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視察報告 兵庫県立阪神昆陽特別支援学校・兵庫県立阪神昆陽高等高校 尼崎市議会議員 池田りな

こんにちは。尼崎市議会議員 池田りなです。視察の報告をいたします。
   
日時:2024年11月26日(火)10時〜11時半
場所:兵庫県立阪神昆陽特別支援学校・兵庫県立阪神昆陽高等高校
 
テーマ
・公立高校と特別支援学校を同じ敷地内で一体的に運営している学校について
・職業訓練に特化した特別支援学校について
・多部制の定時制高校について


【概要】
私は尼崎市で共生社会を実現するために、障がいや特性の有無にかか
わらず、子どもの頃から共に学び共に育つ教育が学校現場で必要だと考えています。

保護者から兵庫県立阪神昆陽特別支援学校・阪神昆陽高等学校についての質問を受けることが多くあります。以後「高校」と「特別支援学校」と記載します。

同校は、障がいや特性のある子もない子も共に学び育つ教育を推進するため、高校と特別支援学校を同じ敷地内で一体的に運営している全国的にも珍しい学校です。日常的に子どもたちが共に学び共に生きることが実現される学校を実際に見るため、今回視察を行いました。

特別支援学校と高校の間を行き来するには、一度外に出る必要がありますが、屋根付きの通路で繋がっていて上履きのまま移動できます。また、体育館やプールなどの施設は共用となっていました。

この学校は「ノーマライゼーション」の理念を掲げています。兵庫県教育委員会では「ノーマライゼーション」を以下のように定義しています。

「それぞれの学校に通う生徒が、同じ教室や施設等において共に学ぶ学習に取り組むなど、共に助け合って生きていくことを実践的に学ぶ機会を設定することにより、触れ合いを通じた豊かな人間性を育むとともに、社会におけるノーマライゼーションの理念を進展するための礎となる学校をめざす」
— 兵庫県教育委員会HPより

厚生労働省では、身体障害者ケアガイドラインにおいて「ノーマライゼーション」を以下のように定義しています。

「ノーマライゼーションは、障害のある者が障害のない者と同等に生活し活動する社会を目指す理念であり、そのためには生活条件と環境条件の整備が求められます。この理念は、1950年代にデンマークの知的障害児の親の会の運動に端を発し、その後、スウェーデンやアメリカにおいて発展しましたが、障害者に関わるのみでなく、社会福祉のあらゆる分野に共通する理念です。」— 厚生労働省HPより

まず、阪神昆陽特別支援学校についてです。この学校は知的がいのある生徒を対象にした職業科の特別支援学校高等部単独設置校です。国語、数学、理科、社会、外国語、体育、音楽、美術、情報などの教科学習に加え、職業に必要な能力や態度を身につけるための3つのコースが設置されています。
特別支援学校内には職業訓練校としての工夫が随所に見られました。例えば、身だしなみを意識させるための鏡の設置や、窓拭き技能訓練のためのガラス仕切りなどがその一例です。

● 流通サービスコース
● 食品加工・農園芸コース
● 福祉・介護コース

次に阪神昆陽高等高校についてです。この高校は、多様な生徒ニーズに応える多部制の定時制高校で、働きながら学ぶ生徒、中途退学者の学び直しを目指す生徒、自分のペースで学びたい生徒などが主体的に学ぶ場を提供しています。定時制高校の場合、通常4年間ですが3年間で卒業することもできます。
 
高校の主な取り組みについてです。
1. 「共生社会と人間」という教科
この教科では、「様々な障害に対する関わり方や援助方法についての基礎知識を習得し、障害者と健常者が共生する社会に貢献できる人材育成を目指す」とされています(学校HPより)。
 
特に高校1年生は全員、週1回「ノーマライゼーション」という授業を1年間受講しています。外部講師を招いた学び、車椅子体験、ボッチャ体験、LGBTQなどのテーマも取り扱い、共生社会への理解を深めています。また、年1回「ノーマライゼーション発表会」を開催し、生徒たちが学んだことを発表しています。

参照:学校案内

2. 共同授業の実施
高校と特別支援学校の生徒が情報、美術、体育の授業を共同で受けています。例えば情報の授業では、高校と特別支援学校の生徒がペアを組み、互いに助け合いながら学んでいました。高校1年生で必須の教科「共生社会と人間」という教科で学んだ知識が、これらの共同授業で実践されています。

3. 「共同学習」のカリキュラム化
特別支援学校の2年生と3年生は、週3時間、高校の授業に自主的に参加する「共同学習」がカリキュラムとして設定されています。どの授業を受けるかは生徒自身で選択します。この取り組みでは、生徒たちが特段のサポートを受けることなく自立して授業に参加しており、特別支援学校の生徒であるかどうかが一見して分からないほど、自然な形で学びが進んでいました。

4. 幅広い生徒の受け入れ
多部制高校として、学び直しを希望する生徒や多様な背景を持つ生徒が学べる環境を提供しています。小中学校に行けなかった不登校状態だった子どもたちも学んでいます。

視察で特筆すべきことを述べます。同じ敷地内に高校と特別支援学校が存在することで、工夫次第で日常的に特別支援学校と高校の子供たちが共に学び合う教育が可能です。

一体的な運用をする上で、特別支援学校と普通学校の教員が日常的にコミュニケーションを取れる環境が重要です。校長先生は高校と特別支援学校の二校を兼務しています。これにより高校と特別支援学校それぞれの違いを乗り越えながら、共に働く体制が整備されていました。

高校になると支援が必要な子どもたちは支援学校に通学することが多いため、障がいや特性のある子とない子は分離された教育が行われます。中学校までは、支援級や支援が必要な生徒が学校にいますが、高校になると両者が関わる機会がなくなります。

私はインクルーシブ教育という考え方を大切にしており、尼崎市で広げていきたいです。今回視察した同じ敷地に特別支援学校と高校があることは、生徒たちが共に学び合えるインクルーシブな環境で学べる環境であり、共生社会の実現に向けた重要な一歩だと感じました。

「インクルーシブ教育」と聞くと、支援学校や支援学級を廃止すると思われる方がいるかもしれません。しかし、私は保護者が学校に遠慮することなく、子どもに合った教育環境を自由に選択できることが必要です。今回の視察では、特別支援学校を残しながらも、私が理想とするインクルーシブ教育を実現できる可能性を感じました。

インクルーシブ教育とは、国籍、人種、言語、性差、経済状況、宗教、障害の有無にかかわらず、すべての子どもが共に学び合う教育です。これは、1994年スペインのサマランカ開催、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「特別ニーズ教育世界会議」において採択された「サラマンカ宣言」で、国際的に初めて提唱されました。

文部科学省が定義する「インクルーシブ教育システム」と、国連が定義する「インクルーシブ教育」には違いがあり、尼崎市議会でもたびたび議論されています。国連の定義するインクルーシブ教育を実施する場合、フルインクルーシブと表現されることがあります。

私は引き続き、尼崎市において共生社会の実現に向けて、市内の公立高校においても同校の「共生社会」について学べる授業の実施や、知的障がいのある子どもの公立高校受け入れを提案していきます。
 

阪神昆陽高等学校・阪神昆陽特別支援学校


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