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「自撮り」で人生が変わった話

今日から初の著書
#セルフポートレートの裏側  が発売される。
せっかくなので、私の今までの人生や製作の経緯について語らせてもらおう。


写真の世界へ


私は7年前、写真にハマった。
当時の私は高専で土木を学んでおり、焼肉を奢って貰える&テストの過去問を貰えることを理由に入部した写真部(幽霊部員)だった。
その頃成績はかなり良く、将来は大学に編入して建築家になろうと考えていた
そんな時、バイト代でなんとなくストロボと単焦点レンズを買ったらどハマりしてしまった。

当時からTwitterは使っており、たまたま後輩の友達が被写体として写った写真が流れてきて、ポートレート界隈というものがあることを知った。
私が所属している写真部でポートレートを撮っている人は1人もいなかった。
少しでも早く写真を上達させるために情報収集が必要だと思い、専用のアカウントを作った。そして自分自身が被写体となり、撮っていただく間に目で技術を盗んだ。
写真は初めてTwitterでご連絡いただいたカメラマン、ひさんに撮っていただいたお写真。


そして色んな写真展に足を運び、たくさんの作品を拝見した。
中でも、高専4年の時に大阪のオリンパスギャラリーで開催されていたHASEOさんの個展で圧倒された。

写真展で仲良くなった人達と遊ぶことも増えた。
周りから少しずつ吸収した技術を元に、自分を被写体として撮影して練習した。

写真にハマってまず気がついたことは「お金がかかる」ということ。
撮ってもらっている時に使っている機材を教えてもらったが、学生の私にとっては全て高額なものだった。
卒業後は少しでも早くお金を貯めて、休みの日に思いっきり写真を楽しみたい!と思い、安定職である公務員を志望することにした。

公務員時代

その後、高倍率の公務員試験に無事合格し、高専を卒業した。
就職してまず最初にしたことは、20万円のフルサイズ一眼と18万円のPCの購入。
当然、ローンで分割払い。
公務員はローンが組みやすいのだ。
さらに無金利ときた。実質無料である。
就職後は土日になったら撮影に出かける日々。
土日だけでは物足りず、仕事終わりにも撮影した。
仕事の休み時間には自宅から持ってきたノートPCで現像作業。写真漬けだ。
本業もかなり忙しくて、残業が多かった。終業時間が22時を超えることがほとんど。
モデルさんとスケジュールを合わせるのも大変。そんな中、自分を練習ではなく、作品として撮ることが楽しいと思うようになった。
自分1人で好きな時間に作品を作ることができるようになってから、さらに写真への熱が高まっていった。

公務員なりたての頃にうささんに撮ってもらった写真

コロナ禍

セルフポートレートどハマりの最中にコロナが流行した。
初めてCP+に行こうと思い、自撮りできそうなホテルを予約していたら、直前に中止になった。
有給もとっていて、ホテルもキャンセル料がかかるため、自撮りするために横浜に行ったことは今でも思い出である。
そこから先はステイホームの日々が続いた。
外で撮影できない。ロケ撮影が好きな私にとってとても辛かった。それでも撮影したいという気持ちは強く、家の中や家のベランダでセルフで撮影した。
さらに祖父が遺した家をスタジオに改造して、そこでも撮影するようになった。

なんとなく、その時の撮影の裏側動画をアップしたらとても反響があった。
その後、その裏側動画をきっかけに、NHK Eテレ「沼にハマってきいてみた」という番組で紹介していただくことになった。
これが私の転機となった。
気がついたら退職届を出していた。

退職する時、上司から「テレビを見た、写真撮ってる時の顔は普段と全然違ってイキイキしている」と言われた。
高専時代の友人からは、「辞めると思ってた。りなに公務員なんて全く向いてないやん!」と言われた。
両親にはこの世の終わりのような顔をされた。
まぁ当然だろう。

フリーランスフォトグラファーデビュー

2021年4月 フリーランスのフォトグラファーとして開業届を提出した。
公務員を辞めた私は実家から追い出され、コロナ禍に作った風呂無しのスタジオ(祖父の家)に暮らすことになった。
どこに所属するわけでもなく、完全に独学で技術を身につけてきた。
特に顧客もいない。営業方法も知らない。
今考えたら本当に無謀である。

そんな無計画な私を拾い、私の将来性を見込んでマネージャーになると言ってくれる方が現れた。その方は私が高専時代から遊びに行っていたカフェのオーナーであり、YouTuberのイルコさんのマネージャーをされているJackさんという方だ。
特に稼ぐ力を持っていない駆け出しの写真家に手を差し伸べるなど、普通はしない。
2人目の社員として迎え入れてくださった。
写真家になることに反対していた両親にも会って、これからの計画を話してくださった。
その後、セミナーやカメラ雑誌など、私の活動の場を広げてくださった。
本当に有り難かったし、期待に応えたいと思った。

