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2024.09.24
学生が終わった。
私はいつまでも学生だと思っていたのに急に終わりました。
物心ついたばかりの7歳から学生で、おまえは学ぶ生き物だよーと言われてきたのに、急に学んでるだけじゃ足りなくなって困ります。
こんなタイミングじゃないと真正面から文を書かないので、自分についていくつか書いてみます。自分のことについて書くの、こんなに怖いのかよ、くそー。
「鳴り響くうちにひとつも感じなくなるころ永い踏切は開く」(岡本真帆)
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青
受験戦争をどうにかサバイブした18歳、サークル勧誘の波に乗まれよく分からないまま、アイセックという青くさい学生団体に入った。
そこから急に人生が2倍速くらいで進み出した。
世界がパニックだった2020年、私はここ数年で一番忙しく、寒い夜の公園でよくパソコンをカイロがわりにしていた。必死だった。いつのまにか上智の代表になっていた。世界を良くするとは、をもう飽きるくらい考えた。考えてることを忘れるくらい考えた。
自分の、虚勢を張りたがる情けなさも、1人じゃ何もできない惨めさも、たまに表れる無鉄砲な勇敢さも、すぐ泣くことも結局愛で動くことも、全部あの青い団体で知った。やっぱりアイセックの先輩同輩後輩を尊敬していて、彼らが自分の足で立つ限り私も同じ景色を望みたい。真顔でP&Fとか言うよ。
いつのまにかアイセックは卒業して、そこから色々あって、今はヤクザみたいな見た目のおじさんに拾われて本づくりに関わっています。本当に豊かな場所に流れ着いたなと思う。
5年間のいちばんの進歩は、ああこれは世界が良くなる、と信じられるものが増えたことです。それはNPOや社会運動だけじゃなかった。言葉や音楽、食、アート、意味のないオール、スナック、見えない誰かの署名、壁の落書き、ぼそっと出たあなたの一言、いろいろなところに落ちていた。
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揺
自分でデザインを考えてキュートなネイルをしている時もあれば、爪を噛んでる時もある。カレンダーを埋め毎週パッキングしている時もあれば、ベッドから動けずに死にたくなってる時もある。デモに行って自民に中指を立ててる時もあれば、もう恋人さえいれば全部どうでもいいと思う時もある。右手が好きな時もあれば左手がお気に入りの時もある。
毎秒ごとに揺らぐ自分のリードを、呆れながらにぎり続ける。まだうまく飼いならせなくて、やれやれと思いながら口角が上がる。自分の揺らぎを思いの外気に入っている。それと同時に、なんだかんだ5年間見たい景色が変わらない自分の揺るがなさにも感服する。
揺らぐから、私はきっと私が思っている以上に一本道だ。
「この道が続くのは、続けと願ったから」(米津玄師)
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劇
きっとここ数年以内に大きく仕掛けることのできる機運が来る予感がする。18歳からためた知性と好奇心を最大限投下できる時が。まあそう言っても時は来ないから自分で腹を括ってつくるしかない。
すごく大きいことがしたい。世界を変えたいし、その道中で会った全員と喜怒哀楽の全部を生身で味わいたい。尊敬するやなせたかしの言葉だが、良質で通俗的なものをつくりたい。最近、数年間の点が線になって、やりたいことの形が彫られてきて、マグマみたいなうねる情熱で喉が焼けそう。
私が震えながら何かをやり始めたら、応援も称賛もなくていいから一緒に手を叩いてください。すべてが喜劇に変わる明け方まで。
ただ最高におもしろいと笑いながら一緒に手を叩いてくれたら、そんな嬉しいことはない。嘲笑でも失笑でもいいよ、ちゃんと笑われる人になりたい。
素敵なものは応援したい。好きな人も嫌いな人もなるべく多くの人と肩を組みたい。何をするにしても動機は愛が良くて、行動の始点は人の顔がいい。
「転がるほどに願うなら、七色の魔法も使えるのに」(米津玄師)
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骨
