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直面する前に。事前に知る機会をもっと。

〜「家族も仕事も大切にするライフスタイル&働き方」を産後ケアから考える。〜

「家族も仕事も大切にするライフスタイル&働き方をしたい。」でも、実際に経験している方のお話を聞くと、あちらをたてればこちらがたたずな状態がよく起こるそうだ。その度に試行錯誤して自分の意思でどちらかを選択することが求められ、毎日ジレンマを抱えるという。こうしたジレンマを自分が直面するまで全く知らないまま父親・母親となることは実はとても恐ろしいことなのではないか?と最近考えるようになった。親になるための教育、親になってからの教育など本当に生きていくうえで大切で学ぶべきことはたくさんあるはずだけど、学ぶ機会がないから知らないまま生きてしまう。自分が実際に直面して初めて気付くから、起こりうることをあらかじめ想像しておくことができない。「女性は出産後働き続けることが難しい。」「男性は育児休暇が取得しづらい。」こうした現状があるのも、事前に学ぶべきことを知らないため、厳しい現実に突然直面し対処できないからなのではないだろうか。「男性が育児休暇を取得すると、出世を諦めたと思われる。頭では生活を大切にしたい気持ちはわかるけど、心ではあいつキャリア諦めたなって思われる。家庭を大事にしたい一方で仕事に集中してしまう面もある。毎日がジレンマ。」こうした現状がある中で女性の活躍推進、少子高齢化などと騒がれる世の中だ。しかし育児休暇の期間に新しい発想を得て仕事に活かせることだってあると思うのだ。こうしたさまざまな事実を自分が直面するより前に事前に知る機会が少しずつ増えれば少しずつ世の中が変わっていき、共働きが当たり前となる時代になっていくのではないだろうか。

10月17日(木) 法政大学長岡研究室が行うカフェゼミが実施された。「すべての家族に産後ケアを」を目指して活動されている、認定NPO法人マドレボニータ代表の吉岡マコさんがゲストとして登壇された。マコさんは自身の出産経験から、出産が身体に与えるダメージは想像以上であることを知った。当事者となって、産後ケアが日本に少ないことに気づき、産後ケア教室を立ち上げたという。産後8週間までは「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれており、完全休養をする期間とされている。その後、育児をしながら、体力の回復を図る。通常よりも体力が弱まっているこの時期は、子どもとばかり向き合い、社会とのつながりが薄くなってしまうことから、産後うつに陥りやすいという。11人に1人は産後うつに。77%は産後うつの一歩手前だというデータにはとても驚いた。産後にはこうした危機が全部で3つあるという。

【産後の三大危機】
①産後うつ ②乳児虐待 ③夫婦不和

こうした現状から産後のケアが社会のインフラになるべきと考え、赤ちゃんを抱えながらエクササイズできる産後教室を開いたそうだ。実際に、産後ケアを受けた人たちは、「パートナーを"本当に愛している"と実感するようになった」と回答した人が受けてない人の3倍! 「復職に向けて前向きな気持ちを持つようになった」と回答した人が受けてない人の2倍もいる!というデータがあるそうだ。このデータは、産後のケアは大切であるということを物語っていると感じた。マドレボニータの産後ケアは、ただエクササイズをして体力回復を図るだけではなく、育児をしている母親同士が繋がることができる。そしてそこで、「お母さん」という肩書きを背負わずに自分のことについて語る場を設けている。多くの女性は出産後、お母さんになったから「~しなきゃいけない」と思いこんでしまい、「お母さん」という肩書きに縛られすぎてしまう。しかし、出産したからといって、ずっとお母さんでいなきゃいけないということはない。子どもを産んでも1人の人間としても存在していい。自分のことを語る場で自分の言葉を紡ぐ機会があるからこそ、1人の女性として生きていた頃の自分を思い出せる。そして出産前まで生きるうえで大切にしていた価値観を思い出すことができる。そうすることで、就労意欲が弱っていた育休中の女性も、職場復帰への意欲を取り戻すことができるという。精神的ゆとりと体力が欠如した産後の状態で「やっぱりわたしは働きたい!」というパッションと強いフィジカルを取り戻す場になっている。フィジカルを鍛えて自己肯定感をあげるこの取り組みはとても素敵だと感じた。マドレボニータとは スペイン語で美しい母という意味だそう。お母さんという役割のみをただ演じるのではなく、1人の女性としても輝くお母さんの方が美しいと私は思う。
仲間を得たあとは、家族で社会復帰の準備をする。妊娠・出産は女性だけの問題ではなく、男性も一緒に考えて行くことが大切である。「産後」について夫婦で学び、協力して準備できることが産後女性が社会復帰していくために重要であるということだ。

わたしは最近の越境活動「胡桃堂喫茶店の朝モヤ」で、

「自分にない他人の痛みにどこまで配慮できるのだろうか。」

という問いについて対話をした。この問いが最近事あるごとに頭の中をぐるぐると反芻している。

妊娠・出産は女性だけの問題じゃない。じゃあ男性は出産を経験することはできないけど、自分のパートナーにどこまで配慮できるだろうか。逆に女性は男性に共感を押し付けていないだろうか。

こうした自分にない他者の痛みにパートナー同士どこまで配慮できるのだろうか。そういったことは、実際に出産後に直面してから考えるのでは、時間に余裕がなく、対処がしづらいと思う。だとしたら、産休中など産後を迎える前にこうしたことに気づく学びの機会があった方がいい。

父親の出産時の関わり、出産直後から育児への関わりといった「父親になるための具体的な準備について」
出産後の女性ホルモンの急激な変化、体の不調や違和感、精神状態の不安定さといった「出産後の女性の心身の変化」

こういった生きるために大切なことを自分が直面する前に知っておけたら、「産後ケア」や「育児とキャリアの両立」について、じっくり考えて納得いく選択をしやすくなると思う。そういった知る機会が増えることで、女性も男性も家族との時間を大切にしながら、キャリアを積むことができるかもしれない。

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