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ESにお祈りメールが届いたら、読むnote


あなた様のこれからのご活躍を、心よりお祈り申し上げます。




あ、これがあれね、伝説のお祈りメールね。

「別に落ちたって次いけば良いしな、うんうん」

そう、思えばいいとわかってはいるのだけれど。無理である。わかっていてできるほど、僕たちのメンタルは鋼じゃない。お前とはご縁がありませんでしたと言われ、はいはいそうですかとは、思えない。


僕も、就活生時代は数多くのお祈りメールをいただいた。二次面接、あんなに盛り上がったじゃないか。僕の書いた企画書、おもしろかったじゃないか。けれども、お祈りメールはやってきた。


そんな就職活動の最初の関門、ES。


ES書くの、面倒くさいよな。一回につき400文字だか600文字の文章を書かされるのだ。それを5社も10社も求められる。大学あるのに。バイトあるのに。サークルあるのに。


そのくせ、「あなたは落ちました。ただ、ESが悪かったのか、学歴が足りなかったのか、webテストの点数が足りなかったのか、それは教えられません」と、言いやがるのである。

ふっざけんなよ……と、言いたくもなる。


だから、僕は「ESの書き方」を言語化することにした。「落ちる要素」から、「ESが魅力的じゃなかったから」を無くすために。



先述のとおり、僕も就活でたくさんのお祈りメールをいただいた。

ただ、ことESに限って言えば、ただの一度も落ちたことがない



さて、どこのウマの骨ともわからない僕の「ESの書き方」なんていうものを読むのは少し気が引けると思うので、少しばかり自己紹介を挟みたい。

僕は大学時代に採用管理、少し乱暴な抽象化をすると「企業はどのように人材を集めるべきか」を学んできた。

また、アルバイトながら塾の講師として国語を教えていたり(本当に先生みたいに”授業”をしていた)、中学~高校でおよそ20万文字はくだらないくらいだけの小説 / 脚本を書いていたりした。


だからさ。そりゃ書けるんだよ、ES。文章がそこそこ書けて、採用についての知識があったら、書ける。

人様のESの添削もやっていたのだけれど、少なくないの人数の添削をしたのだけれど、確実に通りやすくなったと断言できる。


でも、だからといって、じゃあ今から

・文章力を付けるために10万文字書いてみよう
・文章を構造的に理解するために現代文の評論を40題解こう
・企業の気持ちを知るために採用管理の本を3冊読もう

って言われたらどう?
キレるでしょ? 無理に決まってんだろと。そんな時間無いに決まってるだろと。


だから、ちょっと、読んでいかないかい?

僕が大学4年間、いや中3から積み上げた8年分くらいの、「ESの書き方」をさ。


目次は、こんな感じ。




ルールは、たった5つ。

【魅力的なESのための、5つのシンプルなルール】

(1) 論理構成はカンタンに書く
(2) 音で聞いて、1回でわかるように書く
(3) 「自分じゃなきゃいけない」ように書く
(4) ”文章の厚み”=”言いたいことの厚み”で書く
(5) 一般論は最低限で書く


ESってのは、「読まなきゃいけない」文章

選考を担当する会社員にとって(僕はそうではないのだけれど)、ESは「読みたい文章」ではない。あくまで「読まなければいけない文章」だ。

1題あたり200~400文字。仮に人事部が10人の会社があったとして、そこに学生が1,000人、たった1,000人応募してきたら、1人あたり2万~4万文字の文章を「読まなければ」いけない。



だから、「ん? これどういうことだ?」ってなったら、終わりである。

1つの文章をつぶさに読んで、その人の”人となり”を理解して、文と文の繋がりを意識して、みたいな。高校の現代文の授業でやったようなことは、してくれない。してくれるわけがない。



ESには、圧倒的な”わかりやすさ”が求められる。だって、興味がないからだ。

逆に、興味ある? 誰かの書いた「僕の長所」とか、「僕が学生時代にがんばったこと」とか。

それこそ、この文章を書いている僕の「最近あった悲しい出来事」興味あります……か?

無い、でしょ。あるわけ無い、でしょ?



