【YOHAKU】知ってほしい”吃音(きつおん)”のこと
こんにちは、YOHAKUです。
今回は、吃音症をもつ、ある一人の大学生にお話を聞かせてもらいました。
高校に上がって出るようになった吃音の症状が、周囲のイジりで悪化してしまった。
向かえた大事な大学入試二次試験、面接でどもりが出てしまい、毎日眠れないほど悩んだときもあったそうです。
吃音(きつおん)を初めて聞いた人もいるかもしれません。
吃音は、簡単に説明すると、話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつです。
吃音症って実際どういう症状?
困るのはどんなとき?
当事者以外にできることは?
など、いろいろお話してくれました。
きっとあなたの余白を広げてくれる記事となっています。
ぜひお読みください。
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緊張と不安の面接試験。いっぱいどもってしまった
ー大学入試の面接で悩んでいた話、聞かせてください。
初めての二次試験で緊張して本番でいっぱいどもってしまって、うまく話せなかったということがありました。
まず、小論文試験でミスってしまって、時間内に解けなくてすごい落ち込んだんです。
グループディスカッションまで一時間あったんですけど、なかなか切り替えれんくて。
案の定グループディスカッションもうまくいかなかったです。
何言ったらいいかも、周りが何言ってるかもわからなくて、自分の意見が全然言えず……。
その後の個人面接ではあえて自分の吃音について話しました。
もうその時は終わったなって、自暴自棄になってました。
帰り道、駅の周りを一人で泣きながら歩きました。
せっかく遠くまで来たのに何もできずに終わってしまった。
塾代とか遠征費とか……、すごい親にお金とか出してもらってるのに申し訳ない、情けないって気持ちもあって。
地元の駅まで親が迎えに来てくれてたんですけど、家に帰ってからも泣いて。
あのときは本当に辛かったです。
ほかの志望校の二次試験も控えていて、その頃はずっと寝れなかったです。
最初の一言が言えない
ー面接で緊張して、いっぱいどもってしまった…。「どもる」ってどんな感じなんでしょうか?「吃音」について教えてください。
どもるっていうのは、最初の一言が言えない感じです。
初めの言葉の、「あ」とかで止まってしまう。
具体的には「あ、あ、あ、ありがとうございます」みたいに、言いたいことはあるのに最初の一文字が出なくて急に黙り込んでしまったりとか。
変に口が力んでしまうんです。
症状は、日によっても、精神状態によっても調子が変わります。
傾向としては、不安な時になりやすいです。
相手に、しゃべり方を変に思われるかなって思ったら余計に言葉が出てこなくなります。
極度の緊張状態のときにも出ます。
あとは、自分の中でしゃべる内容を頭で考えてからしゃべるときは詰まる。
ーなるほど……、そうすると、面接とかはその最たる例……?
もう本当にそうですね。
あのときは小論で失敗して極限状態でもあったので。
普段練習していた時からも、どもりはあって、
ヤバいってなったら黙り込んだり、言いやすい言葉に変換したりで……。
ーえぇ、言う前に分かるんですね。
そう、なんか、わかるんですよ、これ出えへんな、って。
だから、ヤバいって思ったら、別の言葉に言い換えてとか工夫することがあります。
特に治療法はなく、病院でも突き放された
一回ほんまにやばくて、
ちょうど初めての二次試験が終わったくらいですけど、
その時精神科に行ったんですよ。
医者は、そういう人(吃音の症状がある人)はいっぱいいるから、君くらいの症状やったら全然大丈夫やって。
わざわざ病院行ったのに理解してもらえなくて、その時はちょっと落ち込みました。
吃音は、特に治療法っていうのがないらしくって、まだ研究が進んでない。
そういうのもあって突き放されたんだと思うんですけど……。
ー自分で付き合い方を工夫するとか、精神的に不安な状況を取り除くしかないってことですか……
そうです。
吃音症の本読んだんですけど、2歳児~4歳児の5%、成人では1%とかしかいないらしいです。
あとは、大体起こるのが小学生とかのちっちゃい頃で、大人になるにつれてどんどん抜けるものだっていうのも書いてありました。
でも自分の場合は逆で、小中のときはそんな気にならなかったけど、むしろ高校から悪化したパターンです。
ーでは、生まれつき今の状態ではなかったんですね。その悪化したきっかけについて、良かったら教えてくれますか?
はい。
高校で、自分にとっての環境や生活の変化があって、学校も遠かったので、半年くらい体が慣れなくて、それで症状が出てしまって。
それを友達とかに指摘されるうちに、自分の中でどんどん悩んでいきました。
指摘された記憶が潜在的に残り悪化する
ー高校で友達に指摘されたというのは、どういう感じだったか教えてもらえますか?
