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ファンレター処女な私。

今まで機会がなかった訳じゃない。しかるべきタイミングで、しかるべき相手に、しかるべき内容で——。
そんなことを考えていたら、あっという間に三十路手前なのである。時の流れは世知辛い。

林檎と事変

私は姉の影響で、物心ついたときにはもう椎名林檎さんの音楽が好きだった。

小さいころは彼女が何者かも、歌詞の意味も、その緻密に練られた音の意図もわからないまま、ひたすら姉と一緒に家で歌っていた。

大きくなるにつれ、その音楽と自分の醜い事実を重ねたり、粛々と作品を生み出し続ける職人みたいな姿勢自体に焦がれたり。
多くの人にとってそうであるように、彼女の音楽は、ずっと私の生活に寄り添って、受け入れて、気付かせてくれて、ちょっと背筋を伸ばしてくれる、そんな存在。

生意気にも、当たり前にそこにあったから、俗にいう「推し」なる存在と一緒にしたくないような、でも確実にそれのような。

控え目に言って、彼女は私の人生に欠かせない。


爆誕

林檎・事変を愛する私が今このタイミングでファンレターのことを改めて考えたのは、ある女の子の存在を知ったからだった。

NetflixでBLACKPINKのドキュメンタリーを観てから、K-POPの情報を追うようになって、その流れでなんとなく観ていたガールズプラネット。日韓中、99人の女の子の中からデビューできる9人を選ぶオーディション番組だ。

その中の一人に、私は生まれて初めて一目惚れをしてしまったのだ。彼女の名前はスールイチー。中国の女の子。

見た瞬間、釘付け。
あ、ちょっと待って可愛すぎない??
え、何この子、カッコよすぎない???
ぎゃー!!!歌もダンスもラップも群を抜いて上手え!なんだこの子!!!なんなんだこの存在感!!??

気づいたら純粋に「すげえ応援したい!!この子のパフォーマンスをずっと見ていたい!!」って気持ちになっていた。

結局彼女はこのオーディションではデビューできなかったのだけど、後日、中国で正式にソロデビューが決まったらしい。(この辺の話は多分ググった方が早い)

その後、普段数人しかフォローしてないインスタもYoutubeも登録して、この子を追いかけるようになった。
あ、もしかしてこれが例の「推し」ってこと??
推しだね!!!!??
私、推してるね!!???


昔から馴染んでいる林檎さんに対しても、最近知ったルイチーに対しても、おかげで爆発した「届け!!!!私の思い!!」感。
この気持ちをどうしてくれよう。
ネット上の不特定多数の人も見れるコメントじゃなくて、確実にその人に届けたい。

そうか、こういうときのためにファンレターがあるのか。


形にしなくっちゃ

「って感じでさ。今ついに処女を捧げそうになってるんだよね。」
姉と姉の旦那と妹の4人のLINEグループにて。
私がそう送ると、すかさず姉の旦那からリアクションがあった。

「俺の英語のクラスで、『TWICEに英語でファンレターを書こう』っていう授業やったことあるよ。返事ないけど。」
姉夫婦は中学校の教師をしている。その子供たちが書いたファンレターも実際に送付したらしい。

「マジかよ。なんだよその面白そうな授業。」
私がここまで大事に大事にとっておいたファンレター処女。今時は義務教育であっさり捨てられるらしい。
とにかく、と続けて姉の旦那は言う。

「届いてるかわからないけどさ、送らないとそもそも、伝わらないよ。」


んな、なんと。
そりゃそうか。身近な人に対してでさえ「口に出さないとわからない」と言われるのだから、遥か彼方にいる人に対してなんて、もっともっと、はっきり形にしないと伝わらない。


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便箋を用意しよう。
中身には、洒落た言い回しも長い説明文も必要ない。
たったひとことでもいいから、シンプルに。
「好きです。ずっと応援しています。」
それが伝れば十分か。



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