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取材後記 MADKID

初めて観たMADKIDのライブは、今とはだいぶん印象が違っていた。数年前、新宿Renyで行われた公演は、メンバー各々が長いこと向き合ってきたボーカル、ラップ、ダンスの質が高いのは間違いない一方で、とにかく必死で、泥臭さを感じるものでもあった。彼らが会社を立ち上げてからまだ日が浅かったこともその理由かもしれないし、当時は特に高難易度のダンス曲を発表していたタイミングだったからそう見えたのかもしれない。もちろん、その真剣さが魅力でもあった。彼らが世に見つかり切っていないもどかしさを感じたのをよく覚えている。

それから、彼らのライブは観るたびにみるみると変化していった。
どこか閉鎖的に、自分たちの楽曲の良さを懸命に届けようとしていた姿はいつからか些か柔らかくなり、観客とのコミュニケーションや会場のボルテージを意識したアプローチも増えていった。それはアニサマという大きな舞台を経たからかもしれないが、彼らがより大きなステージを見据えた変化でもあったように思う。

先日の周年ライブでも感じたことなのだが、今の5人は無理することなく、ひとりひとりの個性を自然に保ちながらMADKIDという母体に身を置いているように思う。ソロインタビューの際、LINは他のメンバーや環境に対し、己の反省とともに感謝を伝えて自身の変化を感じたと言い、SHINは自分らしくいられていることに対してメンバーに感謝を伝えていた。ライブにかんしても、これまでは5人でMADKIDである、という点を強調していたように感じたが、10周年記念ライブの演出やセットリストでは、5人それぞれの作品や得意分野にアプローチをした上で、5人が集まってMADKIDを形成しているということを見せているように感じた。一人ひとりが欠かせない柱になり母体を作り上げているという印象である。

更に今回の取材にて、ボーカルを自然に馴染ませるアプローチを取ったという話題があったが、そういったアプローチを取ることができるのは、個性を存分に尖らせなくとも自然とそれが表出するグループのバランス、精神状態になっているからなのだろう。5人が5人らしさを保ったまま、自然に表出してくる各々の個性を以てグループの均衡が保たれている。自然とそうなっているのが現在のMADKIDであると感じている。


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村上麗奈
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