で、ガイドさんとは旧知の仲だったとか。何と言う幸運……!神に感謝とは、こういう時に使うのですね!

そんなこんなで、無事に飛び立てた訳ですが。

勿論、後でこってり親に怒られました。

でも今でもロックは大好きです!シェケナベイベー!!

                                                     完

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