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【勉強会】シングルマザーと子どものリアルとサポート~尼崎市議会議員 池田りな

こんにちは。尼崎市議会議員 池田りなです。参加した勉強会について書きます。

2024年8月22日(木)10時〜13時
テーマ:シングルマザーと子どものリアルとサポート
講師:大阪社会保障推進協議会事務局長 
一般社団法人シンママ大阪応援団代表理事 寺内 順子
 
【概要】
 寺内氏は、2005年より大阪社会保障推進協議会(以下、大阪社保協)の事務局長を務められています。2015年には大阪社保協が「シンママ大阪応援団」を設立しましたが、2018年には同団体は一般社団法人として大阪社保協から独立しました。
 
 寺内氏は、2008年から「無保険のこども解消運動」に携わり、その後も子どもや親の貧困問題に取り組んでおられます。今回の勉強会では、大阪社保協での「無保険のこども解消運動」および一般社団法人シンママ大阪応援団の活動についてお話がありました。
 
 まず「無保険のこども解消運動」についてです。この運動は、国民健康保険の制度を巡る問題に焦点を当てています。現在は、特別の事情等がない限り、1年以上国民健康保険料を滞納した世帯には、被保険者証の返還が求められ「国民健康保険被保険者資格証明書」が交付されています。この資格証明書で医療機関を受診する場合、医療費は全額自己負担となり、その後役所に申請し、償還払いが行われます。

 このため、医療費の立替ができない子どもたちは病院に通うことができず「無保険」の状態に置かれていました。また、保険証がないことから、子ども医療費助成の対象外となっていました。

 こうした状況を改善するため、全国で様々な団体が運動や交渉を重ねた結果、2008年12月に改正国保法が成立しました。この法改正により、国民健康保険料が未納の場合でも、18歳未満の子どもには「国民健康保険被保険者資格証明書」が発行されず、代わりに有効期間が6か月の短期被保険者証が発行されるようになりました。

 なお、2024年12月2日からは「マイナ保険証」への切り替えが予定されています。「国民健康保険被保険者資格証明書」は廃止されます。国民健康保険料の未納があった場合、「特別療養費の事前通知」が郵送で対象者の自宅に送られます。医療機関で全額自己負担をし、後日の償還払いが必要になります。

 次に、寺内氏が代表理事を務める一般社団法人シンママ大阪応援団の活動についてご紹介します。「シンママ」とはシングルマザーの略称です。同団体では、食料品や日用品のサポート、親子で楽しめる無料イベントの開催、保育付きでママさんが学べる場の提供、実家がないママさんたちが帰れる場所「Zikka(実家)」の運営などを通じて、ママや子どもたちを支援しています。

 これらの活動の費用はサポーターからの寄付で賄われています。寺内氏は、「コロナの1年目、2年目には助成金が多く支給されたが、現在はシングルマザー支援や自立支援には十分な資金が得られていない」と述べられました。
勉強会で特筆すべき点を以下の5つにまとめます。

1点目は、ひとり親世帯の実態把握の必要性です。令和2年の国勢調査によると、尼崎市には20歳未満の子どもを育てる母子家庭が2,904世帯、父子家庭が408世帯あります。また、令和5年4月時点で尼崎市において児童扶養手当を受給している子どもの数は、母子家庭が3,466名、父子家庭が146名です。児童扶養手当は、離婚や死別等の事情により児童を養育するひとり親などに支給されるものです。

 現在、尼崎市ではひとり親家庭の支援対象世帯がどの程度存在するのか正確に把握しておらず、どのような悩みがあるのかを考慮した上で、適切な支援を検討する必要があります。

 例えば、大阪市ではひとり親家庭等の自立を支援するための施策について「大阪市ひとり親家庭等自立促進計画」で、今後の方向性を示しています。具体的な施策として、就業支援・子育て・生活支援、養育費確保に向けての支援・経済的支援があります。

同計画では、父子家庭について以下のように述べられています。
“父子家庭では母子家庭に比べ比較的収入があることから、ひとり親家庭の自立支援施策の対象に該当しない場合が多いです。 しかし、家事の仕方や異性の子育ての悩みなど、父子家庭特有の困難を抱えており、 母子家庭と異なる支援が求められています。”
参照:p.5 2sshou.pdf (osaka.lg.jp)