と、いうことで。まずはここからいこう。

【魅力的なESのための、5つのシンプルなルール】

(1) 論理構成はカンタンに書く
(2) 音で聞いて、1回でわかるように書く
(3) 「自分じゃなきゃいけない」ように書く
(4) ”文章の厚み”=”言いたいことの厚み”で書く
(5) 一般論は最低限で書く

ESにおける論理構成は、圧倒的にシンプルじゃなきゃいけない。

興味がない文章を「読ませる」のだから、流し読みしても意味がわかるくらいに、すっごくわかりやすい文章を書かなければいけない。

まず、悪い例から。ぜひ、「1回だけ」読んで欲しい。


【学生時代に力を入れたこと】

私は、飲食店でのアルバイトで、多くのスタッフが日々の業務で感じていた課題の解決を通じて、自分自身の能力を高めつつ、それによって店舗全体の運営効率を向上させました。具体的には、シフトの引き継ぎミスや連絡不足によって業務が混乱し、それによってスタッフ間の信頼関係悪化やコミュニケーションコストが増えるという状態にありました。
そこで私はシフト表を変更し、さらに「引き継ぎノート」という形で情報共有の場を設けました。また、追加で月1回のミーティングを設け、スタッフ全員が参加できる意見交換の場を設定しました。これによってスタッフ同士の連携が円滑になり、業務効率が向上しました。この経験から、周囲を巻き込みながら課題を解決する力を身につけられました。

chat GPTくんと一緒に筆者作成

結構、読むの苦痛じゃない? ムリじゃない? これを1冊の小説分読んでって言われたら、退職するくない?

だから、直してみる。

【修正後|学生時代に力を入れたこと】

飲食店でのアルバイトで、スタッフのコミュニケーションミスを減らし、業務効率の向上に尽力しました。私の店舗では、スタッフのシフトの引き継ぎミスや連絡不足が多く、業務の混乱が起こるという課題がありました。私はシフト変更の際に「そもそも引き継ぎの仕方が決まっていない」ことが原因であると考え、シフト表を変更し、さらに「引き継ぎノート」という形で情報共有の場を設けました。
これによってコミュニケーションミスが減り、結果的に業務効率が向上しました。この経験から、周囲を巻き込みながら課題を解決する力を身につけられました。

どう?

この文自体がめちゃくちゃ魅力的だ、というわけでは無いかもしれないけれど、少なくとも「何ゆってるかわかんなぁい」という状態は抜け出せた気がする。


で、これ、何が違うのか。

ずばり、論理構成をシンプルにしたのだ。

元の文章の論理構成は、

【元の文章の論理構成】

<力をいれたこと(結論)>
飲食のアルバイト
 └ その中で、課題の解決 → 自分の能力の向上 → 店舗の運営効率上昇

<課題>
スタッフのコミュニケーションミス(引き継ぎ・連絡漏れ)
 → 業務の混乱
 → スタッフ間の信頼関係悪化やコミュニケーションコストが増える

<対策>
・シフト表を変更
・「引き継ぎノート」
・月1回のミーティング

と、まあこんな感じになっている。


そもそも論を言えば、いわゆるガクチカは

結論」+「課題 → 原因 → 対策 → 結果

の流れで書く(ことが多いだけで、別にこれだけが正解ではないけれど、概ねこのように書く)。


元の文の場合、
「結論は、AをしてBをしたらCになったことです」
「課題は、Dがあって、DによってEが起きて、EによってFが起きました」
「対策は、GとHとQです」
と、言いやがるのである。

読みやすいわけが、ないだろう。


で、じゃあ、シンプルにしてやればいい。
結論」+「課題 → 原因 → 対策 → 結果」の順で、ほぼ1対1で対応するように整理すればいいのである。


まず結論は「力を入れたこと」だ。すなわち、
「どこで、何をして、どうなったのか」である。

<結論>
どこで = 飲食店でのアルバイト
何をして = スタッフのコミュニケーションミスを減らし
どうなったのか = 業務効率の向上に尽力した

課題を解決しましたとか、自身の能力を上げましたとか、心底どうでもいいのである。自分が一番言いたいことを、「アルバイトの業務効率上げるために頑張ったよ」を、それさえ言えば、一旦後は全部捨てていいのである。


もちろん、一番言いたいことが「自身の能力を上げたぜ!」ならそれを結論に持ってくるべきだし、「皆の居心地の良い環境を作ったよ!」ならそう書くべきだ。すなわち、「このESでは〇〇が言いたいです」の〇〇を書き、逆に、〇〇じゃない要素はできる限り排除、しなければならない。


