もうLEDは光らない
【文字数:約900文字】
あちこちがクリスマスで賑わう夜、家のLED電球が寿命を迎えた。
壁のスイッチを押して瞬時に明るくなったものの、起こるはずのない点滅を繰り返し、やがて部屋は本来の暗さに戻った。
その電球を購入したのは、たぶん5年以上は前だった気がする。
場所によっては投げ売りされている現状よりも、交換なしで数年は使えるから元が取れると、長寿命とされる利点がまだ響いた時代。
某電器メーカーの少し高めなものを購入し、付け替えた直後こそ色味の変化に違和感を覚えたものの、やがて慣れていくのが人間だ。
使う時間の長いリビング用は数回交換しているけれど、洗面台ということもあって、いつ交換したのかが定かではない。でも思い返してみれば、去年あたりに浴室の電球も点かなくなった。
どうしても湿気や熱がこもりやすいから、他の場所より早く寿命を迎えるにしても、それが今の時期だったことは幸運だったのかもしれない。
蛍光灯が主流だったとき、見る機会の多かった点滅はLEDに置き換わってからというもの、めっきり減ったように思う。
白色の光が部屋を照らしたと思いきや、元より黒が占める夜色とで点滅を繰り返す様子は、どこか心を不安にさせる。
屋外で眺めるイルミネーションに美しさを感じたのに、室内で遭遇したイルミネーションもどきには、断末魔の悲鳴と似た趣がある。
しつこく生存を訴えて製品とゴミとの狭間を行ったり来たりせず、寿命を迎えたLEDは2度と明るくならない。
消えたら最後、それっきりだ。
だからこそ点滅に立ち会えたことは幸運だった。
不快な光が繰り返し網膜を叩く間、その下で過ぎていった日々を思い出す時間は、きっと走馬灯の疑似体験なのだろう。
壁と床に浮かび上がった自分の影が、現れては消える。
昔のフィルム映画を鑑賞するような心境でいるうちに、やがて終幕を迎えた部屋は暗くなった。NGカット集や次回作の告知が続くこともなく、何かが冷えていくのがわかった。
しばらく暗い中で過ごしてから別の照明を点け、ゴミになった電球を予備のものに交換する。
それが消える瞬間をまた見たいと思いながら。