普通にもう生きられないわーと1ヶ月に1回本気で思う。ベッドから動けずSNSを死んだ目で見る。涙も出ない。顔は死んでいるが、頭の中は黙ってくれない。1秒ごとにダメージを負う。呼吸が浅い。
1時間過ごすのもこんなしんどいのに、死ぬよりも辛い瞬間をあと数億回過ごさなければいけないんだと思う。もう勘弁してもらっていいですか、と思う。誰からも赦されてるのにね。
だけどまあびっくりすることに、なぜか今日も生きて眠りにつく。どうせ80歳も生きているんだろう。喚きながら長生きするタイプだと思う。
そういえば雨の日の友達でいたい、と言ってくれた友達もいた。きっと私はもう、大丈夫だ。美しく生きていれば、全部、大丈夫だから。大丈夫に思えなくても、絶対に大丈夫。
「誰より独りでいるなら 誰より誰かに届く歌を歌えるさ 間の抜けた だけど確かなバースデイソング」(米津玄師)
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触
しばらくは言葉の周りにいるだろうな。私は言葉が大好きだけど、言葉は私のことそんな好きじゃなさそうなところがいい。言葉に触れるものづくりは超たのしーな。
自分の言葉は、地味に嫌いじゃない。
こんな風にiPhoneのメモ機能に取るにたらない言葉が増えていって、たまーに読んでほしい人の顔が浮かんで。あたしはあんたとしゃべりたいよ。それまで言葉を貯金箱にいそいそ入れながら毎日生きるしかない。それが嬉しいよ。
でも、言葉に頼りすぎないで、自分の目で見て足を動かすことの方が、結局好きだ。言葉を愛してやまないけれど、言葉はそんなに万能じゃない。
何十時間話しても、とにかくハグをすることに勝てない。そんな降伏こそが幸福なのかもしれないと最近は思う。
それに、ちゃんちゃらおかしい自己矛盾だけど、善い聞き手になりたい。話し手が溢れるこの世界で、じっと聞ける人になりたい。
「わたしには言葉がある、と思わねば踏めない橋が秋にはあった」(大森静香)
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顔
5年を振り返えったら、100人くらいの顔がまぶたの裏に浮かんでは消えていった。
あの時確かに同じ方向を向いたあなた、1週間喧嘩してやっと休学を許してくれたあなた、一緒にネパールに行ったあなた、私が泣くとそれ以上に泣くあなた、かつて相棒だったあなた、LINE返信遅すぎんだよと言ってくれるあなた、何度も大喧嘩して仲直りしてないのに大好きなあなた、長く付き合ったあなた、結局付き合わなかったあなた、申し訳なさそうにストーカーになったあなた、友達になれなかったあなた。
私の汚い部分を炙り出してくれるあなた、私にとってのまきおちゃんになってくれたあなた、お互い留年してたあなた、日本酒を教えてくれたあなた、家に居候させてくれるあなた、私と日記を交換してくれるあなた、半年一緒に住んだあなた、真正面から怒ってくれるあなた、理那叫べ!と言ってくれるあなた、大塚に来てくれるあなた、これを読んでくれるあなた。
なんだ、私結構ずっと1人な感じがしてたけどそうでもないのかよ、なんだよ、よくわかんねーな、みんなのこと大好きって言ってもいーい?
「またなんかで普通に会うんだろうけど心の離島でずっと好きです」(伊藤紺)
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生
大学一年生の時、尊い!が口癖でからかわれていたけど、特に進歩はない。尊いを噛み砕く語彙も持ち合わせないまま、涙脆いままだ。あの頃よりゆっくり喋るようになり、言葉数も少なくなった。好きなものも嫌いなものも増えた。
まともに生きるのはこの世はクソすぎるし、死ぬと決めるにはこの世界は美しすぎる。
その間でしょうがなく生きているけれど、せっかくなら美しく生きたい。世の中の汚さの隣にいたい。社会問題とか大袈裟なものじゃなくて、自分の生身で傷ついていたい。怒っている人の隣にいたいし、冷笑主義には中指を立てたい。全身で吠えたいし、洗練されないままでいい。
本当に一瞬だった。前のめりに転んで右足を出したから転ばないように左足を慌てて出して、そうしたらいつのまにか5年経っていた。何も成せてないことに胃が痛くなるけど、半径1メートルの予定不調和は楽しく脆く尊い。
あなたの5年はどうでした?波が重なったらどこかでお話ししましょう。長い長い自分語りに付き合ってくれて、ラブです。