見出し画像

『理念と経営』2025年1月号の読みどころ


サイボウズ社長が自らの「原点」を熱く語る

今回から、最新号の読みどころを私から紹介することになりました。

まずは、『理念と経営』の看板連載ともいうべき巻頭対談です。
今回は、田坂広志先生(「21世紀アカデメイア」学長)と、サイボウズ株式会社の青野慶久代表取締役社長をお迎えしました。

 田坂先生には『理念と経営』でずっとお世話になっています。「日本のオピニオンリーダー」の1人と言ってよいでしょう。

 『理念と経営』で取材した中小企業の社長さんでも、掲載誌を送ると「尊敬する田坂先生と一緒の号に出られてうれしいです!」と言われる方が、よくいます。それくらい、熱烈なファンが多い方です。

お相手の青野社長のサイボウズといえば、中小企業にとってもおなじみのグループウェア「キントーン」の会社ですね。

トヨエツ(豊川悦司さん)がテレビCMされているキントーンは、すでに3万6000社に導入されているそうです。『理念と経営』読者の中にも導入企業は多いことでしょう。

青野さんは、上場企業の社長として初めて育児休暇を取られた方。しかも、3人のお子さんそれぞれについて、計3回も育休を取られた。まさに「イクメンの鑑(かがみ)」ですね。
また、サイボウズといえば、「働き方改革」の先駆的企業として知られています。

しかし、今回の対談ではそういうお話はされていません。もっと、よい意味で泥臭く「熱い」話をされています。「経営者としての原点」について語ってくださったのです。

青野さんはサイボウズの社長になられてから、経営がうまくいかなくて、本気で死のうと思ったことがあるそうです。
 そのときにコンビニで偶然に出合ったのが、『松下幸之助 日々のことば』という本でした。

『松下幸之助 日々のことば』(PHP研究所)

藁をもつかむ思いで開いたその本に衝撃を受けて、「死のうと思ったこの命を、社員たちのために使おう」と決意されるんですね。

そこから経営者としての覚悟が変わり、サイボウズの経営が一気に上向いていったという、感動的なお話をされています。

一般に、大手IT企業の経営者って、チャラチャラしたイメージがあると思うんです。「贅沢三昧して、金儲けしか考えていません」みたいな……。
 青野社長にはまったくそういうところがなくて、謙虚で爽やかな方ですし、深い哲学を持っておられます。

「うちの会社でもキントーン使ってるよ」という社長さんに、ぜひお読みいただきたいです。ますますサイボウズのファンになると思います。

 また、今回の対談では、経営者が持つべき覚悟についても熱く語っていただいています。
とくに感動的なのは、「経営者は壮大な夢を掲げないといけない」という話です。どれくらい壮大かというと、自分の代だけで実現できるような夢は「夢」と呼ぶに値しない、と……。
「会社として生き残るだけが目的の会社なんて、何の魅力もない」ということで、お2人の意見が一致しています。

 真山仁から中小企業経営者への熱いメッセージ

人気作家の真山仁さんにインタビューをしています。

真山さんといえば、テレビドラマや映画にもなった大ヒット作『ハゲタカ』シリーズで知られていますね。
いわゆる「ハゲタカファンド」の世界を描いた同作の印象が強いため、「グローバル企業や大企業を描く作家」というイメージがあるかもしれません。
 
でも、真山さんは『ハゲタカ外伝 スパイラル』で、町工場の世界を描いておられるんですね。また、ご自身も中小企業経営にお詳しい。インタビューでは中小企業経営者に熱いメッセージを語ってくださっています。

新ビジネスに挑戦したい中小企業経営者は必読の特集

それから、特集1は「新ビジネスはこうして生まれた」です。

 「いまある事業だけでは1本足で立っているようなものなので、不安だ。第2、第3の柱になり得る新ビジネスに挑戦しよう」……そんなふうに考えている中小企業経営者は多いと思います。そういう方のヒントになるような、新ビジネスを成功させた企業を3社取材しています。