この調子で、課題→原因→ 対策 → 結果といこう。

<課題>
スタッフのシフトの引き継ぎミス、連絡不足が多い
 →業務の混乱が起こる

課題はできれば1つに搾りたい。売り上げが足りないだとか、生徒の成績が上がらないだとか、そんな感じに。

今回の場合は、「AによってBが起こっている」という2重の課題になっている。許されるのは、ギリギリここまでだ。

少なくとも、「AによってBが起きて、それがCに繋がって~~」みたいなのは、やめよう。読めないから。理解できないから。



つづいて、原因。

<原因>(言及がないため勝手に追加)
シフト変更の際に「そもそも引き継ぎの仕方が決まっていない」こと

ちょっとズルいんだけど、元の文に無かったから勝手に追加。

逆接的には、もしあなたのESに「課題の原因」が無いのであれば、見つけられていないのかもしれない。

ガクチカで知りたいことというのは、「課題」っていう解決したい所与のもの(前提条件)に対して、何が「原因」だとあなたが思って、どう「対策」して「結果」どうなったのか、だ。

すなわち、

「課題のどこにアプローチすべきだと思ったのか」=「原因」は、けっこう大切だったりする。

そもそも、なんでガクチカを書かせるか、知ってる?

努力できるかを知りたいから?

優秀かどうかを知りたいから?

賢さを測りたいから?


違いますよ。


ガクチカは課題解決のデモンストレーションが見たいんだよ。



面接の有名な手法のひとつに、「行動面接」なるものがある。

「Situation(状況)」「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(成果)」の4つの観点から過去の行動を掘り下げる

引用元

というものなのだけれど、これが結構「イイ」とされていて、Amazonとかでも使われているものだから、日本の企業もどんどん使い始めたわけだ。それの、ESバージョンがガクチカ、である。


ガクチカを求める全ての企業の採用担当がこの「行動面接」について詳しいわけではないのだけれど、どちらにせよ大切になるのは「課題を解決しましたよ」という内容だ。

より厳密には、「僕はこの課題の原因はコレだと思い」、「だからこういう対策をしたんです」という、

・原因を特定する力
・その解決のためにふさわしい対策を選び取り実行できる力

が、知りたいのだ。


だからさ、原因を書かないと始まらないのよ。魅力的にならないし、国語的にも「論理的に筋の通った文章」にはたどり着きにくいわけ。

故に、

<原因>(言及がないため勝手に追加)
シフト変更の際に「そもそも引き継ぎの仕方が決まっていない」こと

と、させてもらった。ちなみに、「そもそも」を登場させるのは「大したことないことをソレっぽく見せる」プチテクニックだ。



と、いうことで最後。

<対策>
・シフト表を変更
・「引き継ぎノート」
・月1回のミーティング(課題である”ミス”を防ぐ要素じゃないので削除)

<結果>
業務効率が向上(=課題の解決)

「対策」では「原因」の解決のために行ったこと――より厳密には、原因の解決にクリティカルに効いた要素――のみを書き、「結果」として「課題が解決したぜ!!」を示す。

これで、とりあえず「まあ読める」文章にはなった。



とはいえ、じゃあ読めりゃ良いのかと。もっと言えば、「論理的にシンプルでわかりやすければOK」なのかと言えば、残念ながらそうはいかない。

つまり、

”内容”がわかりやすくても、”文”がわかりづらかったら意味がない

と、いうことである。

2つ目、いきましょう。

【魅力的なESのための、5つのシンプルなルール】

(1) 論理構成はカンタンに書く
(2) 音で聞いて、1回でわかるように書く
(3) 「自分じゃなきゃいけない」ように書く
(4) ”文章の厚み”=”言いたいことの厚み”で書く
(5) 一般論は最低限で書く

論理構成がシンプルだったら、わかりやすいのか。そんなことはない。

極端な例ではあるのだけれど、次の文を見て欲しい。

きょうのあさいぬがあるいていました。そしたら、みちばたでおとこのこをみつけてほえてしまい、おとこのこがないてしまいました。

読みづらいよね。いや、当たり前だと思うでしょ? でもこれ、論理構成はシンプルだ。犬が歩いて、男の子に吠えて、男の子が泣く。ただ、それだけ。


つまり、「内容のわかりやすさ」と「文のわかりやすさ」は似ているけれどイコールではないのだ。

そして繰り返しになるけれど、採用担当者は2回も読んでくれないし、ちょっと前の文に戻って理解しよう、ともしてくれない。

仮に、採用担当者がESを通過させてくれて面接に進んだとしよう。面接の担当者が、ESを読んだその人じゃないことは、結構ある。で、その面接官にはもちろんESが渡されるのだけれど、いつ読むのか?



