薬学科を卒業して
私は6年間、私立の某理工系大学の薬学部で臨床薬学を学んでいた。
とりあえず資格が取れる学科に行きなさいという親に流され進んだ道だった。
薬剤師になりたくないという気持ちは大学3年生の頃から明確になりつつあった。
それと同時に、なりたくないと大半の人が思ってしまうような職業に疑問を感じ、これは教育がいけないのだと文部科学省のインターンに行ったりもした。
一時期遠距離の彼について行こうかと全国転勤可能なドラッグストアの薬剤師になることも考えたが、最終的には薬学とは関係のない進路を選択した。
問題が山積みの薬学から、一歩足を引きたかった。
外からしか見えない何かがある。
なんとなく、そう思っていたからだ。
医療の世界に閉じこもっていたくなかった。
外の空気が吸いたくて、自由になりたくて、狭い世界から飛び出してきた。
ただ、卒業して半年も経つと薬の知識は見事なまでに抜け落ち、薬剤師ですと名乗れるほどの自身もなくなってきた。
医療の現場から完全に離れてしまったからだろう。
私は何を活かせるのだろうか。
学生時代に学んだ多くの知識はいずれ記憶の果てへと追いやられるのが世の常だ。
せっかく比較的マイナーな選択をしたのだから、自分の専攻を何らかの形で、そう、誰とも違う角度からこの世に残したい。
そんなことを考えながら、嫌いだった薬学ともう一度向き合ってみる。
きっとここにはたくさんの面白い発見があるだろう。