オランダ3 「泳ぐ彫刻」をさがせ!(コンチキツアー1-4)
ずっと参加したかった、英語を使った国際ツアー「コンチキツアー」での思い出です。
旅にまつわる音楽を聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪
学生にも優しい、アムステルダムのランチ
アンネ・フランクの家を出てからしばらくは、沈黙になりがちだった。
「ここまでヘビーな気持ちで、観光できるかな……」
私が心配になっていると、ツアーメイトの一人が言った。
「とりあえず、クロケットでも食べてランチしよっか」
全員、その場で賛成した。
アンネの家に長居して、確かにお腹が空いていた。
元々市庁舎だった王宮など、堂々とした歴史的な建物が見渡せるダム広場で、お手頃なレストランが見つかり、私達はハンバーガーや、コロッケのようなクロケットを、すごい勢いで食べ切った。
「このサクッとした味、美味しいね!」
「物価もまあまあで、ありがたい〜」
「この中の半数は、学生だもんな!」
食後のデザートを食べながら、私達は先程のアンネ・フランクの家の感想を語り合った。
話していると、オーストラリアの教師・ケイトが再び涙を流し始めた。
「やはり教師というもの、これ位感受性豊かで熱い人がぴったりだな……」
私は今も、ケイトの純粋な涙が、忘れられずにいる。
切り替えの早さ
時計を見たら、再集合の時間まで数時間しかない。
「いつの間に、こんな時間経ったんだろ!」
「数時間で、何しよっか?」
ゴッホ美術館やレンブラントの家など、様々な候補が出て来た。
ワイワイ話している内に、アンネ・フランクの家を出た後の重い空気は、あっという間に亡くなっていた。
一番心配していたケイトも、先程まで流していた涙は何処へ?という位、ジョークを飛ばしながら大笑いしている。
コンチキツアーメイトの、びっくりする程の切り替えの早さ。
私もついて行きたい所だ。
そんな時、私は彼らから質問を受けた。
「Rinaは、アムステルダムで何がしたい?」
「私は……そうだなぁ……ピーター・ファンデンホーヘンバンドに会いたい!」
「ん?何て??」
子供の頃のヒーロー「ピーター・ファンデンホーヘンバンド」
かつて競泳のオランダ代表で、オリンピックで金メダルを3つ、銀、銅も複数取った英雄・ピーター・ファンデンホーヘンバンド。
「泳ぐ彫刻」と勝手に命名して熱く応援していたが、その名前の長さのせいか、なかなか人に覚えてもらえないようだった。
オリンピックでピーターを熱心に応援し、金メダルが確定した時に嬉し涙を流した当時が、昨日のように甦って来た。
「ピーター・ファンデンホーヘンバンドは、イアン・ソープと戦ってた、自由形(クロール)の名選手だよ」
「イアン・ソープ!我らがオーストラリアのヒーローだったなぁ。イアンと戦ってたの、確かにオランダ人だったね!終わった後2人が互いを認め合って抱き合うシーン、好きだったよ」
「イアンとピーターの“ライバルだけど友達“っていう関係、今でも続いてたらいいなぁ」
「それで、ピーターのどんな所が、Rinaは好きだったの?」
「シャープでスピーディーな泳ぎが、まるで“泳ぐ彫刻“みたいで憧れてたの。医大生で二刀流なのも、尊敬してたし。私もピーターみたいに、水泳選手を目指したら良かった思った時期もあったよ」
スイミングスクールでそれなりに良いタイムを出せ、コーチからも褒めて頂いていたのに、どうして私は水泳をやめたんだろうと後悔したことも、思い出した。
「“泳ぐ彫刻“、すごい名前!」
「彼はRinaにとっての、ヒーローだったんだね!マイケル・フェルプスとか、イアン・ソープを通り越して……!」
「ごめん、アメリカとオーストラリアのスイマーもすごいとは思ってたけど。ピーター、もう引退してるから、アムステルダムを歩いてるんじゃないかと思って!」
「確かに。みんなで探そうよ!“泳ぐ彫刻“の写真、チェックしとこう」
「ピーター・ファン……何だっけ?」
名前が長い、ピーター・ファンデンホーヘンバンド探しにまで協力的な、優しく愉快なコンチキメイト達だった。
ピーターが見つかるのは、どこ?
「“ウォーリーを探せ“ってゲームがあるよね?今日はピーターを探そう!」
「ありがとう!ピーター、どこにいそうかな?」
「レンブラントの家の周りとか、ジョギングしやすそう」
「それより、こっちのフワラーマーケットは?」
「いいね、見つかりそう!買い物も出来て、一石二鳥じゃん」
いざ、ピーターをさがせ!
私達は早速、フラワーマーケットを訪れた。
「フラワーマーケット」という名前通り、球根や季節の花など、まさにお花で溢れた市場だった。
美意識の高そうな男女が、たくさん行き交っている。
長身でスリム、まさに彫刻のような男性が、私達の近くを通り過ぎて行く。
「えっ!もしや……」
私はとっさに、サインをお願いする準備をしかけたが、よく見ると別人だった。
世界最多の種類があるのでは?と思う、たくさんの球根のお店に入っても、ピーターと似た髪型で長身の彫刻にハッとした。
「Rina、ここ、“水の彫刻“多くない?」
「う……うん。フラワーマーケットだけど、水の彫刻マーケットでもあるわ」
「あははっ!後はピーター・ファン……本物に会えるかだね!」
お花以外も楽しめる、フワラーマーケット
カラフルなハウスボートにも、出会うことができた。
「後一泊できるなら、ハウスボートにも泊まりたかったね」
未来へのプランが、ここでも追加される。
花だけでなく雑貨屋さんも多く、私達はハンモックでシエスタもさせてもらったり、オランダの午後をこのフワラーマーケットで思う存分楽しませてもらった。
ハンモックでのシエスタ中に店に入って来た人も、ピーターに似ていて、ツアーメイトが私をいたずらに叩く。
「来たよ!本物?」
「!……ちょっと違う」
「惜しいっ」
「泳ぐ彫刻」が多い国?!オランダ
ピーター似はたくさん探せたものの、本物のピーターを探すのは、やはり困難だった。
でもフワラーマーケットは、「泳ぐ彫刻」ピーター・ファンデンホーヘンバンドにとても似ている、美意識の高いスイマーのような人が多かった。
長身、スリム、彫刻というのが、オランダ男性の典型なのだろうか。
サッカーなど、水泳以外のオランダ代表になるとまた違う気がするから、ここは水球や水泳という「泳ぐ彫刻」が、多い国なのかもしれない。(ピーターの弟も、水球の選手だったかと思う)
あなたも、OOをさがそう
いつもはお花を買いに行く目的でフワラーマーケットに行かれる方も、お気に入りのオランダ人を探すという目的を加えると、ますます楽しみが増すのではないかと思う。
「ピーター・ファンデンホーヘンバンド!会えなかったけれど、楽しいゲームをさせてくれてありがとう!」
私はまたピーターに会える日を夢見て、ツアーメイトとフラワーマーケットを跡にしたのだった。