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研修報告 女性向けリーダーシップ強化研修「Empowering Women in Politics」を2024年10月より開催します!【議員になりたい女性および現職女性議員向け】尼崎市議会議員 池田りな

こんにちは。尼崎市議会議員 池田りなです。研修の報告をいたします。
 
Empowering Women in Politics
議員と議員になりたい女性のためのリーダーシップ強化プログラム
主催:一般社団法人WOMANSHIFT(在大阪・神戸米国領事館助成プログラム)
 
日時:10月18日(金)13時30分〜15時30分
内容:なぜジェンダーギャップの解消が必要なのか?
     ー地方創生の現場から事実に学ぶー
講師:一般社団法人豊岡アートアクション理事長/前豊岡市長 中貝 宗治氏
 
【概要】
兵庫県庁に入庁され、その後、県議会議員を3期、豊岡市長を5期務められた中貝宗治氏にお話を伺いました。中貝氏は、コウノトリをシンボルとしたまちづくりや豊岡演劇祭の開催など、人口減少が進む中でも輝きを放つ政策を推進してこられ、2021年には一般社団法人豊岡アートアクションを設立されました。

中貝氏は、環境、演劇、インバウンド拡大に加え、ジェンダーギャップ解消を豊岡が世界で突き抜けるためのエンジンと位置づけています。「ジェンダーギャップを解消しなければ、女性の流出は止められず、少子化は加速する。自治体や政府はジェンダーギャップ解消を地方創生戦略の一環に位置づけるべきだ」と語っておられました。市長選で敗れた後も、その政策は次の市長に引き継がれています。

まず、豊岡市の現状について述べます。豊岡市は人口77,000人。2005年4月、兵庫県北東部の1市5町が合併して誕生しました。城崎は温泉、竹野は海水浴場、出石は城下町、日高は神鍋スキー場で名高く、但東はチューリップまつりで知られています。長年にわたる自然環境の回復によりコウノトリの野生復帰に成功し、近年は演劇のまちとして演劇祭も開催しています。

ここでは、研修会で特筆すべき5点について述べます。
1.  「小さな世界都市」を目指したまちづくり
中貝氏は市長時代に「小さな世界都市を創る」という目標を掲げました。これは、人口規模は小さくても世界の人々から尊敬され、尊重されるまちを意味します。資本力のある大都市と規模や速さを競うのではなく、豊岡市では深さや広がりに価値を置く方針を採用しました。

この「小さな世界都市」を実現するために推進されたのが、コウノトリをシンボルとした環境都市の創造と、深みのある演劇のまちづくりです。城崎温泉のインバウンド拡大についても「観光の輸出」と位置づけ、積極的に後押ししてきました。

2.  若者回復率の向上に向けた取り組み
豊岡市の10代の転出超過数に対する20代の転入超過の割合(若者回復率)は、2015年時点で男性が52.3%、女性が26.7%でした。ジェンダーギャップ解消の取り組みは、この現状への問題意識から始まりました。

1980年代には9万人を超えていた人口は、2010年には約85,000人、2040年には約57,000人まで減少すると見込まれています。人口減少の主な要因は若者の転出超過にあるとされています。高校を卒業した若者の約8割が進学や就職のために京阪神地区などに流出し、その多くが戻らないという傾向があります。

さらに未婚率の上昇により、出産適齢期の夫婦が減少して出生数が低下し、転出超過に拍車をかける悪循環が生じています。若者が戻らない理由は、経済的・文化的な魅力の不足によるものだと指摘されました。

3.  コウノトリの野生復帰
かつて日本各地で見られたコウノトリは、1971年に最後の1羽が豊岡市内で命を落とし、国内で絶滅しました。絶滅前には、コウノトリを守ろうという運動が豊岡で起こりました。1992年度には「コウノトリ将来構想調査費」が計上され、以降、市はコウノトリも住めるまちを目指してまちづくりを進めました。

中貝氏は「環境と経済を共鳴させる」という考え方を持っていました。例えば、「コウノトリ育む農法」では農薬や化学肥料を使用せず、コウノトリの餌となる生物を育む方法を採用しています。2020年度の調査では、コシヒカリを一般農法で栽培した場合、実質所得は水田10アールあたり約5万2,000円でしたが、コウノトリ育む農法で栽培した場合は約7万4,000円でした。この米は「コウノトリ育むお米」として米国や香港、オーストラリアなど9カ国・地域にも輸出されています。

4.  深みのある演劇のまちづくり
豊岡市の演劇のまちづくりのきっかけは、出石永楽館の復元でした。永楽館は近畿最古の芝居小屋とされ、2008年に再生されました。また、アーティストインレジデンスとして城崎国際アートセンターを開設しました。毎年2000万円赤字だったホールを演劇のホールとしてリニューアルしました。24時間練習でき、無料で借りられるため、国内外のアーティストが作品を試演できる場を提供しています。

演劇によるまちづくりに取り組む豊岡市の一般社団法人「豊岡アートアクション」では、認知症への理解を深め、認知症の人に寄り添う演劇的介護について考える講演会「認知症×演劇」も開催されました。こうした取り組みにより、豊岡は芸術文化の「過疎的消費地」から「創造の地」へと変わりつつあります。2021年には演劇と観光に特化した公立芸術文化観光専門職大学も開校しました。

