世界観を作るアイディア
はじめに
5月に RKPD の撮影会があった
舞台は学校
シチュエーションは人質立てこもり
白昼堂々の事件に、琉球警察の刑事と SRT/ESU が人質の救出と事態の収束に向けて犯人に挑む様子を作り上げる
ドローンの初投入や本格的な動画撮影など、さまざまな挑戦のあった撮影会となったが、ここではその撮影会にあたって私がプロデュースしたアイディアについて語っていく
記事後半にも登場するが、撮影した内容を編集した動画が RKPD カメラマンのきっちょむ(@lan5sta)さんのアカウントから上がっているので記事を読み進める前に見ると分かりやすいと思う
その他にも #RKPD で Twitter に上がっている写真も参考に見ていってもらえれば幸いだ
本部
学校での人質立てこもり事件として、事件現場の他に警察側の対策本部を作る必要があった
武器や防具を着用して現場に出向き、直接犯人と対峙する SRT/ESU とは別に、情報収集と整理、犯人との交渉を行う刑事組の活躍を描く場を設けるためだ
もちろん、SRT/ESU の作戦立案のシーンにも活かすことができる
構想
本部は、同じ学校内の教室に設置することにした
単純な撮影スタジオ的都合だけでなく、現場と本部がすぐ近くにあることを演出する目的もある
これは調度品が同じになることで表現できる
もちろん、事案の内容によっては署内に本部が設置されるとして、事件現場と異なる場所にすることだって考えられるわけだ
(最も、一度のシチュエーションのロケ地複数はなかなか難しい事だと思うが)
実は今回の撮影場所となったスタジオは一昨年にも使用しており、当時の写真や参加したメンバーの経験がある状態だった
それらを踏まえ、また現場となる教室との兼ね合いも含めながら場所を決定した
場所が決まってからはレイアウトを検討した
本部のイメージや撮りたいもの、撮れるものを考えながら教室に収まるように起こしていく
元々、撮影にあたっての大まかなストーリーラインがあり、なおかつその中での撮りたいシーンというのも事前に出ていたので、それを組み込む形にしていった
あとは自分自身の撮りたい、撮られたい構図の要素も加えていく
そして実際の本部の写真がこちら
本部の様子はかなりイメージ通りに作ることができたと思い、個人的にはとても満足している
当初少し手狭かと思ったが、人数的にちょうどよく収まりのいい本部になったと思う
ケータリングスペース
本部の中で特筆したいのが、ケータリングスペースである
交渉までを含めた人質立てこもり事件は、かなりの長丁場になるだろうと考えていた
そしてそれを演出したいと思い、ケータリングを設置することを思いついたのだ
実際に演出として反映するのはなかなか難しかったが、例えばボトルの数が減っていったり、スナックのゴミが映りこんでいったりとして時間の流れを表現できるのではと考えた
もちろん、撮影の合間の水分補給や間食に用いることができるというのもポイントのひとつである
時間の流れの演出は、人質と犯人への差し入れシーンが一番うまく表現できていたと思う
元々私はそのシーンは撮らずに、最後のカットで本部にあった飲食物が人質たちの所に移動している。ということで演出しようと考えていたのだが
実際に刑事の一人が食べ物や飲み物を運び入れる様子を撮ることで、事件のスケールや物語の運びをしっかり明示することに繋がった
飲み物、食べ物
ケータリングに用意する飲み物、食べ物とだけ考えれば簡単に思えるが、小道具として劇中にも登場させるとなると途端に難しくなる
琉警の舞台背景に沿ったものにしないといけないのだ
琉警の舞台は『本土返還が2000年代になった沖縄』なので、アメリカ文化が強く残った沖縄である
要するに、迂闊に日本製品を出せないのだ
私自身もそうだし、皆も同じ認識のもと世界観を作っているので小道具の面からそれを壊すわけにはいかない
そのためクリスタルガイザーは英語ラベルで、しかもビニールでパッキングされたものを用意してもらった
スナックには輸入菓子を、それも復帰前から輸入業を営んでいる県内企業が卸している物を用意した
菓子については私が用意したため『県内では簡単に入手出来て、でも本土では見慣れない物』をルールにした
簡単に言えば「カルディとかに売っていない物」でしかし「スーパーで買える物」である
なので輸入業者がどこの所在なのかは大事だった
もしこれが県外の企業であれば、本土でも普通に流通しているかもしれないからだ
ちなみに、菓子は二種類用意したが、特に片方は県民に馴染み深い菓子だったのでメンバーからは懐かしむ声も上がった
もともとは赤と青の包み紙にする予定だったのだが、青の方が調達できず馴染みのある方になったという経緯があるが、結果的に評判良く収まった
ホワイトボード
ホワイトボードには当然のことながら様々な情報が掲示されるだろうと考えた
建物の間取りや犯人の写真、人質の情報、SRT/ESU の作戦 etc…
その中で私は人質について得られる情報部分を構想した
舞台が学校で、人質は学校関係者
それも生徒が人質になると私は聞いていたので、得られる情報には願書が含まれるだろうと考えた
もちろん友人や保護者の証言など他にも色々あるだろうが、学校だからこそ入手できるものはこれだと思ったのだ
そこで架空の願書を作成し、当日人質役に実際に記入してもらうことにした
いくつかの実在する学校の願書を参考に、また琉警の世界観のエッセンスを取り入れながら願書の各項目を検討した
特に項目名が英名併記な部分や自署であるところなどは国際色を表現できているのではと思う
また、当日その場のアドリブで願書を埋めてくれというのは酷なので
各項目の内容は ChatGPT を用いて事前に候補を用意した
特に名前については、私の同級生にミドルネームを子がいたので、その要素を取り入れることにした