面接が始まる2分前にチラッと読む。

なんなら、面接が始まってから初めて、チラチラ見る。



そのレベルなことって、往々にしてあり得るのだ。もちろん、ちゃんと時間を取って読む人もいるだろうし、そうしなければならない企業だって多くあるだろう。



とはいえ僕たち「ESを出す側」としては、じっくり読まれないことを前提にしておく他に道は無いのである。



もう少しESに寄せて、まずは悪い例から。

【就職活動の軸】
挑戦し続ける企業であることで、理由は大学時代に挑戦する気概で大学祭の実行委員などをしてそれまでには学べなかった多くのことを学べた経験があるためだ。

筆者作成

これ、まず論理構成は、シンプルだ。軸として良いかどうかは置いておいて。

でもなんか、読みづらくないか?


直してみよう。

【修正後|就職活動の軸】
挑戦し続ける企業であることだ。なぜなら、大学時代に大学祭の実行委員に挑戦し、今まで学べなかった多くのことを学べた経験があるためだ。

簡単じゃん、そりゃそうじゃん、と思われただろうか。




では、次のような文だったら、どうだろう。

【自己PR】
(前略)

私が家庭教師として担当した中学二年生の女子生徒は学年相応の学習に追いついていなく、勉強に対して前向きではなかったため、生徒の課題をみつけ、達成体験を積ませると同時に土台固めをしていった。学年相応の内容を学習した際、解を導くために必要な算数の知識が不足していたことに気づき、算数に立ち返った。四則計算のスピード向上や算数の平面図形の問題などのようにつまずいているところをひとつひとつ解消していった。そこでできることが増えていくことを彼女自身が自覚し、それらを通して机に向かう習慣が身についていった。

(後略)

これを一回でスムーズに、なんの苦労もなく読むのは、けっこう難しい。


直すなら、こんな感じになる。

私は家庭教師として中学二年生の女子生徒を担当した。彼女は学校の学習に追いつけておらず、勉強に対して前向きではなかった。そこで私は、「学習の土台固めを行うこと」と「達成経験を積ませること」を同時に行った。例えば数学では、前提となる算数の知識が不足していると気づき、立ち返って学習を進めた。四則計算のスピード向上や図形の面積計算など、地道にひとつひとつ躓きを解消した。結果として彼女に「出来ることが増やせるのだ」と感じてもらうことができ、机に向かう習慣づけが出来た。

で、これ、具体的に何をどう直したのか、って話になるよね。きっと

全部、1個ずつ見せるから、付いてきてね。


【元の文】
私が家庭教師として担当した中学二年生の女子生徒は学年相応の学習に追いついていなく、勉強に対して前向きではなかったため、生徒の課題をみつけ、達成体験を積ませると同時に土台固めをしていった。
----------------------------------

【修正後】
「私は家庭教師として中学二年生の女子生徒を担当した。」
 ・1文で1つの内容(一文一意)にする


「彼女は学校の学習に追いつけておらず、勉強に対して前向きではなかった。」
 ・1文で1つの内容(一文一意)にする
 ・「追いついていなく」→「追いつけておらず」(書き言葉に)



「そこで私は、『学習の土台固めを行うこと』と『達成経験を積ませること』を同時に行った。」
 ・「そこで」(接続詞を追加)
 ・「 」を追加して並列の内容がわかりやすいように
 ・「生徒の課題を見つけ」を削除(時系列と並列の混在を無くす)

まず、しっかり文は区切ろう。「。」を付けることを恐れてはいけない。

【元の文】
学年相応の内容を学習した際、解を導くために必要な算数の知識が不足していたことに気づき、算数に立ち返った。
四則計算のスピード向上や算数の平面図形の問題などのようにつまずいているところをひとつひとつ解消していった。
----------------------------------

【修正後】
「例えば数学では、前提となる算数の知識が不足していると気づき、立ち返って学習を進めた。」
 ・「数学」が突然出てくるので「例えば」を追加
 ・「学年相応」や「解を導く」が言いづらく、修飾関係が複雑なので整理
 ・「算数」が重複しているため1つにまとめる



「四則計算のスピード向上や図形の面積計算など、地道にひとつひとつ躓きを解消した。」
 ・「算数の平面図形の問題」→修飾が2重なので「面積計算」で1語に
 ・「などのようにつまづいて~~」は、平仮名の連続が読みづらいので漢字のバランスを取る

次に、
・熟語(漢字)が連続しすぎていないか
・平仮名が連続しすぎていないか
・修飾関係が複雑でないか

は徹底的に注意する。


1文1文を、徹底的にシンプルにする。徹底的に。これでもかってくらい。

【元の文】
そこでできることが増えていくことを彼女自身が自覚し、それらを通して机に向かう習慣が身についていった。
----------------------------------
【修正後】
「結果として彼女に『出来ることが増やせるのだ』と感じてもらうことができ、机に向かう習慣づけが出来た。」
 ・平仮名の連続が読みづらいので漢字に
 ・「結果として」で施策の結果であることを明示

