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The SpaceX Effect - SpaceX卒業生が立ち上げた企業

East Venturesの佐藤です。(@1123_sl)

今回はStarfish SpaceのMichael Madridさんと、ReplitのJeff Burkeさんが執筆したSpaceX卒業生についての記事「The SpaceX Effect」のPart 1をお届けします。

ピーター ティールやイーロン マスクをはじめ、Paypalの創業メンバーは「Paypalマフィア」と言われており、そこからTeslaやYoutube、LinkedInなど多くの有名企業が誕生しました。

Paypalマフィア

時代は変わり、SpaceXの卒業生から宇宙スタートアップを始め、多くの企業が生み出されるハブになりつつあります。

なぜ現在SpaceXから、今をときめく企業が続々と生まれてきているのでしょうか?

今回の記事ではイーロン マスクやSpaceXのこれまでの功績、そしてSpaceX卒業生が立ち上げた企業を紹介しています。

原文はこちら。

著者はStarfish SpaceのMichael Madridさんと、ReplitのJeff Burkeさんです。

以下本文になります。

※この記事は、著者の許可を得て掲載しています。


読者の皆様へお知らせ:これは私にとって初めての共著作品です。Michael Madridと私は、1年半前にVarda Spaceの記事を書いた後に仲良くなりました。それをきっかけに、私たちは一緒に記事を書きたいと思うようになりました。今回の記事について知っていただきたいことがいくつかあります

今回はPart 1で、Part 2ではSpaceXの文化について深く掘り下げました。(Sutter Hill Venturesの記事と似ています)Part 2はここから読むことができます。

この記事は何ヶ月もかけて書き上げました。書く途中でたくさんのSpaceX社員から話を聞いたため、記事の内容にはとても手応えがあります!ぜひお楽しみください!


イーロン マスクのスケールの大きさ

イーロン マスクは、地球上で最も魅力的な人物の一人です。世界で最も裕福であり、ミームの達人として毎日何百人もの人を虜にしています。SpaceXとTeslaはよく知られていますが、マスクがアメリカのテック産業に与えた影響は、それだけにとどまりません。製造業のオフショア化や公共機関の大幅な遅延、大規模建築の終わりが叫ばれる中、マスクは巨大なハードウェア企業を2社も立ち上げました。そして、その過程で多くの起業家を育て、発破をかけてきました。

政治や税制、マスクのプライベートについてはひとまず置いといてください。30年前にアメリカに移住してから、Zip2(売却済み)やPayPal(X.comと合併)、SpaceX、Tesla、OpenAI、Neuralink、The Boring Companyの主に7つの会社に創業メンバーとして関わりました。

表1:イーロン マスクの会社が作り出した企業価値の合計

マスクが立ち上げた会社は、1兆ドル以上の企業価値、800億ドル以上の年間収益、そして135,000人以上の雇用を生み出しています。

この数字だけでも驚くべきことですが、実はこの表以上の価値を生み出したのです。

  • Paypalー>FinTechの加速と伝統的な決済方法の破壊

  • SpaceXー>商業用ロケット市場の創造

  • Teslaー>電気自動車をクールで好ましい選択肢に

  • OpenAIー>GPT-3のようなモデルでAIの限界に挑戦

(Teslaの話をするには別に記事を書く必要があるので)今回は、主にSpaceXに焦点を当てていきます。SpaceXは根本的に不可能と考えられていた領域(理解できますか?)でイノベーションを起こしました。宇宙産業は劇的に衰退していましたし、月面着陸の感動は数十年前も前の話とされていました。そして、宇宙産業の規制のレベルは昔からとても高いままです。たとえ宇宙産業が再燃したとしても、(これも理解できますか?)イーロン・マスク(あるいは他のほとんどの人々)がこれまでに行ってきたゲームとは全く異なるものになるはずでした。

表2:ロケットの年間打ち上げ数

それでいて、1年あたりのロケット打ち上げ数を見ると、SpaceXはここ数年で打ち上げ数を大幅に増やしてきていることが分かります。SpaceXが活躍し始める前の2005年から2017年までは、宇宙業界はほとんど停滞していました。しかしそれ以降、宇宙ベンチャーの数や投資額は大幅に増えました。

もちろん、マスクは一人の人間に過ぎません。ここに至るまで、多くの人が彼のチームに加わりました。それが、ほとんど語られることのないインパクトなのです。

表3:製造業の生産高と雇用の推移

アメリカの製造業の従事者数は減っているものの、技術の進歩により生産高は増えています。全体的に見ると、文化の中で製造業は軽視されがちですが、技術革新は大幅に進み、雇用はオフショア化されていきました。

