
物語を自分から切り離す
【文字数:約1,000文字】
拙作『あなたの死を願うから』のエピローグを投稿して、同作で書きたいことは形にできたように思う。
少し前のTBSラジオ「アシタノカレッジ」にて、監督の是枝裕和さんがゲストに登場し、映画「ベイビー・ブローカー」についての話を聞いた。
それによれば今現在、作品を自分から切り離して次の作品に向かう途中だそうで、まさしく私も同じような状態に位置している。
◇
『あなたの死を願うから』は、とある青年が不老不死の魔女に会いに行くという話なのだけど、先日の投稿で形にしたいもの全てを出したと感じている。
過去に公募用の作品を書いた後も、投稿してから1週間も経てば「過去」となり、意識の中で限りなく遠い場所へと移動される。
もちろん完全に忘れるわけではなく、過去の自分が生み出した創作物として懐かしみ、あるいは至らなさを痛感したりする。
先の番組で是枝監督が話していたけれど、作品を自分から切り離して1人の観客として批評するのは、創作者であり続けるためには必要なことだと感じる。
私は店頭などに著作が並ぶ商業作家でもなければ、それほど意識の高い創作者ではない。
それでも自分が生み出したものについて、なるべく親バカでない眼差しで眺めるのは大切で、「ここが惜しかった」と改善点を見つけられなくなったとき、私は書くことを止めるような気がする。
もっと次は上手くできるかもしれない。
そんな淡い期待を持っているからこそ、創作などというコスパの悪い趣味を続けているのだろうし、こうして内省に努めているのも次への準備なのだろう。
ありがたいことに私が作家となった暁には、書店などで開かれるサイン会に行くと申し出てくれる方が現れた。
素直に嬉しく思うのと同時に、はたして実現するのだろうかとも考える。
結果として実現できるなら万々歳なのだけれど、そこまで世間に評価されるものを私が書けるのかと言えば、正直なんとも言えない。
流行りの異世界転生、ざまぁ、チートなどの展開にさほど魅力を感じない人間なので、盛り下がる暗めな話を書くだけで終わる気がしてならない。
ちなみに目標と言えるか微妙だけど、天童荒太『永遠の仔』が好きだ。
親を選べない子供たちが背負うものを、どうにかできないかと考えたりもする。
それに私は知っている。
自分の書きたいものを高次元で形にしている上位互換が、この世界には数多く存在することを。
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