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あなたはだんだん山小屋に行きたくなーる
『やまさん ~山小屋三姉妹~』 坂盛
読了レビューです。
文字数:約1,000文字
ネタバレ:一部あり
・あらすじ
特盛連峰には「雲海小屋」という山小屋がある。
ひょんなことから経営を引き継いだ三姉妹だが、その小屋に山の超・初心者である西園寺が訪れる。
しかし彼は途中、雪の残る道から滑落しており──?
・レビュー
山を題材にした作品は「登ること」に注目することが多い。
シゼンサイコウ・イヤサレルとかが共通の呪文であり、人間は観測者としての役目を果たす。
一方の本作では架空の山小屋を舞台に、三姉妹と山の超・初心者である少年が奮闘するという内容だ。
ちなみに山小屋は山にあるビジネスホテル、もしくは民宿とするのが適切かもしれない。
山を登るならN〇Kとかで定期的に特集しているけれど、山小屋がカメラに映っても「おつかれさまでした! おはようございます!」の一瞬で終わることが多く、わりと未知の空間だったりするのではないだろうか。
山小屋があればテントを持たなくても布団で寝られるし、温かい食事や入浴ができたり、荒天やケガなどの緊急時には避難場所としても機能する。
夏の時期になると必ずといっていいほどニュースになるのは、富士登山で御来光を浴びようとする登山客だ。
彼らは日の出ていない暗いうちから出発するため、寝泊りのできる山小屋は必須だといえる。
ただ、今シーズンは小屋の予約がいっぱいにも関わらず、休みなしで登ろうとする無謀な人間が多いとか。
そうした浅はかな登山者は忌むべき存在だけれども、山小屋があることで最悪の事態を避けられるかもしれない。
超・初心者または熟練の登山者という括りは人間だけのもので、山は登るためにあるのではなく、ただそこに存在しているだけだ。
1巻の1話にて、そうした忘れがちな基本理念を描いているのが好印象だし、三姉妹の次女がどちらかと言えば山嫌いなのも面白い。
滑落そして生還から山小屋を手伝うことになった西園寺は、経験および知識0だからこそ、読者と同じペースで学んでいるように感じる。
山に入ると謎のアレルギーが出るとかでない限り、1つのお仕事マンガとして読んでみても良いだろう。
前にレビューした信濃川日出雄『山と食欲と私』でも山小屋は登場する。
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