この「結果として」みたいに、「今からこの話しますよ~~!!」っていうのはすっごく大事だ。まじで。

日本語の文章は、文の最後にいくまで結論がわからない。

「明日の朝は山に行きます」が、最後が変わるだけで
「明日の朝は山を降ります」になったりする。


だから、「結果として」とか「例えば」とか「その解決策として」みたいに、今から何のパートが始まるのかを予め知らせてあげると、格段に読みやすくなる。毎文でやるのはかえって読みづらくなるからダメだけれど。



みんなと同じ、で魅力的なわけがない

つづいて、こちら。

【魅力的なESのための、5つのシンプルなルール】

(1) 論理構成はカンタンに書く
(2) 音で聞いて、1回でわかるように書く
(3) 「自分じゃなきゃいけない」ように書く
(4) ”文章の厚み”=”言いたいことの厚み”で書く
(5) 一般論は最低限で書く

ここまでで一旦、理解できる! 文章になった。

一回読めばわかる! 文章になった。


それで?

「この子は人間が読める文章を書けるな。よし、面接に呼ぼう!!!」

って、なるか? そりゃ、志望先の企業に対して自分の学歴が高ければ、そうなる。でも、もしそれでオールOKなら「良いESの書き方」とか「強いガクチカはどう書くか」とかイラナイじゃん。だってとりあえず書いたら通るのだから。


一旦読める、は前提に。じゃあ内容として、どう魅力的に見せるのか。

どうしたら、

「あ~、バイトリーダーね」

とか、

「あ~、インターン頑張ったのね」

で、済まされないようにするのか。



ずばり、アンタじゃなきゃ成り立たねぇESを書くのだ。



例えば、ガクチカの冒頭1文を考えてみよう。

【ガクチカ】
飲食店のアルバイトで、SNSでの集客に力を入れました。

って、書いてあったとする。

どんな人が思い浮かぶだろう?


そこら辺にいる大学生でしょ。誰でもいいでしょ。あ~~~はいはいバイト頑張ったのね、じゃないですか。これじゃ嫌でしょ。「僕/私こんなに頑張ったんだよ!!!!」って言いたいのにさ、「一般大学生のAさんがアルバイトしていました」ってエピソードになるじゃん。


だから、こうするのよ。

【ガクチカ】
アルバイト先のタピオカ店で、唯一のSNS担当としてInstagramの運用に力を入れ店舗への予約数を増加させました。

って。一気に解像度上がるでしょ。

「タピオカ屋なんだ」って。
「ちょっと流行は収まってきたよね」って。
「SNS担当一人だったんだ」って。
「Instagramの投稿頑張ったのかな」って。


他には、こんな感じ。

【困難を乗り越えた経験】
集団塾のアルバイトで、人手不足の中校舎の運営に尽力した。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

集団塾のアルバイトで「私の配属後約2ヶ月で先輩が全員いなくなる」ほどの致命的な人材不足をのりこえた。

どう?

「人居なかったんだ~」が
「え、2ヶ月で? 人居なくなったの?」になるでしょ。

ちょっとだけイメージが膨らむでしょ。



じゃあどうしたら、自分じゃなきゃいけない文章になるのか。

「誰でもやってるようなことしかしてないよ!!!」

って思うかもしれない。でも、大丈夫。いくらでもできる。大学生AのESから、他の誰でもない私だけのESに、なる。


すなわち、

・具体性はエモさだ
・象徴的なエピソードや表現を探せ
・感情を入れろ
・動機を入れろ

である。


「コンビニでアイスを食べました」じゃ、エモくない

エモくない、でしょ。コンビニでアイス食べてるだけだもん。

じゃあこれが、

深夜3時のファミリーマート。不採用通知が届いたスマホをベッドに放り投げて、逃げるように小銭を掴んで駆け込んだ。プラスチックのスプーンを持つ手の、その感覚がなくなるくらいの寒さの中、駐車場の片隅でスーパーカップを食べた。息が白かった。

だったらどう?

