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声を出さずにニャーと鳴く

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愛猫の梵太郎(ぼんたろう)とその主(あるじ)の日常を切り取ったショートストーリーです。
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2021年7月の記事一覧

声を出さずにニャーと鳴く #5 ホラーは夏の風物詩

声を出さずにニャーと鳴く #5 ホラーは夏の風物詩

「おかしいおかしいおかしいおかしい・・・」

主が同じ言葉を繰り返している。今更自己紹介しなくてもいいのに思いながら薄目を開けて様子を伺ってみると、なんだか本当に困っているようだ。どれ、我が輩の出番か。ソファを蹴り、主の足元にちょこんと座ると、声を出さずにニャーと鳴く。主よ、少しは落ち着きたまえ。

「おぉ、梵太郎。聞いてくれよ。僕、これ受け取っちゃったんだよ」

主が指さす先には、ペットボトル2

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声を出さずにニャーと鳴く #4 飛騨牛使用ねぇ・・・

声を出さずにニャーと鳴く #4 飛騨牛使用ねぇ・・・

このところ、キャットタワーのテッペンから見る窓の外が薄暗い。青空を見ていない。これを梅雨というらしい。ずっと室内にいる我が輩には関係ないが、人間にとってはなんとも鬱陶しい季節であろう。さっきまで曇り空だったのに、いつの間にか雨が降り出している。みるみる土砂降りになった。大きな雨粒がバチで、窓が太鼓の面。普段耳にしない音が部屋に響く。これがゲリラ豪雨というやつか、と思ったところでドアの鍵が開く音がし

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声を出さずにニャーと鳴く #3 パティだから旨いの?

声を出さずにニャーと鳴く #3 パティだから旨いの?

時刻は午後6時。仕事に出ていた主が帰宅する時間だ。ドアの鍵が開く音と聞こえるとともにソファを蹴り、玄関に向かう我が輩。玄関マットの上にちょこんと座り、主を出迎える。クリーム色のドアから顔を出した主と目が合うと、声を出さずにニャーと鳴く。

「やぁ、梵太郎。ただいま。お腹減ったかい?今ご飯を用意するよ」

我が輩のディナーはウェットフード。近所のホームセンターで購入した数種類のウェットがランダムで出

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