しかし最近の地政学的な問題を考えると、アメリカで巨大で誰もがビックリするようなものを作らなければなりません。過去15年間で、マスクは数千人もの人を育て、大規模な製品を凄まじいスピードで開発してきました。結果として、SpaceXだけでなく、そこで働いていた従業員たちも続々と起業していきました。その波及効果は本物で、私たちは「SpaceX effect」と呼んでいます。

The SpaceX Effect|SpaceX卒業生が立ち上げた会社

表4:SpaceX元社員が立ち上げたスタートアップ(Tesla/SpaceX Alumni Mapより引用)

結局のところ、絶え間ないロケットの打ち上げや、ロケットの再着陸、民間宇宙飛行により、SpaceXの成長は明らかなものとなってきています。世界中の人々が、イーロン マスクのツイートを日々追っています。しかし、SpaceXの元社員が新しい会社を立ち上げている姿に、多くの人はまだ気づいていません。数年のうちに、そこから実際に重要な製品を作っている数十の会社が設立されるでしょう。

SpaceX出身の創業者たちは、広告のクリック数や絵文字を最適化しているわけではありません!彼らは、世界を根本的に変えるビジョンを持つ会社を作っているのです。

表5:SpaceX元社員が立ち上げた12のスタートアップ

今回の記事で60社もの企業を紹介することはできませんが、いくつかの事例を紹介することはできます!表5では、私たちが魅力的だと思う企業を12社をリストアップしました。

ほとんどの会社は:
・比較的アーリーステージ
・多額の資金を調達している(合計で5億ドル以上)
・原子炉や貨物列車、極超音速再利用エンジンなど、大規模な問題を解決するソリューションを開発

この規模の会社が製品を作るには数年(下手したら数十年)かかります。今のところほとんどの人は気づいていないかもしれませんが、SpaceXはアメリカの大型ハードウェア開発のやり方を大きく変えており、この影響は今後何年にもわたって現れるでしょう。

SpaceX卒業生の会社

Ursa Major

元SpaceXエンジニアのJoe Laurientiが立ち上げたUrsa Majorは、ロケット推進システムのマーケットリーダーになりつつあります。長年、宇宙開発の企業は自社でロケットエンジンを設計するか、ロシア製のRDエンジンを購入するかという厳しい決断に迫られていました。前者は非常に高価で開発に時間がかかるため、非効率です。後者は旧式のロケットエンジンで、地政学的に難しい側面もあります。Ursa Majorが開発しているHadleyやRipley、Arrowayは市場をリードしているユビキタスなエンジンです。よりUrsa Majorについて知りたい場合は、私の昔の記事をご覧ください。

Reliable Robotics

Reliable Roboticsは自立飛行する民間航空機を作ることで、誰もが航空輸送にアクセスできる未来の航空会社を目指しています。Reliable Roboticsの創業者は、SpaceX出身のRobert RoseJuerg Frefelです。

First Resonance

大規模な製造業の需要が急激に増えることは、大変面白いですが複雑です!このまま需要が増えていけば、企業はより自社の運用システムについての理解を深める必要があります。First Resonanceは製造業向けの運用システムを開発しています。データ収集をなくし、製造のプロセスを理解することで、効率的に運用することを目指しています。創業者兼、CEOはSpaceX出身のKaran Talatiです。

Varda Space

SpaceXを筆頭に、多くの企業が宇宙空間で使う製品を地上で作っています。しかし、地上で使えるものを宇宙で作ったらどうでしょうか?これが、Varda Spaceが取り組んでいる微小重力下でのものづくりです。医薬品や光ファイバーのような高品質な素材も、地球の重力の影響を受けずに加工すれば、より高品質なものを作ることができます。Varda Spaceはこのようなものづくりを行うための物流業者で、SpaceX出身のWill Brueyが共同創業しました。Vardaについてより知りたい場合は、以前紹介した記事をご覧ください。

Epsilon 3

Epsion3の共同創業者兼CEOのLaura Crabtreeは、SpaceXで10年間働いていました。入社した10年前には気づかなかった、宇宙スタートアップのエコシステムの拡大に気づきました。その結果、CrabtreeはEpsion3を立ち上げ、宇宙機の試験や運用の手順を紙の文書やスプレッドシート、Wiki、紙のチェックリストから最新のソフトウェアプラットフォームをベースとしたデジタルの代替手段に移行することで、企業のリスクを低減し、作業効率を上げることを目指しています。

