解雇が始まった米ポッドキャスト業界:Podcast News
ポッドキャストが好きになる番組、ポッドキャストアンバサダー。
この番組は、Podcast ディレクターである新井里菜が、奥深い音声の世界をご案内していきます。
(こちらの内容は、ポッドキャストでも配信しております)
毎月最初は
さて、今回はポッドキャスト先進国、アメリカの気になる動向をご紹介したいと思います。
最近、Twitterで気になるポッドキャストに関するニュースを発信しているんですが、そこで「これ、結構これから数年続くな」と感じた動きがありました。それが、レイオフ、解雇です。
フォロワーさんからも結構反応があった話題でして、今、ポッドキャスト業界でどんな動きが出ているのか?
今日のテーマにしていきたいと思います。
日本でも数年先、同じような動きが出てくるかもしれません。
それでは本編を早速お楽しみください。
1.ポッドキャスト業界のレイオフ
今日は、ポッドキャスト業界にもやってきている、レイオフ・解雇の動きです。
少しネガティブなテーマとなるんですが、昨年末から特にアメリカのポッドキャスト業界の潮目が変わってきている様でして、今年からもしかしたら数年続くかもしれない、見ておきたい動きなのでここで取り上げたいと思います。
業界でどこが解雇に踏み切ってるのか、いくつか紹介したいと思います。
まず、Spotify。
今年2023年1月にレイオフ・解雇を発表しました。全体の6%に当たる従業員約600人が対象だそうです。これ、結構驚きのニュースとして国内でも報じられていました。
これまでSpotifyと言えば、ポッドキャスト事業にものすごく投資をしていたのがここ数年の動きでした。
例えば、優良なクリエイターの囲い込みという点では、
世界で一番稼いでいるとされるポッドキャスター、Joe Rogan氏や、元アメリカ大統領のオバマ氏の制作会社Higher Groundとの独占契約。
他にも、私が大好きなポッドキャスト制作会社Gimlet Mediaの買収などもありました。
また、テクノロジーやビジネス投資という意味でも、
配信サービスのAnchorの買収、音声広告の拡大を狙ったMegaphoneの買収、聴取やランキングデータとうテクノロジーをブーストするためにChartableを買収など、本当に大きな動きがあったのがここ数年です。
が、今回「収益増加より先に野心的に投資しすぎた」とSpotifyのCEOも言っている様に、ここから収益化を目的とした動きに注力していう必要が報道されています。その一環として、レイオフ・解雇が発表されています。
次に私が衝撃を受けたのは
NPR(アメリカ公共ラジオ放送)のレイオフです。
今年3月、全体の10%にのぼる従業員が解雇となると発表されました。
しかも、これまで私も聞いていたポッドキャスト番組「Invisibilia」「Rough Translation」など4番組が制作中止となることも発表されています。
ここの解雇に至る理由、これはスポンサー枠が埋まらなかった。ここだそうです。
NPR、公共ラジオ局なので、例えば番組制作もドネーション(寄付)などで賄う部分も少なくなかったと聞いています。
それに併せて、広告収入、スポンサー収入ですね。ここが予算に届かなかったこと。具体的には3000万ドル、日本円でおよそ40億円ショートしていた、ということだそうです。
他にも、ポッドキャスト制作会社「Pushukin」。
有名なビジネス本「ティッピングポイント」などの著者、マルコム・グラッドウェル氏のポッドキャスト制作会社も解雇を行なっている様で、やはり理由は収益化がネックとなっている事が伝えられています。
2.テック業界のレイオフ
さて、ここまでポッドキャスト業界の中の、いくつかの例をお伝えしてきたんんですが、実はこの動き、昨年末から始まってるテック業界の解雇と重なるところがあります。
Google、Amazon、Meta、Twitter……みなさんも聞き覚えがあるかもしれません。
ただ、アメリカ全体としては雇用状況はいいんですよね。未だ売り手市場。じゃぁなぜ、こうしたテック企業は解雇を発表しているのかというと、その背景には、ネット広告事業が苦しい、という共通点があります。
こうしたプラットフォーム上に広告を出さない、出し渋る企業が増えてきている、という事情です。
今、インフレ対策の影響もあって、いろんな企業もいろんな出費を切り詰め始めている。さらに、こうしたプラットフォームやSNSもたくさんある中で競争率が高くなっていて、広告を出す側の企業としては「どこが一番効率が高いのか?」そのSNSの使われ方によっても広告を出す先を見直す、そんな動きも大きくなっている様です。
3.テック業界とポッドキャスト業界の共通点
これ、スポンサー枠が埋まらなかったというNPRとも通ずるところがありますよね。
さらにはSpotify、最近では、これまで独占配信をしていたいくつかの番組を他のプラットフォーム、例えばApple Podcastsなどでも聞ける様にするとも発表しています。
ここの狙いとしては、広告枠を売りやすくする、ことじゃないかと思います。
広告を出す企業にとっては、これまで、Spotifyのプラットフォーム上だけでしか配信されない番組は、例えばリスナー数が10万人に限られていた。
けど、もしApple Podcastsでも配信されるとすれば、そこのリスナーがさらに追加された、例えばそのリスナーが20万人と倍になるとしたら、広告を打つ価値が大きくなるわけです。
これ、これまで独占配信をすることでSpotifyのユーザー数を増やすことが優先だったフェーズから、次のフェーズに変わっていっている。そういう流れじゃないかなと思います。
これ本当に興味深くって、
こうした独占配信の見直しとも言える動きで、じゃぁSpotifyのユーザー数がどう変わるのか?例えば一時的にユーザーが減っても、スポンサーが付いて収益化が安定するなら、こうした流れが他の番組にも及ぶのではないか?とか…
これ、国内でも独占配信の番組がSpotify上でもすでに結構ある中で、どうなるのか?今後気になるところでもあると思います。
ただこれ、以前のPodcast Newsのエピソードでも取り上げた様に、日本の動きと海外の動きとまだまだ差がありまして、日本は特に、まだまだSpotifyだけじゃない他のプラットフォームの独占配信とか、オリジナル作品がどんどん出始めているフェーズだと思うので、今日取り上げたアメリカの事例がそのまますぐイコールとなるか?というと、時差はあると思います。
が、個人の配信者としても、収益化という意味で言えば、例えばある一つのプラットフォームに帰属することによる制作に関する支援がある、ということもありつつ、スポンサーというプラットフォームに帰属しない形の収益化を考えた時には、また違う方向が広がっていくのかな、とちょっと先の未来も考えてみたくなる、そんな動きだと思います。
ということで、今回は最近のポッドキャスト業界で起こっているレイオフ・解雇をテーマに、どういう動きがあるのか?それが収益化にどうつながっていくのか?というところも考えていきました。
4.エンディング
さて、今回はPodcast Newsといことでポッドキャスト業界にもやってきている、レイオフ・解雇の動きについて取り上げました。
実際、これを聞いたから、今何をしなければいけない!という様な具体的な準備とか、テクニックとか、そういったものはないんですが、こうした潮流と捉えておくことで、配信をする先にどういった選択肢があるのか?それをいくつか持っておくことも大事だなと個人的に感じました。
例えば、独占契約を目的にする!というだけじゃなくて、他にどういったやり方があるのか?また先行事例なども含めてこの番組でも取り上げていきたいと思います。
今後も、毎月第1週目は、こうした音声業界の注目の話題や、最新のリサーチ情報などをご紹介していきたいと思います。
さて、次回第2週目は
ぜひお楽しみに。