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風が吹けば命が助かる

【文字数:約1,000文字】

 先日、ひさしぶりに献血へ行ってきた。

 前回は免許更新のついでに立ち寄り、これといった問題なく帰ったけれども今回は違った。

 採血を終えて腕から針を抜いた直後に気を失ったらしく、看護師の方に呼びかけられて目を覚ました。

 前にも気分が悪くなって、採血後に輸液を入れるという悔しい体験をしていたから、今回それは断わって自力での回復に努めた。

 通算で10回目の献血にして気を失うブラックアウトを体験し、これはこれで貴重な体験だったと思いつつ、今後も続けるか悩んでしまう。

 私が献血を始めたのは20歳くらいからで、400mlの献血は約3ヶ月の期間をあければ可能になる。

 他に量の少ない200mlと成分献血があるけれど、患者側の負担が少なくてすむのは400mlと聞いた。

 とはいえ採血後には行動制限がかかり、少なくとも翌日までは無理ができないから、通算10回を達成するのにずいぶんとかかった。

 ここ数年は献血する人を増やそうとしているらしく、CMでの告知やトミカのミニカー、「ゆるキャン△」のクリアファイルを期間限定で粗品にするなど、欲しい人には刺さるキャンペーンを展開している。

 文字通り身を削って手に入れる喜びは理解できるし、コラボした作品のファンにとって、お金を出す以上のし活に違いない。

 ただ、場合によっては今回のように体調が悪くなるのに、これまで献血を続けてきたのは自分でも意外だったりする。

 わりと頻繁に「もうやめよう」などと思いながら、いくつかの季節を過ぎると忘れてしまう。

 たぶんそれは良いことをしたいと、ぼんやり思っているからだ。

 自分のことを聖人だと言ったら石を投げられる程度には悪い人間だし、特定の存在に対する信仰心だって持ち合わせていない。

 道で倒れた人を見かければ声をかける程度の、吹けば飛ぶような軽い気持ちで献血をしている。

 手術などで他者からの輸血を受けた場合は献血ができないから、よくある恩返しのためにやっているわけではない。

 名前や顔の分からない人が助かったとしても、ステータスのLUCKが上がって宝くじが当たるなんてことも起きない。

 けれどもその助かった人が、この先の未来を良くしてくれるかもしれない。

 あるいは担当だった新人の看護師さんが経験を積み、他の誰かを助けてくれるかもしれない。

 かもしれない、かもしれないと書きながら強く期待しているわけでもないけれど、世界のすべてを憎むまでは続けていいのかもしれない。


 2/20 追記:red monster 様が記事を紹介してくださいました。


なかまに なりたそうに こちらをみている! なかまにしますか?