美大のはなし
私は美大に通っている。
初めての人に自己紹介すると、珍しがられて「すごいね」と言ってもらえるが私はなんにもすごくない。
美大の中にはすごい人がたくさんいる。
だが、私はすごい人ではない。
あまり絵を描かずに美大に入り、自分の画力にはコンプレックスを感じているし、
友達や同級生のアイデアに触れたり、作品を見たりして毎度のように「これは私の頭からは出てこない」と思う。
しかし、私は美大にいることがすごく楽しい。
美大生は自分を大切にしている人が多いと思う。
何が好きか、この問題についてどう思うか、がはっきりしている人ばかりで話を聞くのがとても有意義だ。
話をする度に新しい感性に触れることができて、話をする度に新しい知識を獲得できる。
自分の好きがはっきりしていると知識がつく。
それは何も直接的に芸術と関連するなにかではなくて、人体の不思議とか、植物を元気に育てるとか、お菓子作りとか、
自分の好きがはっきりするから、作品を作れるみたいなことはあるかもしれない。
興味の対象が広い人たちのものを見る視線もすごく面白い。
ただ街を歩くだけでも、街の風景、歩いている人、木漏れ日の形までたくさんのことが目に入る。
だから友人たちの写真フォルダはとても見応えがあって、それについてのエピソードも聞いていて楽しい。
改めて私はこの大学に入って、様々な人と知り合えたことが幸運だなと思う。
時間は止まって欲しいが、この才能ある友人、知人がどんな大人になり、どんな影響を社会にあたえるのかがすごく楽しみだ。
私は周りに対するコンプレックスを抱えながらも、私の「好き」と改めて向き合ってみようと思う。
美大のはなし