5.  ジェンダーギャップ解消の重要性
ジェンダーギャップは、日本にとって重要な社会課題です。2023年の世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数によると、日本は146カ国中125位です。ジェンダーギャップ指数は、健康・教育・経済・政治の4領域での男女格差をスコア化しています。

アイスランド、女性の休日というストライキ Womens day off 1975年に起こりました。現在は、世界で最も男女格差が小さい国としても知られています。日本の女性たちはストライキをしませんが、地方のふるさとに女性が戻らないことを「静かな反乱」と表現していました。
 
私自身は、市議会議員になるまでは組織や社会において多様性を尊重し、すべての人々を包摂的な環境で受け入れ、多様な人材を活躍させることを重要視する考え方「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン」を掲げた会社で働いていました。女性社員や女性管理職の割合多かったため、女性であることで不利を感じた経験はありませんでした。しかしながら、今回中貝氏の話を通じて、年収や雇用形態において明らかな男女の差があることを改めて認識しました。
 
日時:10月18日(金)16時~17時30分
テーマ:すべての人が、行きやすく、生きがいのある町へ
〜ジェンダーギャップの解消〜
講師:豊岡市くらし創造部 多様性推進・ジェンダーギャップ対策課
 
【概要】
豊岡市の職員から、同市におけるジェンダーギャップ解消の取り組みについて説明がありました。ジェンダーギャップとは、社会的な役割や機会における男女格差のことを指します。

同市では、人口減少を克服するため「ジェンダーギャップ解消」を掲げ、戦略的かつ包括的な手法で注目を集めています。ジェンダーギャップ解消は未来志向の取り組みであり、過去の社会の在り方や人々の生き方を否定するものではなく、産業構造や人口構成の急激な変化に対応し、誰にとっても住みやすい持続可能な地域社会を目指しています。

同市は、出生率に影響を与える若い女性の流出要因の一つを「女性の地位の低さ」と捉え、慣習に踏み込んだ全国的にもユニークな施策を実施してきました。以下は、豊岡市の取り組みの流れです。

●  豊岡市ワークイノベーション戦略(2019年1月策定)
●  ワークイノベーション推進室(2019年4月設置)
●  豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略(2021年3月策定)
●  豊岡市役所キャリアデザイン アクションプラン(2019年1月策定)
●  ジェンダーギャップ対策室に改称(2021年4月)

研修で特筆すべき豊岡市の事業について2点述べます。
1点目は、ジェンダーギャップ対策室の設置です。2021年3月に市が公表した「豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略」に基づき、若者の意見を反映させた「住みたいまち」のビジョンを明確化し、実現に向けた10年のロードマップが戦略的に描かれています。この戦略に沿って、市はジェンダーギャップ解消に向け、さまざまな取り組みを行っています。

具体的な取り組みとしては、ジェンダーギャップについて考える啓発漫画の制作や、ジェンダー視点を取り入れた保育・教育を考える教員向けの研修会、働きたい女性向けのビジネスセミナーの開催など、多岐にわたる活動を展開しています。その結果、自治会役員に挑戦する女性や起業にチャレンジする女性も増えています。

また、豊岡市では2020年度から、従業員意識調査に基づく「あんしんカンパニー」という独自の表彰制度を設けています。この制度は、働きやすく働きがいのある事業所を応援するもので、宣言・認定・表彰の3ステップで事業所の改善を促します。

表彰を目指して職場環境の目標を明確にし、見直すことで、従業員の満足度向上も期待されています。この取り組みは、「働きやすさ」や「働きがい」を表す指針として就職活動中の学生にも評価されており、製造業から観光業まで、豊岡市内の企業全体に浸透しているといいます。

尼崎市でジェンダーギャップ解消のため、「男女共同参画社会基本法」及び「尼崎市男女共同参画社会づくり条例」に基づき、令和4年度から令
和8年度の期間で、第4次尼崎市男女共同参画計画を策定しております。当計画に基づいて、庁内関係部署が男女共同参画社会の実現に向けて施策を推進しています。

 尼崎市の状況についても4点共有いたします。1点目は、雇用形態についてです。女性の場合は、「正規の職員・従業員」及び「パート・アルバイト・その他」の 割合は41.5%です。
 

市ホームページ「国勢調査データを活用した部落差別(同和問題)に関する実態把握」p.31 https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/kurashi/hataraku/zinken/1037187/1037436.html

2点目は、尼崎市における市役所の女性管理職の割合と役職別の人数とについてです。
令和6年4月1日現在
・局長級 2名/全体18名(11.1%)
・部長級 5名/全体62名(8.1%)
・課長級 37名/全体206名(18%)
・審議会等の女性の登用率 38.2%
 
豊岡市の事例には、あらゆる組織に活かせるジェンダー平等実現のヒントが詰まっていました。私からは、専業主婦や子育てを優先したいと非正規雇用を選ぶ女性の存在に触れ、「女性の活躍推進が一部の女性にとって負担になる可能性がある」と質問しました。講師の方に働くことを望まない女性に対し、どのようなメッセージを発信しているかを伺ったところ、講師の方は「年金や離別・死別の場合に女性が貧困に陥るリスクが高いことを発信している」と述べていました。

本市でジェンダー平等に向けた事業を実施する際、フルタイムで働く、子育てなどに専念する選択をするのは個人の自由なので、ジェンダー平等を推進しすぎてプレッシャーを感じる方がいないようにはしていく必要があると考えます。
 

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