オランダ4 伝統と斬新が共存する、アムステルダム(コンチキ1-5)
ずっと参加したかった、英語を使った国際ツアー「コンチキツアー」での思い出です。
旅にまつわる音楽を聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪
待ち時間に、目に入ったもの
アムステルダムのハイライトは、ツアー全員での運河クルーズで締めくくられる。
私達は、余裕を持って集合場所付近に着くことが出来た。
「まだ時間あるね」
ゆったり運河沿いの散歩を楽しんでいると、「コーヒーショップ」の文字が私達の目に入って来た。
「今日でアムステルダム最後だし、時間までコーヒーショップ、いこっか!」
アムステルダムのコーヒーショップ
コーヒーショップは、「オランダ1」でも登場した、夜の散歩の途中に入った場所だ。
アムステルダムのコーヒーショップは、コーヒーだけでなく、ある物が色々な方法で経験出来てしまう。
「葉巻だけじゃなくて、コーヒーやブランデー、ケーキやマフィンにも、大麻が混ぜられるなんて……!」
と、衝撃を受けた。
嫌悪感がある人は、最初から入らない方がいい。
日本のツアーでは確実に、コーヒーショップへの入店は含まれていないのでは?と思う。
このコンチキツアーの参加者は
「郷に入れば郷に従え」
という考えの人も多かったようで、特に18〜20代前半の人達は、ほぼ全員体験していたかと思う。
お酒より意外に軽いという、OO
前回、夜の散歩で入ったコーヒーショップでは、勇気あるツアーメイトが大麻を吸い出した。普通のタバコと変わらずぷかぷかと吸い、彼らの話では
「これ位じゃ、何も起こらないよ!」
ということだ。
「Rinaの番だよ!」
「私、タバコすら吸ったことないからなぁ。日本では大麻は合法じゃないけど、いいのかな」
「ここはオランダだし、今経験しなきゃ、一生経験することもないかもよ?」
そう言われると、合法になっているこのオランダで、一生に一度は体験しておこうかと思った。
「どう?だ……大丈夫?」
「す、すごい匂い!」
ほんの少し吸った所でリタイアしたからか、お酒のように酔っ払うことはなく、一安心した。
大人のスイーツタイム
だからか、二度目のコーヒーショップへと入る足取りは、軽かった。
「葉巻とコーヒーでお願いします」
「Rinaは、どれにする?」
「葉巻はもう無理!私スイーツが好きだから、このスペースケーキにする!」
大麻が入っているケーキということで、こちらも一生に一度だけと決め、どんな味かと恐る恐る口にしたが、普段のケーキと何も変わらない。
「普通に美味しい!」
「こっちのマフィンも、食べる?」
こうして葉巻や、大人のケーキやマフィンなど、各々が大人のスイーツタイムを楽しんでいる内に、あっという間に美しいサンセットが始まり、運河クルーズが始まった。
「橋の博物館」にいるような錯覚
私達、学生世代に特に人気のポップスが鳴り響き、クルーズ船は出発した。
フィンガーフードを楽しみながら、美しい運河の景色を楽しむ。
マヘレのハネ橋は、おもちゃの国から出て来たように可愛く、私達は歓声をあげる。
可愛い橋や堂々とした橋、まるで橋の博物館にでもいるような気分になれる。
橋ばかり見ていると突如、モダンな建物も私達をびっくりさせてくれたりするのだ。
「もはや室内にいるのはもったいない……」
「写真を撮って、外に出ようよ!」
同じようにクルーズを肌で感じたいという、ブラジルとメキシコのツアーメイトと、室内の写真を気分良く撮った。
「……ねえ、僕達、目がとろんとしてない?特に……Rina!半目?」
「そんなこと……あるね?!」
ブラジルのガルシアは、大笑いしている。
自分ではしっかりポーズを撮ったつもりが、おかしいと思った。