人生のどん底へ

6月のある日、突然写真家のHASEOさんからお電話をいただいた。
恩師であり、マネージャーであるJackさんが亡くなったと。
奄美大島で溺死だった。

目の前が真っ暗になった。
突然前触れもなく、大切な人がいなくなってしまった。

とある方から、稼ぐ能力がない奴はいらないと言われた。確かにその通りで、私は写真家になってからJackさんに頼り切りだった。
何も反論できない。すごく悔しかった。

自分で稼ぐ力はまだない。お給料も入ってこない。
それでもカメラのローンや奨学金は毎月払わなければならない。

食い繋ぐために、近所の居酒屋さんでバイトを始めた。それだけではお金が厳しく、ガールズバーでもバイトを始めた。可愛いわけでもなく、お酒を一切飲めず、カメラの話しかできない私には向いておらず、全く続かなかった。
仲がいいと思っていた人に、よくわからない投資セミナーに誘われる始末。
作品を撮る元気なんてほとんどないし、撮るためのお金もない。
もう一度、土木の道に戻ることも考えた。

そんな時、HASEOさんから一本の電話をいただいた。

「周りの人への感謝の気持ちを絶対に忘れず、もう一度、人生をやり直した気持ちで頑張れ」という励ましのお言葉をいただいた。
そして仕事のアドバイスをたくさんいただいた。

私にとって、とても心強い出来事だった。
きっと、その電話がなければ、写真家の道は諦めていたと思う。
一番大変な時に手を差し伸べてくれる人への御恩は絶対に忘れてはいけないと思った。
すぐにいただいたアドバイスを元に行動した。

その後も、HASEOさんをはじめ、Jackさん経由で知り合った沢山の方に助けていただき、なんとか自分を立て直すことができた。
人のご縁に恵まれた。


その年の末、東京カメラ部10選に選んでいただいた。
選んでいただいた作品は「孤高」。
写真家として、厳しい世界でも自分らしく生き抜いていきたいという願いを込めて撮った作品だった。


#セルフポートレートの裏側  出版決定

ある日、突然玄光社さんから一通のメールが届いた。
セルフポートレートの本を出さないか というお話。
本が中々売れにくくなっているこの時代に、単著で出版してもらえるというのだ。
嬉しすぎて、すぐに返信した。

その後、出版社さんと打ち合わせをした。どんな本を作りたいか、どの作品を紹介したいか、どんな人に届けたいかなど、私の意思を伝えた。

本の構成のテンプレートを作っていただき、それに合わせて移動中にスマホのメモ帳に文章を打ち込んでいった。
さらに、気合いの入った撮り下ろし作品を載せたいと思い、立山連峰に登山した。
当初、5月頭に登る予定だったが、雨予報となってしまったため、6月頭に変更した。


表紙の写真は6月頭、文書は6月末までにほぼ書き終わらなければまだならない。
さらに6月末に大阪で個展の開催も控えていた。
当然、執筆以外の仕事もたくさんある。
全てがギリギリすぎる…
毎日寝不足だったが必死にこなしていった。

使っている機材、衣装、食べているものの写真、筋トレ中の写真も欲しいと要望があり、全て1人で用意して撮影した。
特に衣装は140着以上あり、並べて片付けるだけで丸2日かかった。

さらに7月中旬にも山口に遠征予定があり、その作品も掲載したいという私のわがままを聞いていただいた。
移動中に文章を書き、レタッチをしてデータを共有した。

その後原稿を何度も読み直し、ミスなどをチェックした。かなりタイトなスケジュールだったため、スタッフのみなさん本当に大変だったと思う。
感謝の気持ちでいっぱいだ。

完成した本を手にした時、目の奥が熱くなった。
写真を続けてきてよかったと心から思った。

今日から発売!

いよいよ私の初めての本が本屋さんに並ぶ。
すごくワクワクしている。

セルフポートレートを撮る人にはもちろん、自撮りはしないけどモデルさんを撮る人、モデルさん、そして私の作品を好きだと思ってくれる全ての人に楽しんでもらえる本になったと思う。


私は写真に出逢うまで、ただのガリ勉だった。
特に才能もない。特に可愛いわけでもない。そんな普通の私が写真に出逢い、自分を撮ることの楽しさに気づき、本を出すことができた。

写真を通して、自分の見せ方を理解し、自分のことを好きになることができた。
写真を通して、かけがえのない多くの人々に出逢うことができた。

私1人では成し遂げることができなかった。
放牧してくれる人、写真を好きだと言ってくれる人、全力で応援してくれる人がいたおかげだ。
セルフポートレート作品は1人で撮影を行っているけれど、たくさんの方の応援がなければ作品作りは続けることができなかった。


最近、私をきっかけにセルフポートレートを始めたという話もよく聞くようになった。とても嬉しい。

私の人生を変えた「自撮り」、そして「写真」の楽しさをこの本を通してたくさんの人に伝えたい。

そして、私の作品が、素敵な人生のきっかけになれたらと思う。

是非、ご覧ください。

#セルフポートレートの裏側  撮影もモデルも全部わたし。 https://amzn.asia/d/2SjpFx1

イベント情報
9/8(日) 14:00-15:00にヨドバシ梅田にて発売記念イベント開催!








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