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夏は賑やかで儚い。のに、全てヴィヴィッドにクレジットする。 突き抜ける "かき氷" 追いかけて来そうな “入道雲" 急き立てる慌ただしい "夕立ち" キャッ、キャッ、言って踊り走り合った。 そして、”雨宿り“。 ゴジラの襲撃から逃れた軒先で、激しく吹き殴る雨を、ただ呆然と眺めていた。 ひとつの音から火が付き、次から次へと輪唱された。外耳で反響した音は何度もループする。 増幅し繰り返される音がカタツムリからリレーされ、次々とバトンを受け取った脳は"騒がしい"と認識した。
その指輪は重荷ですか? サイモンは、ゼラニウムの植木鉢に水を注ぐ手を止めると、胸まで伸びた白髪の顎髭を一定のリズム撫でながら、言った。 この指輪はキミに相応しいと思い、託しました。 ときに投げ出したくなる事もあるでしょう。 それでも怯まず、最善の道具の使い方を見いだそうとする真摯なキミのその姿に、人々は心打たれています。 革命的な発明品は、扱う者によって良い品にも悪い品も変わるものです。そして、どの扱いのが最良であるか?先を見据え公平に判断できるチカラがキミには備わっ
シリウスの宇宙船が迫って来た深夜2時、地上では草木は眠り空気が凍てついていた。 眠らない深海では、思慮深い目のクジラが雄大に泳ぐ。 ジンベイザメの模様がいくつもの発光ダイオードの集合体みたいに、もわぁ〜っとひんやりブルーを燈す。深海の漆黒の闇に微かな輪郭をなぞる。 「ここでは必要ないけど、あの頃の思い出話、みんなとしてみたくてね、光を連れて帰ったんだ。」 一文字で大口、ヒレナガチョウチンアンコウのつぶらな瞳がこちらに向いた。 「えっ!アタシ?見飽きてるから必要ないわ。
横断歩道を渡る。 『林檎が好きな果実か分からない。けれど味わってみたいんだ。』 心に隠された声を聴いた。 少しの沈黙のあと、その林檎は謂(い)った。 「好物になってから……手にとって。」、と。 その林檎は泣いていた。心で泣いていた。カッコウも鳴いていた。 彼の瞳には果物。灰色と桃色がマーブルになってに円を描いた。 気まぐれな衝動じゃない、一時逃れの愛着に似た安らぎを求めていた訳でもない、ただ、あの時の気持ちを取り戻したいだけなのだと、その林檎は分かっていた。 ヘ
あなたの中に薔薇を見たの。ワタシは痛くて握ることができなかった。握ったとたん、あなたを鮮紅に染めてしまいそうで怖かった。 ある日、思い出したんだ。 ワタシの中にも同じ薔薇があったことを。まだ蕾もつけない苗木。もう一人の小人のわたしが、ワタシの心に潜り込んで探し出して来てくれた。目の届く場所に植え替え、お世話しながら観察してる。 今ならナチュラルに向き合えるような気がしてる。 花が咲いたら。。。 逢って話してみたいな。 『明け渡してた手綱は、我が手掌に』戻った。 自分