ちょっとだけ、ちょっとだけだけどさ、エモさが増すでしょ。いや、エモくねえよって思われたら大変申し訳ないのだけれど、でもさ。


具体的じゃなきゃ、いけないんだよ。抽象化はすればするほど、誰でもよくなるんだ。


だから、

飲食店のアルバイト

↓ ↓ ↓

アルバイト先のタピオカ店




公式LINEを導入して顧客とのやりとりを効率化しました

↓ ↓ ↓

公式LINEを導入し「書類不備がある度に、顧客に電話する」という手間を削減しました


こんな感じにしたほうが、魅力的だ。


僕たちはよく「試行錯誤しました」だとか「意見を集めました」だとかみたいに、一括りに抽象化をしたくなる。だけれどそうすると、どこにでもいる一般大学生Aになってしまうのだ。

全ての文を具体的にする必要はない。冒頭の1文や自分が最も頑張った施策など、「ここ伝えたいよね!!!」で、がっつり具体化してみるとなんだか一気に自分だけのES感が出てきたりする。



ただし、具体化をするとやってくる大きな問題点は「網羅性がなくなる」ことである。

例えば部活で、練習メニューも考えたし、皆の意見も聞いたし、器具の整備もしたのに、具体化をしすぎてしまったが故に「シュートフォームの動画を皆で見た」だけの人になってしまったりする。


これを解決するのが、

・象徴的なエピソードや表現を探せ

というテクニックだ。


▼例えばさきほどのこれ

【困難を乗り越えた経験】
集団塾のアルバイトで、人手不足の中校舎の運営に尽力した。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

集団塾のアルバイトで「私の配属後約2ヶ月で先輩が全員いなくなる」ほどの致命的な人材不足をのりこえた。

「先輩みんないなくなっちゃってタイヘ~ン」という文では、ない。この文の主題はあくまで「人材不足」である。

「私の配属後約2ヶ月で先輩が全員いなくなる」はあくまで、それくらいの人材不足だったのだという一種の象徴である。例示なのだ。



抽象的な表現で網羅性は担保しつつ!!!!!
象徴的な表現として具体性をがっつり持たせる!!!!!!!!


んだよ。

ここで、象徴化の例をいくつか出すから見て欲しい。スクショしてほしい。

【象徴化の例】

<〇〇ほどの>
「私の配属後約2ヶ月で先輩が全員いなくなる」ほどの致命的な人材不足


<中でも>
営業電話の成功率を上げるため、顧客の悩みを聞くことにフォーカスした。中でも18時から20時の間の電話では~


<例えば+など>
基礎から教えることを意識した。例えば物理の問題では、そもそも分数の割り算に課題があると発見し、算数の計算問題からやり直すなどだ。


<最も〇〇だったのは / 代表的なものが>
公式LINEの導入に力を入れた。最も困難だったのは、患者さんの予約変更機能を実装することだ。



最後に。

「感情や動機」は自分しか持っていないものである。ESとなると僕たちはどうしても物事を客観的に書きたくなる。何があったのかとか、何をしたのかとかいうように。

だけれど実際の所「どうしてしたのか」「何に気付いたのか」「なんでしようと思ったのか」という、感情や動機のほうを知りたがっている場合は多い。そのほうが、実際の業務をみたときに再現性があるからだ。


雑貨屋でポップ作りを頑張っても、自動車の営業として取引先にポップを配るわけにはいかない……でしょ?


ポップ作る? 名刺と一緒に渡す? クビだろそいつ。


だから、「あんたはどう思って、何に気付いて、何でそうしたのか」が知りたいのである。

そこを意識すると、こんなものが書ける。

【ガクチカ|冒頭部分のみ】

塾のアルバイトに力をいれた。授業をする中で、私は生徒の集中力が続かないことに課題感を持った。そこでベテラン講師の授業を分析すると、解説だけでなく、生徒を楽しませる様々な話題が盛り込まれていた。私は授業には「解説がわかりやすいこと」と「真面目すぎない楽しさ」という相反するニーズが存在すると気付き~~~

「生徒の集中が続かないという課題があった」のではなく、「僕はそこが課題だと思った!!!!!」のであり。


色々と自分なりに頑張ってみた結果、わかりやすさと楽しさの両立が必要なんだと「気付いた!!!!!!!!!!」のである。


つまり、僕たちの感情は他のだれも持っていない。僕たちの動機は、他のだれも知らない。

・感情を入れろ
・動機を入れろ


だから、自分の感情を。動機を。気づきを。反省を。モチベーションを。ちょっとでも書いてみると、あるいは文末にでも忍ばせてみると、自分だけのエピソードに近づくことができる。



なんでもあるファミレスと、チキンステーキしかない洋食屋、どっちがウマそう?

