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妻が脳梗塞になった#2

【出来ることは全部やると決める】


担当看護師より架電があった。
「奥様がキャミソールを持ってきて欲しいそうです」
「はぁ」
「よく分からなければ買ってきて欲しいそうです」
「はぁ」
「急ぎではなく面会のタイミングでも良いのでよろしくお願いします」
「はい」
私の知っているキャミソール

うん。こんなイメージ。
妻が若い頃着ていたのもこんなもの。

「入院中にこれを着る?40代で?アホなのか………」
しかしどれが良いか分からない。
よく分からん&病院に詳しく聞くのも無粋なので仕方がなくZARAと言う店におっさんの私は入った。
「キャミソールってありますか」
「奥様かお子様用にお探しですか」
「いや、私が着ます」
「えっと……」

とんでもない空気になった。

「嘘です。カミさん用です」
そこで妻の要望で、入院中など事情を話すと、インナーとそうではないエロいキャミソールの2種類があることを生まれて初めて知った。
「そうなるとうちではなくユニクロさんの方が売ってますよ」
ZARAの店員様に自身の店の在庫を売ろうとせず、素直に他社を教えてもらえたのでユニクロで買った。元ガチ勢の営業職を生業としていた私の感想は「他社に売上を渡してどうする。売り場に立っているなら自社商品でなんとかならないかするだろ」と思ったが、時代かなとも思い素直にユニクロへ向かった

仕事の合間にキャミソール(インナー)を手に入れ、帰りがけ速攻で渡しに行った。
「1秒でも早く届けてあげる」
それしか出来ないと思っているから電話があったその日に届けた。
しかも子どもの手紙を添えてだ。 
家に帰り着く頃再度病院から電話があった。

「ありゃ、間違えたかな」

電話に出ると
「スマホの所持が認められたので奥様がスマホ、ヘッドホン、メガネ、楽譜を持ってきて欲しいと言ってます。急ぎではないので、面会時にでもお持ちください」

いっぺんに言えや◺  ̫ ◿ꐦ

紙袋に一式詰めて、再度病院に行きました。
物を受け取る管理室のお姉さんは、また来たの?という顔だったことは言うまでもない。
(俺がメンヘラみてーじゃねーか)

【想像してあげる事しか出来ない】

私は少年院や刑務所に入った事はないが、その手前まで実は経験がある。また長期入院もある。その身動き取れない状況下では1日どころか1時間すら待てなくなるほど長く感じる。
左半身麻痺している状態ではその比ではないのだろう。
「待つ」という行動を極端に嫌う私は、それもあって動きを最短にしている所もある。
優しい言葉をかけてあげられているかは分からない。ネットで仕入れまくった情報を元に回復するためのウンチクと人一倍やって回復が早まったなどお尻を叩いている事が正解かも分からない。でも1番は最短で行動してあげて「待つ」というストレスをかけないようにする。現状出来る行動がそれしか思いつかないのだ。

そんな事を考えていたが病院から今日はかかってこない。何故ならLINEで注文が入るようになったからである。
これからLINEで注文されためぐリズムのアイマスクVer.薔薇とファミマの靴下を買いに行ってくる。
思ったよりめぐりズムが高いということがわかった。

【不安を分析してみた】

「不安は見えないから生まれる」
不透明なことが不安に繋がると知識として知っていた為、まずは事実と気持ちの整理をした。

脳梗塞
リハビリー次第で改善する可能性は高い。
だが、運次第であり完全回復するかどうかは分からない。

リハビリー施設
どこでもやる事は一緒。
最大6ヶ月と国で決められており、6ヶ月経つと回復しない場合が多いとされる。
通常60日~90日前後の入院が多いが、全体で統計が取られているため40代の回復統計は見つけられなかった。
面会数や規則にばらつきがある。
個室を余儀なくされる高級リハビリー施設もあれば、大部屋は0であり、私の地域では月20万前後の差があった。
人の合う合わないはどこでもあると想像している。
当初は今いる病院で良好なコミュニケーションがとれているので面倒だからその病院で見てもらおうとしたが、何しろ出ていってもらいたそうなのと(あくまで倒れた患者をできる限り入れるため……救急病院だからね)金が転院するより高いと聞き、転院を即決した。
不安なのはなにかあった時に、即見れる体制は当然リハビリー施設にはない。

お金の件
心配性がたたり、妻は医療保険を2つも入っていた。
しかし日額1つ5000円60日まで入院費用は2ヶ月60万とわかった。
最大でも40万程度持ち出しすれば良さそう。
なんとかなる金額だから安心した。

【当の本人が動き始めた】
これが1番安心に繋がったが、運ばれた次の日は指しか動かなかった。
しかし10日前後で手首が動き始めた。
会話も運ばれた当初よりハッキリしており、コミュニケーションが取れるようになった。
私ではなく妻が動き始めている事は実際私には関係のない事だが、素直に安堵した私自身も、これ程家族を大事に思う心があったのだとビックリした。
キッカケは病室には当然子どもは入れないが、移動の際に一番末っ子と少しだけロビーで会わせてくれ、その日から手首が動き始めたそうだ。それが原因なのか献身的なリハビリーが幸をそうしたのかは分からないが、明らかに回復の一途を辿り始めた。
これが一番の安心に繋がり私の気持ちや動きが変わった。

続く
                                                                   凛1129


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