かがやく海と喪失とイギーポップ、そして希望
日曜の朝、早起きして映画『ハナレイ・ベイ』を観た。
村上春樹の『東京奇譚襲』に収録されている短編が原作。
ここ最近読んでいなかったので、大まかな内容しか覚えておらず。あえてそのまま、映画を観に行った。
あらすじとしては、主人公・サチの息子タカシがハナレイ・ベイでサーフィン中にサメに襲われ、命を落とすところから物語が始まる。
それからサチは毎年その時期になると休暇を取ってハナレイ・ベイに行き、海辺で本を読みながら1日を過ごすようになった。
そうして10年が経ったころ、死んだ息子と年の近い日本人サーファー2人に出会い、サチの時間が動き出す、というお話。
愛するものを喪うこと、愛していたと認めること、喪失を受け容れること、がテーマなのかな。
映像が美しくて、吉田羊さんをはじめとするキャストの演技も自然で(吉田羊さんはまさしくサチだった)音楽もすごくよかった。
イギーポップの歌が効果的に使われているんだけどいまだに頭の中を流れてくるもん。
ぜひ映画館で見てほしい作品。
映画と原作を比べることってあまりしないんだけど、今回は映画を観たあとすぐ読み返してみた。
この短編を映画にまで膨らませたのはすごいなと思うし、キャラクターの変更や話の流れの変更がかえってよかったように思う。
原作はどうしてもサチの喪失感が色濃いけど、映画では海の美しさや好感の持てるキャラクターたちが、もとの雰囲気を壊さない絶妙なバランスで表現されている。それによって喪失と、その先の希望がより強く伝わる。
あとは自然に命を奪われることと、戦争で命を落とすことが対比されているけど、映画のほうがより印象に残ったかも。
映画の良さと小説の良さをそれぞれ感じられたような気がして良い体験だった。
ラストシーン、そして鑑賞後に見るようにと渡される鑑賞特典が、おそらく静かな波のように心に入り込んできて、いろんな気持ちを呼び起こすと思う。
どう思ったか、観た人と話してみたい(からみんな観て)。
久々に海を眺めたくなった。
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