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声を出さずにニャーと鳴く

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愛猫の梵太郎(ぼんたろう)とその主(あるじ)の日常を切り取ったショートストーリーです。
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2021年8月の記事一覧

声を出さずにニャーと鳴く #8 虹を生み出す男

声を出さずにニャーと鳴く #8 虹を生み出す男

「おーい、梵太郎。ぼーん、ぼんちゃーん、ぼんくーん、どこー?」

主が我が輩を「梵太郎」以外で呼ぶ時は、機嫌が良い時である。それに加えて、今までに聞いたことがないような声のトーン。何があったのだろう。お気に入りのロッキングチェアから飛び降り、主の声がする書斎の方へと向かう。が、姿が見えない。

「おっ、梵太郎。来てくれて嬉しいよ。なぁ、聞いてくれよ。今日さ、すごいことがあったんだよ」

書斎の先に

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声を出さずにニャーと鳴く #7 必殺技は菜々緒ポーズ?

声を出さずにニャーと鳴く #7 必殺技は菜々緒ポーズ?

この世には、必殺技と呼ばれる技があるようだ。必ず殺す技なのか、必ず殺さない技なのかわからないが、我が輩はいつの間にやらその技を習得していたようである。天才というのは、そうゆうものなのであろう。

主がロッキンチェアに座って本を読んでいる。ミントグリーンの表紙にドクロなどが描かれているその本のタイトルは「禍いの科学」、サブタイトルは「正義が愚行に変わるとき」と言うらしい。愛読書が週刊誌の主には似つか

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声を出さずにニャーと鳴く #6 卓球という名のスポーツ

声を出さずにニャーと鳴く #6 卓球という名のスポーツ

球状の物体が前後左右にポンポン動いていれば、それを目で追うのは当然のこと、時折手が出てしまうのは性である。だって我が輩、ネコだもの。だから今回のことは大目に見て欲しいのだよ、主。

テレビと呼ばれる黒い物体にそれが映ったのは数日前のこと。大きめのダイニングテーブルくらいの緑色の台を舞台に、1対1や2対2で行われる卓球というスポーツ。鮮やかなユニフォームを着た選手が、小刻みなステップで前後左右に動き

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