参照:資料_こどもの貧困対策・ひとり親家庭支援の現状について (cfa.go.jp)p.18

 私からは、尼崎市でもひとり親家庭支援の充実を図るため、アンケートの実施やひとり親に特化した計画の作成を市に提案しました。

 2点目は、子どもの貧困問題についてです。2008年は「子どもの貧困元年」とされ、2013年には「子どもの貧困対策法」が成立しました。この間に、子ども食堂の設立や学習・就労支援、居場所づくり、公的支援など、さまざまな取り組みが広がりました。

 2019年12月には5年ぶりに「子供の貧困対策に関する大綱」が改定され、令和元年10月から幼児教育・保育の無償化が実施されました。これにより、すべての子どもが安心して質の高い幼児教育・保育を受けられるようになりました。

 子どもの貧困には相対的貧困と絶対的貧困があり、相対的貧困とはその国や地域の中で比較して大多数よりも貧しい状態を指し、世帯の所得が等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態のことを言います。厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、17歳未満の子どもの貧困率は13.5%であり、約7人に1人が相対的貧困に該当しています。

 絶対的貧困とは、生きる上で必要最低限の生活水準を満たしていない状態を示します。令和2年度実施の尼崎市子どもの生活に関する実態調査結果では、小学生の9.0%・中学生の11.3%が相対的貧困であると報告されており、近隣他都市と比較しても子どもの相対的貧困の割合が高い状況です。
 

参照:尼崎市子どもの生活に関する実態調査結果についてp2

 3点目は、ひとり親の居住支援についてです。ひとり親家庭の居住支援についても課題が指摘されています。公営住宅の家賃は所得に応じて設定されていますが、入居できる家庭は限られています。

 下記、尼崎市のひとり親の居住状況についてです。2024年4月1日時点、尼崎市の公営住宅における20歳未満の子がいるひとり親世帯数は市営住宅371世帯(全体の4.6%)・県営住宅215世帯(全体の6.48%)です。

 2022年から本市で始まった生活困窮者などの居住支援を行う、あまがさき住環境支援事業 「REHUL(リーフル)」について紹介します。築年数や耐震性の問題から建て替えや取り壊しが予定され、入居者募集を停止する市営住宅では、年々空き室が増加し、自治会活動に支障が出る問題が生じていま
した。

 これらの課題を解決するため、空き室を生活に困った人の相談に応えてきた専門的な団体へ低料金で提供しています。経済的な事情で住宅確保が困難な人の自立を支援し、地域コミュニティの活性化も図っています。この居住支援で入居する34世帯のうち、7世帯が困難を抱えたひとり親世帯です。
 
 私からは、ひとり親家庭の居住支援として尼崎市に「空き家利活用事業の項目に、ひとり親のシェアハウス事業」を含めることを令和5年9月の第16回定例会で提案しました。

 4点目は、ひとり親の就労支援・スキルアップ支援です。ひとり親家庭の中には生活のために複数の仕事を掛け持ちしている親も多く、スキルアップする機会が限られています。特に若年層で出産し最終学歴が中学卒業のママたちにとっては、高卒資格が必要です。
 
 しかし、寺内氏によれば「長年勉強から離れていたママたちにとって、高卒認定試験を受けるハードルは高い」とのことです。同団体では、シングルマザーの就労支援のために「ワークサポート事業」を提供していました。同団体が実施した「シンママアンケート」で最も希望されたパソコンスキルの習得を目指し、MOS試験合格を目標とする研修を行いました。

 国の制度として、ひとり親家庭の自立を支援するための資格取得をサポートする「自立支援教育訓練給付金」や「高等職業訓練促進給付金」があります。しかし、これらの制度を知らないひとり親も多く尼崎市としても更なる周知と啓発が必要です。

参照 こども家庭庁 高等職業訓練促進給付金のご案内
https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/syokugyou-kunren
 
 寺内氏が「お母さんたちはSNSの良さは顔が見えない、知り合いではないから相談しやすい」とおっしゃっていたのが印象的でした。私への子育て世帯からいただく相談も、SNS経由で匿名相談が一定数あります。


ひとり親家庭支援|尼崎市公式ホームページ (city.amagasaki.hyogo.jp)

https://youtu.be/MsQ1h7vQw-A?si=4y9YycI67miicxg9



 
 


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