見出し画像

検索・発見体験とは

この記事は「検索・発見プロダクト 全部俺 Advent Calendar 2023」の2日目の記事です。

前回の記事ではこのアドカレのモチベなどを語りました。平たくいうと、様々な役割の経験から改めて検索・発見に関するプロダクトのあれこれを振り返ったり考えてみたいということでした。

2日目はそもそも検索・発見体験とは何かを考えてみたいと思います。

検索・発見体験

1日目の記事で検索やら推薦やらという言葉を使いましたが、これらは実は「技術」を指す言葉として使っていました。私がこの一連のアドカレで取り上げる検索・発見とは「体験」ですので、今回はこの辺の考えをまとめてみたいと思います。

まずは検索という体験がどういうものかを考えてみます。ここでは、体験の流れ、つまり起点とゴールをメインに考えを整理してみようと思います。

検索体験

  • 検索体験の始まり:検索の始まりは「(漠然とした情報)ニーズの発生」と考えることができます。ニーズとは何かというのは結構難しいトピックですので、またおいおい機会があれば触れていきたいと思います。

  • 検索体験の終わり:検索体験の終わりは「ニーズを満たすこと」となります。

  • 検索の始まりと終わりを繋ぐもの:大量かつ多様な情報源からニーズを満たす情報を手にいれるために、システムに対してクエリを発行し返ってきた結果見てニーズを満たせるようにすること。登場人物としては「ユーザー」と「システム」があり、それらのインタラクションとして考えることができます。

つまり、ニーズがあり、そのニーズを満たすためにあれこれ探し、見つけてニーズを満たすというのが検索体験になります。検索という体験がふんわりと定義できました。(専門家に怒られそうな雑定義)

発見体験を考える前に

さて、ここからは発見という体験を考えてみましょう。

ニーズはどのように発生する?

先ほど、検索体験で見た始まりとなるニーズがいつ・どのように起こるのかを考えてみたいと思います。発見(体験)という言葉は検索体験ほど一般に使われる言葉でないので、まずは具体的な事例から迫ってみます。

  • TikTokでショート動画見ていたら、気になるブランドが出てきてその商品を欲しいと思う(ブラウジング)

  • Amazonや楽天などのEコマースでセール商品を見ている中で、「そういえば家の冷蔵庫を買い替えたいな」というニーズが発生する(プロモーション接触)

  • ジャンプ+などで漫画を読んでいる中で「この作家の過去作品も読みたい」というニーズが発生する(その他のコンテクスト)

発見と検索はシームレスにつながる

ここでは漫画アプリで漫画を読んでいるユーザーを例にさらに突っ込んで考えてみましょう。 とある作品を読んでいるユーザーが、この作者の過去作を読みたいと思って、過去作の漫画を調べるという行動があります。このとき、ユーザーのニーズ(とある作者の過去作品を知りたい・あわよくば読みたい)が発生してから検索行動を行い、そして過去作を見つけて満足するという流れは一連の体験として考えることができます。

プロダクトを作る観点に立つと、こうした発見〜検索は一連の体験として考える必要があります。なぜなら、検索を磨き込む場合、そのユーザーがどのような状況で検索をしているかを深く考える必要があるからです。発見の場合も同様で、ニーズが発生した状況でスムーズに検索に繋げることもより使いやすいプロダクトを考える際に重要な観点になります。

「検索・発見体験」で扱う3つのコンテクスト

ニーズ発生は様々な状況が考えられます。そのため、ニーズ発生の瞬間というのはかなりカオスでとっつきにくいと思います。
そこで、私は検索・発見体験を主とするプロダクトで発見が起こるコンテクスト(状況)を以下の3つに分類しています。

  1. ブラウジング: 情報ニーズがない状態で、興味や社会的動機を元に検索対象のコンテンツまたは検索対象を元に再編した情報を消費している状況

  2. プロモーション接触: プロモーション等によるコンテンツと接することで、認知が形成されニーズに変わっていく状況

  3. その他: 上記以外の状況

ブラウジング

とりわけブラウジングというコンテクストは発見において重要です。ブラウジングとは具体的なニーズではなく、興味(interests)や社会的動機(e.g. FOMO (逃す恐怖))に基づく情報とのインタラクションです。

とりわけ、興味とは個人が特定のトピックやコンテンツに対して持つ好奇心や関心を指します。情報ニーズが特定の目的やゴールを達成するために必要な情報を求めるのに対し、興味はより自発的で好奇心や個人的な関心に基づいていることが違いです。

例えば、TikTokなどで投稿を見たりする行動は興味に基づく行動と考えられます。一方で、SNSなどではみんなが見ているから、コミュニティーに取り残されたくないからなどの社会的動機も重要になります。

ブラウジングとプロモーション接触

現代のプロダクト開発においては、ブラウジングとプロモーション接触もシームレスに繋がっており、両者を区別してスムーズに繋げる体験設計が必要です。ブラウジングと異なり、プロモーション接触はユーザーの興味に基づくものではなく、日常生活やプロダクトの利用中にプロダクト開発者からの情報提供となります。

適切なプロモーションはプロダクトのグロースに重要だったりするので、今回のモデルでも重要なコンテクストとしてハイライトしています。

発見体験

ということで、発見体験とは何かというところに戻っていきたいと思います。ここまでの流れから発見体験というのは「様々な状況におけるニーズ発生というモーメントに至る過程」となります。様々な状況というのがとっつきにくいので、私は上記で説明した「ブラウジング」、「プロモーション接触」、「その他」の3つに分けているという感じです。

  • 発見体験の始まり:様々なコンテクストがあるが、とりわけ以下の3つがありそれぞれ以下の通り。

    • ブラウジング:何らかのきっかけを元に興味のあるコンテンツを閲覧している。

    • プロモーション接触:何がしかの広告コンテンツと接触して認知が形成される。

    • その他:その他のコンテクスト、例えば、友達のファッションが気に入って同じブランドのものが欲しくなったり、家の家電が壊れてしまい新しい代替品が欲しいなど。

  • 発見体験の終わり:様々なコンテクストで、新たな情報ニーズが発生したり明確化すること。

ここでポイントとなるのは、発見体験の終わりは基本的に検索体験の始まりでもあるということです。

検索・発見体験の全体像

ということで、ここまで細かくみてきた検索・発見体験を一枚絵に表すと以下のような感じです。

検索・発見体験の全体像

左側の発見体験が右側の検索体験へとつながっていく様子を表してみました。

検索・発見体験の整理は何に役立つか

さて、今回ちょっと面倒な体験のモデリングを行ってみたわけですが、このモデルはどのように役立つのでしょうか。

まずは、今後の私の記事で引用できるので、記事の文字数が少なくなります。
というのはおいておいて、やはり一番はプロダクトマネジメントです。ただ何となく検索体験と言ってもやはりその中身が良くわからない場合があります。そこで、今回のようなモデルを利用してユーザー体験を整理することができます。

これらのモデルに基づいて、プロダクトのモジュール分割やチーム分け(例えば、発見体験を改善するチームと検索体験を改善するチームを作り、それぞれニーズの発生とニーズの充足をゴールにおくなど)などができるでしょう。

検索・発見体験が定義できたので(雑定義ではありますが)、今後はこれらの概念に基づいて記事を書いていこうと思います。


いいなと思ったら応援しよう!