ファミレスも美味しいよ。好きだよ。行くし。


でもさ。ぜっっっっったいにチキンステーキしかない洋食屋のほうが、おいしいだろ。ウマいだろ。


【魅力的なESのための、5つのシンプルなルール】

(1) 論理構成はカンタンに書く
(2) 音で聞いて、1回でわかるように書く
(3) 「自分じゃなきゃいけない」ように書く
(4) ”文章の厚み”=”言いたいことの厚み”で書く
(5) 一般論は最低限で書く

継続力をアピールしたいとか、特に色々なことを頑張ったとかいう場合、僕たちはそれを全部書きたくなる。でもね、それじゃダメなんだ。ファミレスになってしまうから。


例えばこれが、ファミレス。

【主体的に取り組んだ経験】

所属していたサッカー部の活動に主体的に取り組みました。高校時代もサッカー部に所属しており、全国大会に出場した経験から、大学ではベスト4を目指すことを目標にしました。
2年次にはチーム副キャプテンとなり、効果的な練習方法を学び練習メニューを考え、私自身も自主練習に積極的に取り組みました。チームの主な課題はゴール間際での決定力だったため、セットプレイの開発などにも力を入れました。その年の大会では無事全国大会に出場できたものの、ベスト16という結果に終わってしまいました。
そこで私は次こそはと3年次ではキャプテンとして更に個人とチームの双方で戦力の底上げを目指しました。今までの試合から課題を見つけ出し、地道にその改善に取り組みました。その結果、三年次の全国大会ではベスト4を達成することができました。

これ、サッカーをただ頑張った人。なんだよね。


高校からサッカーを頑張った。メニューを考えた。自主練もした。大学2年の時はだめだった。だから4年ではもっと頑張った。そしたら上手くいった。


そんな、

ミラノ風ドリアもあるし、ハンバーグもあるし、おにぎりもあるし、ヒレステーキもハンバーガーもマルゲリータピザも釜飯も焼き鳥も寿司もスタミナ丼もイカスミパスタもミニパエリアも角煮も酢豚もチャーハンも青椒肉絲もフォカッチャもエビフライも


みたいなことをすると、結局何をアピールしたいのかがボケてしまう


アピールしたいテーマは1つに絞る。絶対にだ。


「キャプテンとしてチームを鼓舞した経験」なのか、
「自分の課題に向き合ってゴール率を向上させた経験」なのか、
「挫折にめげずに努力を続けた経験」なのか。

それを1つに絞って、その言いたいことに文章の厚みを割くんだよ。


例えばここでは、ガクチカのセオリー通りに「原因を特定し、改善する力」をアピールしてみよう。


【主体的に取り組んだ経験】

所属していたサッカー部での活動に注力しました。2年次に副キャプテンとして挑んだ大会ではあと2勝足りず、目標としていたベスト4に届きませんでした。
3年次にはキャプテンになり「悔しさを抱えたまま引退したくない」という思いから、戦力の底上げに取り組みました。前年度の敗因である得点率の低さを改善するため、全試合の録画やデータを分析しました。すると、「他チームと比べて相手陣地に入ってからシュートを打つまでが遅く、相手チームに守備を整わせる時間を与えてしまっている」と気付き、対策を徹底しました。最も効果的だったのは、攻撃に転じてからシュートを打つまでの時間制限を20秒と定め、練習を繰り返したことです。
結果としてチーム全体の得点率が向上し、全国大会でベスト4を達成することができました。この経験から私は「挫折にめげず、失敗の原因を探り徹底して改善する」という努力の重要性を学びました。


1つめでは文章の2/3を占めていた高校~大学2年までの話を、たった2文にした。アピールしたいポイント以外は一気に削り、がんがん削り、アピールしたいポイントに絞って徹底して具体的に書く。


そのエピソードの中で見せたい箇所はどこか、一番魅力的に見える場所はどこかを考えて、ソレが文章全体の中で一番輝いて見えるように、スペースを与えてあげよう。



「橋本環奈は可愛い」って言ってみても、流されて終わってしまう


疲れてきたね。最後だ。

【魅力的なESのための、5つのシンプルなルール】

(1) 論理構成はカンタンに書く
(2) 音で聞いて、1回でわかるように書く
(3) 「自分じゃなきゃいけない」ように書く
(4) ”文章の厚み”=”言いたいことの厚み”で書く
(5) 一般論は最低限で書く


一般論っていうのは、誰でも知っているコトって意味だ。太陽は東から昇るとか、そういうやつ。


想像してみてほしい。彼女が、あるいは彼氏でもいい。

「ねえ知ってる?」

そう切り出してくる。


「橋本環奈って、可愛いんだよ」



いや、ふ~~~~~~~~ん。で??????