 たとえば、そのうちの1つ・西染工株式会社さんは、西染工株式会社さんは、「今治タオル」の染色を専門とする会社です。

染色したタオルを乾燥させるときには、大量のホコリが出るんですね。それは、そのままではただのゴミです。
「そのホコリをきれいにパッケージして、着火剤として売ったらどうだろう?」というアイデアを実現したところ、キャンプ・ブームの追い風を受けて大ヒット商品になったんですね。商品名はズバリ「今治のホコリ」。

そういう面白い新ビジネスの事例が、いろいろ出てきます。

この特集の識者として登場いただいた、神戸大学の吉田満梨准教授にも注目です。

いま話題の「エフェクチュエーション」という概念があります。それは新しい事業を起こすときにすごく参考になる考え方なのですが、吉田先生はそのエフェクチュエーションの代表的研究者なんですね。『エフェクチュエーション――優れた起業家が実践する「5つの原則」』(ダイヤモンド社/共著)という、日本初の入門書も出しておられます。

ビジネス界のバズワード「エフェクチュエーション」について知りたい方も、この特集をぜひお読みください。

「現状維持は衰退」を実感させる特集2

特集2は、「現状打破――コンフォートゾーンを抜け出す」です。

コンフォートゾーン(comfort zone)は「居心地のいい空間」という意味ですが、転じて、「人や組織にとって、そこに安住していたら成長できない領域」という否定的ニュアンスで用いられます。

 経営者は、いまがうまくいっていると、そこに安住してしまいがちです。
でも、「現状維持は衰退」と言われるとおり、コンフォートゾーンから抜け出さないと、いわゆる「茹でガエル」状態になっているかもしれません。うまくいっている間に、自らの意志で次なるチャレンジに歩を踏み出さないといけない。

 ……ということで、この特集では、経営者が強い意志を持ってコンフォートゾーンから抜け出した事例を取材しています。

 3つの事例がそれぞれ面白いですが、とくに象徴的なのはピープル株式会社さんです。

 ピープルは、みなさんご存じの抱き人形「ぽぽちゃん」で知られる、おもちゃの会社です。

ぽぽちゃんは、1996年の発売以来、580万体も売れたそうです。しかも、その後も売れ続けていました。にもかかわらず、いまの代表取締役である2代目の桐渕真人さんは、2023年にぽぽちゃんの生産終了を決断したんですね。

そのときにも、ぽぽちゃんはまだ年間3億から4億円の売上を上げていました。それをなぜやめるのかということで、ほぼ全社員が反対したそうです。

でも、桐渕さんは、ぽぽちゃんに頼りっぱなしになるのではなく、新たなヒット商品を出していこうということで、そちらに注力するためにあえてぽぽちゃんを手放したのです。

これぞまさに、「コンフォートゾーンから抜け出すことによって会社を強くした」典型的事例だと思います。

「企業はチャレンジ精神を失ったら終わりだ」ということですね。そのことを再確認する意味でも、この特集2をぜひお読みください。

アフリカの女性たちを貧困から救うソーシャルビジネス

それから、ヒューマンドキュメンタリーのコーナーである「人とこの世界」では、バッグメーカー「RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)」の代表取締役COO・仲本千津さんにご登場いただきました。

「RICCI EVERYDAY」は、カラフルなアフリカンプリントを使ったバッグで知られるブランドです。ウガンダの女性たち、主にシングルマザーたちを雇用してバッグを作っています。

そのことでアフリカの女性たちを貧困から救うという、いわゆる「ソーシャルビジネス」の企業ですね。

仲本さんがその事業に挑戦して成功するまでの道のりを紹介していますが、感動的です。

仲本さんの半生を紹介した本『アフリカで、バッグの会社はじめました』(江口絵理著/さ・え・ら書房)が、2024年の「第70回青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書(中学校の部)になったので、それを読まれた方も多いと思います。

アフリカでビジネスをしようと考えている中小企業経営者の読者も多いと思うので、その参考にもなるはずです。

以上、1月号の主な読みどころを紹介しました。ほかにもいい記事満載ですので、ぜひお読みください。(文/前原政之)


いいなと思ったら応援しよう!