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【#エンジンがかかった瞬間】出産

エンジンがかかったというか、勝手にかかった瞬間。
やっぱり、出産を超えるものはない。

コロナ禍の、出産予定日より2週間前。私は実家に里帰りしていた。

久々の上げ膳据え膳のワガママ生活を満喫していたら、突然パン、という音と共に、足を伝う水っぽい液体。直感で破水だと思った。

陣痛から始まるタイプの出産レポは、穴が開くほど見て勉強していた。が、なぜか破水から始まるとは全く思っていなかったので、これからどうなるのかわからず不安が襲ってきた。

慌てて病院に電話した。
番号を押す手は、嘘だろってくらい震えてたが、何とか押せた。

アレとアレ持ってきて、病院のココに来て、等と指示を受け、バタバタと準備をすませ、病院に向かう。

病院に着くと即入院となり、安静にしながら陣痛を待つことに。既に赤ちゃんを産んだ方々と同じ病室に入れられ、一晩、落ち着かない夜を過ごした。

翌朝、陣痛はじんわりあるものの、まだ重い生理痛程度。陣痛の間隔も空いていたため、赤ちゃんのことを考え、陣痛促進剤を打つことに。

点滴で促進剤を打たれたのだが、これが信じられないことに、点滴の針から促進剤が出てきた瞬間からもうお腹が痛い。痛い痛いと助産師さんに言うものの、何言ってんの、産まれるのこれから12時間後くらいよ、そんな騒がないで、体力持たないよ、と言われて絶望。

もう何も考える余裕もないくらいに痛い。

気がつくと、スパイが拷問受けて叫んでるみたいな声がでてた。思いっきり叫んで、痛みも恐怖もやり過ごす。アレが人生で一番デカい声だったはずだ。

しかも、陣痛室には1人きり。助産師さんは、そんな私を冷たい目で見ながら部屋を出てしまった。

コロナで家族の出産立ち会いが不可となり、陣痛室に完全に1人。初産。どうなるのか未知数すぎたし、これから12時間もこれに耐えるのかと思うと不安で仕方ない。心の準備もできてない。

イキみたくなったらナースコールで呼んでって何!?そんなのわかるかっ!何してんのアイツ!!と、助産師さんにイライラを募らせる。(申し訳ないが、陣痛が痛すぎて思考が手負いの獣レベルになっていた)

ところが、1時間半ほどすると、イキみたくなってきた気がした。

アレ?これ??

でも、聞いてた時間と全然違う。まだまだって。。

とりあえず、イキんで(?)みる。

???

陣痛を飛び越した痛み。

???

ナースコールしてみる。

私:あの、イキんでます。多分。

助産師:はぁ?そんなわけ…まぁ行くけど。。

私:はい。。

ペラっと私の病院着をめくる助産師さん。

助産師:…え、イキんでみて?

私:はい。。

助産師:…うーん、このまま頑張って。えっと、あの、ちょっと電話してくる。

私:え???

ダッシュで出て行く助産師さん。

ええええ???どう言う状況?何あの人!また放置された。

程なくして助産師さんが、車椅子を押して帰ってきた。後で聞いた話、ちょうどお昼時で先生も他の助産師さんもつかまらなかったらしい。(大丈夫か、この病院! 笑)

助産師:これに乗って!

私:は?むりむりむり!動けない!

助産師:ここで産む気!?

私:えっ?何言ってんの!?

助産師:乗って!

私:えええ…

なんとか車椅子で分娩室に入り、分娩台に乗って少し経つと、先生が飛び込んできた。ほんとに、走りこんだ!って感じ。

先生:もう頭で出るじゃん!

そして程なくして産まれた。
分娩室に乗った時間は、産むためにイキんでた時間より、産んだ後の縫合の方が長かった。。

産むのは、ほんとに一瞬だった。

でも、あの一瞬でエンジンがブワッとかかり、一気に母親になって、人生が変わった。ちっちゃくて、フニャフニャで、自分より何倍も大切な存在ができたのだ。

#エンジンがかかった瞬間
#出産

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