そこから、ガルシアとメキシコのセリオと話している会話のはずが、時々意識が違う所に行っているのか、「Rina〜!」と何回も呼ばれ、私はいつの間にか船の外に来ていた。
なぜか時々、口や目がしびれるかのように、震えた。
なんとも不思議な感覚だ。
優しい風の中、運河に浮かぶ教会に魅せられて
その時、夕焼けの中に佇む美しい教会が、私の目の前にあった。
教会は左右に震えていて、不思議かつ美しい、ムンクの世界のようだった。
運河、教会、夕焼け、全てが完全に重なり合った風景。
優しい風に包まれ、美味しいワインを飲みながら思った。
「なんて平和な、優しい時間なんだろう……」
その美しい景色に見とれていると、たくさんの「Rina!」の声が聞こえた。
私はその後、何を言って彼らに答えたのか、よく覚えていない。
起きるだけで、喜ばれる〜その意味とは〜
翌日目を覚ますと、ジュリーの大声が聞こえた。
「Rina!良かった〜、普通に起きてくれた!」
「おはよう!というか、もう朝?私、いつの間にか寝ちゃったんだね?」
ただ起きただけで、ルームメイトのジュリーがこんなに喜んでくれるのは嬉しかったが、どうしてだろう。
「Rina、あなたクルーズの途中から夢見心地になったり、すごく陽気になったりしたのよ」
「そんなに、陽気になっていたの?」
「うん。誘拐されないように、私達で守ったの」
「そこまで……?!ありがとう……!」
「たくさんの水も、散歩も効かずで、喉が相当渇いたみたいで、震える口で1リットル位、水を飲んでたわ」
「そしたら、どうなったの?」
「“世界で一番幸せ“って超ごきげんで眠ったの。そこから全然起きなくて」
どれだけ爆睡したのだろう。
「別にRinaはタバコを吸いたかった訳でも、スペースケーキを食べたかった訳でもなかったのに、ごめんね」
「ううん、一生に一度は経験しとこうって自分でやったことだよ。それより、誘拐から守ってくれて、ありがとう」
ジュリーの輝く様に白い歯が見え、笑顔が戻って来た。
「もちろんよ!私はRinaのルーミー(ルームメイト)なんだから、ツアー中ずっと、守り通すわ」
「嬉しい。やっぱり私、“世界で一番幸せ“!」
ジュリーは、長く美しい金髪をなびかせながら言った。
「みんなに、Rinaが無事起きたって知らせなきゃ。よしっそれじゃあスーツケースのパッキング、急いで進めよう!」
なんと頼りになる、ルーミーだろう。
より絆が深まった、「不思議な体験」
ジュリーに手伝ってもらって朝食のレストランに降りて行くと、私達はツアーメイト達から歓声で迎えられた。
「生還おめでとう!」
どんな顔で”世界で一番幸せ“と言ったのか恥ずかしい限りだが、クルーズ中に私はますます、既に顔見知りになったツアーメイトとの距離を縮め、まだ話していなかったツアーメイトとも打ち解けていたようだ。
生まれて初めての「大人のケーキ」は、思っていた以上に私を「不思議の世界」へと誘惑した。
大人のケーキを食べることも吸うことも、あれ以降ないし、今後もないだろう。
ただ、あのケーキを食べた後のクルーズで、夕焼けの中、運河に震えるように浮かんでいた教会の幻想的な光景、ツアーメイトに朝起きただけであんなに喜んでもらえたことは、不思議で嬉しい体験になった。
「平和で伝統的」と「強烈で斬新」の共存
アムステルダムでは他にも、この町でしか出来ない独創的な事柄、モノに出会える。
それらを色々経験する場合は、頼れる仲間と一緒だということ、もしくは最小限の荷物で出かけることが大前提かと思う。
「北のヴェネチア」という伝統的な雰囲気に始まり、「自転車の町」「環境の町」といった平和で優等生のようなイメージと、「大人文化の体験」といった強烈で斬新なイメージは、一見対極に見える。
でも、これら全てを成し得てしまうのが、アムステルダムだった。
私はコンチキツアーメイトと共に様々なアムステルダムを体感し、次の滞在国・ドイツへと向かった。