だろう。

こんなことをESに書いてはいけません、なんて言うと、そりゃそうなんだろうって話ではあるのだけれど。でも、結構あるよ。そういうES。

例えば、志望動機。

情報化が進み、誰もがインターネットを通して欲しい情報にアクセスできる時代になりました。だから私は、〇〇に関心を持ち~

とか。

気候変動の影響により、脱炭素への関心が高まってきました。
だから私は、〇〇に関心を持ち~

とか。

グローバル化が進み、国外需要に企業がどう対応していくかが重要となっている。
だから私は、〇〇に関心を持ち~

とか。


見たことないだろうか。「そりゃそうだろう……」っていう文。「皆知ってるよそれ」っていう文。


1文だけなら、まだわかる。前提として書かないと文脈が崩れてしまう場合もあるから。でも、それで400文字の内100文字も使っているようなESってさ、あるんだよ。


「流石にそんなことしないわ」って、思う?


じゃあさ、これならどうよ。

貴社は幅広い事業領域を持ち、自動車産業を多方面から支えています。また企業理念である「〇〇〇〇〇〇〇〇」の精神のもと、近年では排気ガスから温室効果ガスを削減するための▲▲▲▲という技術を開発し、ビジネスとエコロジーの両立に取り組んでいます。
私はそんな貴社で~~~~~~~~~~

って、いうやつ。書いたことない? 見たことない?


あるでしょ。絶対。僕も書いたことあるよ。


ネットでESを探してみると、わんさか出てくるのだけれど、これ、この部分は何も言っていないのと同じなのだ。

一般論っていうのは、何も日本中の人たちが全員知っているコトだけじゃない。

志望先の企業にとっての当たり前。つまり、「あなたの企業ってこういうことやってますよね」だとか、「あなたの企業理念ってこれじゃないですかー」とか。そういうものも含む。

そんなこと言われても、



知っとる。



って話なのだ。だから、一般論は最低限にしなければいけない。書いてはいけないわけではなくて、あくまで最低限。志望動機は、「僕は。私は。あなたの会社に入りたいよ~~~~!」っていう、「自分」の話なのだ。


だから、だらだらと相手の話をしてはいけない。自分の話にするんだ。


貴社は〇〇や▲▲を始めとした自動車分野の製品に加え、◇◇◇や☆☆☆☆技術などの幅広い新規事業にも挑み続けています。

↓ ↓ ↓

私は、貴社が自動車分野の製品にだけでなく、◇◇◇や☆☆☆☆技術などの幅広い新規事業にも挑み続けている点を魅力的に思いました。なぜなら私は~~~~~



貴社は「〇〇型IT企業」というスローガンをかかげ、▲▲という分野で先端的なAIを活用した~~~~~~~という事業を行っています。

↓ ↓ ↓

AI技術を駆使した先進的な技術の研究開発に携わりたいため、貴社を志望します。
特に、貴社の~~~~~という事業に関心があります。私は大学で、AIを用いて既存システムのセキュリティをより堅牢にする研究を行ってきました。その経験から〇〇という思いを持ち、「〇〇型IT企業」である貴社で既存システムとAIを掛け合わせた新たなソリューションの提供を行っていきたいです。


と、このように。

あなたの会社は「〇〇型IT企業」です!!!

なんてことは知っているので、


「〇〇型IT企業」である貴社で”私は”こうしたいと、一般論は最低限に可能な限り自分の話をするのである。



よく、志望動機はラブレターなんだよ、なんて言われ方をする。

つまるところ、私はこうで、あなたはこうで、だから私とあなたは両思いになれますよ、という話である。


そんなところで「あなた」の話をず~~~~~っとしていてもしょうがないのである。


だから「あなた」の話は少しに留め、「私」の話を十分にして、そして相手に

「お~~~、たしかにウチと合っているかもね」

と思ってもらうのである。


ESにおける「貴社の話」は、私のどこが会社に合っていると思うのかが伝わりさえすればいいのだから、超最低限でいいのである。





ということで最後に、再掲。

【魅力的なESのための、5つのシンプルなルール】

(1) 論理構成はカンタンに書く
(2) 音で聞いて、1回でわかるように書く
(3) 「自分じゃなきゃいけない」ように書く
(4) ”文章の厚み”=”言いたいことの厚み”で書く
(5) 一般論は最低限で書く



僕がかつて、大学時代に考え抜いた「ESの書き方」どうでしたでしょうか。


クソES、書くのもう辞めましょう。

明日から、今から、良いES書きましょう。


だってかわいそうでしょう。お祈りメール貰う僕たちが、じゃないよ。


読む面接官が、だ。

死んだ目でさ、毎日毎日10個も20個も……死んじゃうって。


だから、自分の魅力を、自分の頑張りを、ガクチカを志望動機を自己PRを、苦労させず魅力的に読んでもらいましょうよ。


と、いうことで。おわり!!!!!



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