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ありがとう、Flash。

2020年も、もうすぐ終わりですね。

この年末でFlashのサポートが終わるそうです。Flashには本当にお世話になりました。Flashと言えば一般的には、ゴノレゴやモナーなんかのおもしろFlash動画が有名なのですが、インタラクティブデザインの世界でもたくさん使われていました。

Flashとの出会い

自分のFlashとの出会いは、2002年頃。当時大学生だった自分は、ウェブサイトの授業でその存在を知りました。そこで衝撃的なFlash作品を知ることになります。その授業の講師の先生にから、すでにFlashを使って様々な魅力的なウェブサイトを作り上げていた中村勇吾さんの作品を紹介してもらったのです。(ECOTONOHAを発表する直前で、超ブレイク前夜だったかと思います)インタラクティブなウェブサイトの世界に引きずり込まれたのでした。

中村勇吾さんのサイト、yugop.net / yugop.com には、たくさんの試作品があったのですが、その中でもとくに印象的だったのが、こちらです。

Industrious Clock
Ars Erectronica の公式チャンネルから紹介させてもらっていますが、当時自分が見せてもらったときには、ブラウザ上で動作するFlashでした。ネットワーク上の時刻に同期し、時刻を表す数字を鉛筆を持つ手が書き記し続ける。

簡潔ながらも強い作品で、いつまでも脳裏に焼きついていたのでした。

Flashをいじった頃

その後、さっそくFlash MXをいじり始めました。Flashは、大学生でも、本を読みながら実装することができる、初心者にもやさしいツールだったのです。自分は「インタラクティブ」という概念に大きく影響されました。

それまでに学んでいたグラフィックデザインは、どうやって印象に残る画面をつくることができるかといった技能や、いかにして見る人をおもしろがらせるかといったことに重きが置かれていたので、「インタラクティブ」というその概念に触れたことは、大きかったのです。

遊べるアイコン
「インタラクティブ」をすごく意識した作品。と言いつつ、Flashの作品ではないです…。Macのファイルをの整理に使われている「フォルダ」のアイコン画像を変更することにより、フォルダそのものにエンターテイメント性を持たせた作品。当時の自分はかなり画期的だと思っていたが、あまりにもマニアックすぎて一部の人以外、全くウケなかった。

Flashには動画ともウェブサイトともつかないものを受け入れてくれる懐の深さがあり、そのふわふわした感じに、なぜだかとってもわくわくしたのでした。そして、最終的には大学生活最後の卒業制作をFlashでつくることにしました。

Walk
卒業制作。アニメーションから、アクションスクリプトの打ち込みまで半年間かけて、ひとり黙々と制作したFlash作品。

そして、この卒業制作が、その後の自分を大きく変えてくれたことは幸運でした。卒業後、電通に入社したて、グラフィックのアートディレクションの仕事では全く鳴かず飛ばずだった自分は、ひょんなことでYahoo!の主催するインタラクティブな作品コンペティションに応募し、評価してもらえたのです。だいぶ折れそうだった自分を助けてもらい、今後の制作の方向性への光をもらうことができたのです。

仲間とつくった実験的作品

そういうわけで、その後は実験的な制作物をはすべてFlashを使って制作しました。ふたつの画面が連動するケータイの待受や、バラバラになった要素からキャラクターをつくることができるウェブサイトなどをつくったりしました。

当時一緒にアイデアを考え、企画し制作をしていた松浦夏樹氏がFlashでの実装を担当してくれました。

はんぶんこ待受
連動するふたつのガラケー(ガラパゴスケータイ、フィーチャーフォン)の待受画面。待受画面ではあるものの、Flashによるアニメーションし、ふたつの動きがシンクロする。Flashにより端末の時刻を取得し両方の秒を取得することで動きが完全に連動する。
Original Character Maker!!
文化庁メディア芸術祭に出品した作品。さまざまなマンガのキャラクターの顔のパーツが、画面上に散らばっている。ユーザーは、目、鼻、口、髪型、輪郭などのバラバラのパーツを自在に組み合わせて、新しいオリジナルのキャラクターをつくることができる。もののアイデンティティはどこに宿るのだろうか。オリジナリティについて問う作品。

そして、思い返せば「のらもじ」を打ち込めるタイプテスターもFlashでの実装でした。これは、のらもじ発見プロジェクトチームのbouze氏が実装を担当してくれています。bouze氏は当時thaに所属していて、いちいち動きや選ぶ音が最高でした。気持ちいい!

のらもじ発見プロジェクトのタイプテスター
のらもじから制作したフォントをウェブサイトからダウンロードする前に、サイト内で試し打ちができる仕組み。

好きだったFlashのページ

その頃、Flashでの制作物の中でとても好きだったのが、美術家のRafaël Rozendaalさんのサイト。トイレットペーパーの紙をひたすら引っ張るウェブページや、赤いゼリーをひたすらぷるぷるさせるウェブページが、バカバカしくもかっこよかったです。

自分にとって大事なメディアは…

自分にとって、Flashのサポートが終了するということは、ひとつの大事なメディアが消滅するような、それなりに大きく切ないできごとなのかもしれません。その一方で、メディアが移り変わることそれ自体は、川が流れるように当たり前で、いつの間にか自分の目の前の水分子はすっかり置き換えられてるようなひっそりとしたものなのだと思います。(まして、そのメディアの全盛期を知らない人々にとっては、全く興味の湧かない話題だとも思います)そしていまや、日本国民のほとんどが視聴していたテレビ放送が、インターネットの動画メディアにとって変わられようとしています。

Flashがもう時代に合わなくなってきたことが決定的になったのは、スマートフォンが一般化した時期です。iPhoneが時代を席巻したとき、そのブラウザではFlashは再生できない設定だったのです。

その頃から自分の制作の方向を少しずつメディアに左右されない、「活動」という形式に移そうと意識し始めたきっかけにもなりました。のらもじ発見プロジェクトを始めたのものそんな時期でした。

もう、2020年が終わろうとしています。2021年は、より新鮮なメディアで制作物を発表をしていかないといけないなと痛いほど感じます。SNSはかつてないほど整備され、プログラムで何かを表現することは当たり前になり、誰でもなんでもできる時代に、自分は何をすればいいのか…絶賛悩み中、五里霧中の今です。

そんな中ですが、とりあえず…ここまでの人生の中で、制作者としての自分のもっとも重要だった15年ほどを助けてくれたFlashに感謝です。

ありがとう、Flash。


最後に、中村勇吾さんの時間を扱った作品の中で一番好きなものをご紹介して終わります。よいお年を!




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