Relativity

Relativityは初の自律型ロケット開発工場を建設しています。「60年間で培われた航空宇宙の技術」を破壊することで、より信頼性が高く(部品点数が1/100)、より早いスピードで(生産時間が1/10)、より柔軟で(固定工具がない)、より最適化することで(反復品質の複合化)勝てると、Relativityは予測しています。13億ドルの資金調達を行なったRelativityは、同業者の中で最も資金力を持つ企業です。2014〜2015年にSpaceXで勤務していたJordan Nooneが共同創業しました。

Xona Space Systems

GPSは、支払い処理や自動車の運転、時刻同期など、私たちのインフラにとって重要な部分です。しかし、痛ましい真実は、GPSが脆弱であることです。将来的によりGPSを有効活用するには、より多くかつ、より優れた位置決めナビゲーションやタイミング調整のサポート(PNT)が必要です。この状況に対応するべく、Xona Space Systemsは、旧来のシステムと比較して、より安全で頑丈で正確な代替手段を提供する、精密なLEO PNTコンステレーションPulsarを開発しています。Pulsarは、共同創業者兼CEOのBrian Manningがリードしており、応用例は多岐にわたります。

Radiant Nuclear

原子力は最も拡張性のあるグリーンなエネルギー源ですが、あらゆる状況に使えるわけではありません。原子炉開発は巨大なプロジェクトであり、しばしば州や自治体レベルの議論になります。Radiantはマイクロリアクター(可搬型の小型原子炉)の開発を通して、この現状を変えようとしています。ディーゼル発電機の代わりに、持続可能で拡張性があり、柔軟性のあるKaleidosを使うことで、化石燃料に変わるグリーンエネルギーの選択肢を提供します。創業者のDoug Bernauerは元SpaceXエンジニアです。

Phantom Space Corporation

SpaceXやVarda Spaceなど、多くの宇宙ベンチャーが宇宙の経済的な可能性を証明しています。しかし、宇宙へ行くのはとても高価です!SpaceXは打ち上げコストを下げることに成功しましたが、これはほんの始まりに過ぎません。Phantom SpaceはSpaceXの代わりになるべく、ロケットの大量生産により衛星の製造コストと、打ち上げコストを大幅に下げようとしています。これにより宇宙産業への参入障壁が下げ、より多くのビジネスや市場機会を生み出すことができます。創業者のJim Cantrellは2001年当時、SpaceXの事業開発部門の初代Vice Presidentでした。

Impulse Space

ロケットを製造し、ペイロードを開発し、宇宙へ打ち上げることは非常に複雑で大変なことに思われるかもしれませんが、まだ仕事は終わっっていません!宇宙に到着した後、宇宙船はどうするのでしょうか?Impulse Spaceはラストワンマイルデリバリーに重点を置いた、軌道移動のための宇宙機を製造しています。Doordashの運転手を想像してみてください。Door Dashが宇宙では・・・という冗談はさておき、衛星の軌道を移動させる宇宙機は宇宙産業でとても需要があります。創業者のTom Muellerはこの需要に気付き、17年間働いたSpaceXを退職しました!

AstroForge

小惑星は多様なレアメタルで構成されており、多くのレアメタル(金やコバルト、鉄など)が地上でも活用されていますが、多くの人が地球上で資源が枯渇することを心配しています。Astro Forgeは、小惑星採掘のための費用対効果と拡張性の高いソリューションを開発することで、資源へのアクセス方法を広げ、地上での採掘と、採掘がもたらす下流への影響を減らそうとしています。創業者でCTOのJose Acainは、長年SpaceXで航空統合エンジニアとして勤務していました。

Parallel Systems

貨物列車は、アメリカの物流に欠かせない存在です。しかし、列車は化石燃料で走っています。Parallel Systemsは、よりクリーンで自動化された鉄道の未来を創ることで、貨物の脱炭素化に取り組んでいます。長期的に、鉄道の二酸化炭素排出量を減らすだけでなく、700億ドル規模のトラック運送業界の多くを脱炭素貨物輸送に転換することを可能にします!創業者のMatt SouleはParallel Systemsの創業以前、SpaceXで13年間働いていました。

結論

表5に掲載されている12社は、まだスタートラインにたったに過ぎません。SpaceX出身者が立ち上げた企業は既にたくさんありますし、これからも出てくると思います。2週間後に出すPart2ではSpaceXの社員がどのように、なぜそうなったのかを完全に解明する予定です。SpaceXはどのようにしてパフォーマンスの高い文化を築き、維持しているのでしょうか?なぜこれほど多くの起業家精神を持った卒業生が生まれるのでしょうか?まだまだ続きます!


以上でPart 1は終了です。

Part 2では、多くの企業を輩出するSpaceXの文化や経営哲学、開発手法などについて詳しく説明されています。

Part 2の翻訳記事も近々出しますので、ぜひご覧ください。


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