バカにされるっていうか、笑われるみたいな感じで、。
遊び半分のイジりのつもりではあったとは思うのですが、それが余計辛くて悩んでしまいました。
一度こんなふうに指摘されると、
その時の記憶が潜在的に自分の中に残ってしまって、より悪化するようになります。
自分の場合はカ行やタ行やサ行が言いにくいんですけど、
それも、友達によく指摘されたりって経験が記憶のどこかにあるからで、
人と話す時、変に意識してしまって、固まっちゃうみたいな感じです。
ーなるほど……発音的に言いにくいとかではなく、ってことですよね。
身の回りにいる人の影響が想像以上に大きいですね……。
そういえば、受験の時、自分はなんでそんなに緊張してたんかなって引っかかってて、インタビュー受けることになってから考えてみたんですけど、
今思うと、高校の雰囲気で入試に余計にプレッシャーがかかっていたのもあったのかなと思います。
自分の学校ってほとんど指定校で進路を決めるので、それが一般的という流れがあったんですよ。
でも、その中にどうしても行きたい大学がなくて、AOって道を選んで、
周囲の反対を押し切っての選択だったので、
そのせいで落ちたら何言われるかわからない状態でした。
あとは、周りの人にもあえて言い切って、自分を追い込んでしまっていたのも不安につながっていたかもしれないです。
これで落ちたら、周りの思う壺っていうか……。
そうは絶対なりたくなかったんで、
がむしゃらに頑張ってたんですけど、やっぱ本番直前は不安で。
それで余計緊張しちゃったんかなと。
あのときは、すごい孤独でした。
ーそのあとにあった他の大学の試験ではどうでしたか?
次にあった2次試験は、自分的に運がよかった試験でした。
小論文が思ってたよりも易しめで、余裕もって書き終えて見直しが30分もできて、「よっしゃ!」って。
そのあとのグループディスカッションはすごく短く感じました。
メンバーに恵まれて、すごくやりやすかったです。
最初の数秒の間はお互い探って黙ってたけど、そっからはもうみんなしゃべりっぱなしで。
ーそして、その大学に無事合格されたんですね!
不安は消えないけれど、症状と上手く付き合っていく
ー大学生になった今はどうですか?
100%とは言い切れないんですけど、こっちでに来てからは指摘されることとかがなくなったので、今は気楽にという感じです。
ーちょっと暗い…話になるのですが、もし、指摘されたら、高校の時みたいになるんじゃないかという不安はありますか?
それは勿論あって、
日によって調子がいい時悪い時あるので、悪い時は悪いなりにうまいこと何とか乗り切ってみたいな感じです。
ー自分と同じように悩んでいる人、例えば受験生の子とかにアドバイスするならなんて声をかけますか?
自分は高校の時、劣等感があって、すごい人と比べてたなって。
人と比べてもいいことはないし、その時間は本当に無駄だってことを伝えたいです。
また、自分と同じように吃音で悩んでる受験生には進学を機に思い切って環境を変えてみてもいいのかなって思います。もちろんこれはその人の置かれている状況次第で変わるのかなとは思いますが、自分は環境を変えたことで症状が良くなりました。
もっと理解してもらえる世の中に
ー周りの人とか世間とかにわかってほしいことや、伝えたいことは何かありますか?
高校のとき指摘してきた人たちは、悪意があってとかではなくて、
いじっているというか、楽しませようとしてくれてたんだと思うんですけど……
自分もその時は、表面上で笑ったりできても、
一人の時はやっぱ辛いなって思うことがありました。
だから、必要以上に指摘するのはやめてほしいです。
指摘されると余計に吃音を意識してしんどくなってしまうから、
自分はさりげなく流してほしいと思っています。
あとは、もっとこの症状っていうのを理解してもらえる世の中になったらいいなって、思います。
もっと広まっていってくれたら。
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今回は、吃音症をもつ、ある一人の大学生にお話を聞かせてもらいました。
もちろん、吃音の症状をもつ人すべてが、今回インタビューでお話してくれたように思っているわけではありません。
ひとりひとり違う症状、事情、気持ちがあると思います。
でも、だからこそ、優しい余白のために一人の声として受け止めたいです。
まずは知り、ひとりひとりが自分ごととして考えることで、優しい余白の輪が広がっていったらと願っています。
お読みいただきありがとうございました!
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YOHAKUは、誰もがそっと抱えているけれど、他者から見えづらい事情にスポットを当てて、それが読んだ人の優しい想像力の余白となることを目指しています。
「最近こんなことに悩んでいる」
「なかなかわかってもらえないけれど、自分の事情を説明できたなら」
「こんな人もいるって知ってほしい」
こんな気持ちを抱える方がいれば、是非インタビューさせてください。
いっしょに記事をつくりましょう。
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植木凜・小林華
文責:植木凜