現実の沖縄ではちょっと珍しいくらいの名前だが、琉警の世界ではもっと一般的だろうと踏んだのだ
用意した候補の中から実際にどれを組み合わせて書き込むかは人質役の自由だったので、いくつかある中からミドルネームのある名前を選んでくれたのは幸いだった
ゲスト参加と言え、琉警の世界観を理解してくれていたのだと思う
また、非常に細かい話であるが
出願後の願書はファイリングされ卒業後もしばらくは保管されるため、パンチ穴には補強シールが貼られる
実はこれも再現してあり、ここら辺は私の過去の経験が元になっている
学校で得られる情報 = 入学願書 も経験からだろう
さらにもう一つ細かい話で言うと
ホワイトボードに描かれた人質の名前には読み仮名が振られているが
これはローマ字表記である
琉球警察の人員は純日本人だけでないという想定だからだ
机上
今回私は交渉人として直接犯人と会話する役回りだったため、それにあたった机も考えた
ベースは今回の撮影のインプットとして参考に視聴していた SWAT のドキュメンタリー番組で取り上げられていた交渉シーンである
映像の交渉人の机上はかなり簡素で、電話機とメモ用のパッドくらいだった
今回は逆にそれを最低限として準備し、ノートパソコンなどはメンバーが肉付けしてくれた
肉付けの中にはヘッドセットもあり、それは実際に交渉でも用いられていたが、写真として見た時に受話器を耳に当てている方がやはり分かりやすいというのが個人的に得られた結果だった
ちなみにメモパッドはいくつか候補があったが、見た目を重視して一番コスパの悪いものがチョイスされた
三組セットでしか販売されておらずそれ故に価格もそれ相応
しかしあの黄色の用紙は写真としてとても映えたので、選択として間違っていなかったと思う
また使っているペンについても先のスナック菓子と同じで、ここでマッキーなんかを使っていたら興醒めだろうと悩んだ
なにか適任はないかと思案したところ、サバゲ装備に刺さっている Sharpie を抜擢した
初めて装備を実際の用途に供したが、なかなか書き心地が良く優れたものだと実感した
シーン
ここからは小道具ではなく撮影シーンについてを書いていく
もちろん私ひとりだけのアイディアではなく、メンバーと肉付けしてできたものである
刑事が SRT/ESU 、すなわち武装した特殊部隊より前に立つのはドラマ NCIS からアイディアを得た
これは私が琉警に参画するきっかけになった撮影会の際にインプットとした作品である
今回の撮影と同じく学校で人質立てこもりを起こした犯人に、スーパースペシャルエージェントのディノッゾとその部下のギブスが説得を試みる回
が元ネタだ※
また、途中で人質たちに差し入れをするのもこの回に着想を得ている
(作中では喘息持ちの人質に吸引器を届ける。というものだった)
ここで交渉用の電話を置きに行くというアレンジはハナシロさんのアイディア
このためにケース付き電話機の用意までしてくれた
またその受話器の調達にはメンバーも協力してくれた
とても感謝している
装備については、交渉人として双方の銃より前に立つため、ソフトアーマーに加えヘルメットを被っている
アーマーくらいは刑事といえど着用する機会がいささかあれど、ヘルメットはそうそう無いだろうから、スタイリングのアンバランスさが際立っていた
これはかなりうまくハマったと自分でも思っている
ちなみに映像や写真では表現できていないが、この時私はホルスターごと銃を携帯していない
丸腰で武装した犯人と対峙するというのを演出したかったからだ
これは余談だが、このシーンを撮った際、とても緊張したのを覚えている
そのため顔に表情が無いのが写真からも分かると思う
そしてその緊張がとても楽しかった
動画を回していた。というのも去ることながら、
銃で武装した犯人を前に、丸腰で勇み出るというシチュエーションそのものに緊張していたのを覚えている
撮影の間は、どんなショットでも使えるようにとできるだけ美人顔になることを意識しているというのは以前に Twitter かどこかで話したが、この時だけはそれを意識できていなかったのを自覚している
一番はカメラを回す合図で全員が静かになる。というのがそうだが、
いざカメラが回った後の空気感が一気に私を緊張で包み込み、本当に自分がその現場に居るような感覚にさせたのだ
隊列の脇から一歩踏み出す前に SRT 隊員と目線を交わす仕草や、
盾の向こうに立ちはだかる犯人、
その犯人から緩く向けられた銃口に毅然と向き合う様、
さらに前に進んで相手の領域に踏み込んで電話を置き、
後ずさりしながら立ち去るまでの片時も犯人から目をそらさない。
それらの一挙手一投足全てが息を呑む感覚がして、非常に緊張した
そしてその緊張がとても心地よかった
これは私が舞台を経験しているからの感覚だと思うが、あの緊張に包まれた中で演技するのはとても楽しかった
病みつきになりそうだ
ちなみに先に動画を撮影して写真を撮ったので、動画の方の私がより緊張の表情を見ることができる
動画自体も素晴らしいので、ぜひ見て欲しい
おわりに
余談が長くなってしまったが、今回の撮影における私のアイディアはこれがほとんどだ
最初にも述べた通り、今回はチャレンジの多い撮影であったため実現できなかったアイディアもあったが、それでも楽しくて満足しているし、今回できなかったものは次回への楽しみだと考えている
自分が考えたものが形になる。というだけでなく、
考えが世界を作る、広げる、深くする。というのが創作活動の醍醐味のひとつだと思う
そのための努力はなかなか難しく簡単にできるものではないが、それで得られるものは非常に大きい
そしてそれに楽しみを見出すことができれば創作の幅はどこまでも広がると思う
少し香ばしい事を述べたが、これで今回の note としたい
※ ここを読んで おや と思った方はぜひエピソードをチェックしてほしい
2024年6月現在、リンク先の Hulu で視聴することができる