社会科散策-論述(日本史10)墾田永年私財法
〔墾田永年私財法〕
墾田永年私財法によって,公地・公民の原則がくずれていった理由を,次の二つの語句を使って説明せよ。 〔貴族・寺社/私有地〕(東京書籍p41)
〔解答〕墾田永年私財法は,開墾した土地は永久に自分のものになるとする法令で,貴族や寺社はあらそって開墾を申請した。その結果各地に私有地である荘園が成立していき,公地・公民のしくみが変化していった。
(解説)
吉田孝氏の研究以降,墾田永年私財法が公地公民制の崩壊をもたらしたと捉える研究者はいないようである。中学の教科書でも,これを考慮してか,「墾田永年私財法→公地公民の崩壊」という表現をとっているものは少ない。東京書籍ぐらいである。受験生にとっては悩ましいところだが,「公地公民のしくみが変化した」(日本文教出版)ぐらいに捉えておくのが無難。
〔参考〕最近の動き
従来の「墾田永年私財法が律令制(公地公民制)の崩壊をもたらした」というとらえ方について,これを修正し,むしろ墾田永年私財法は,律令制を補強するものであったと捉える立場が有力に主張されている。つまり,開墾田を認めることによって初めて輸租田(税金がとれる田)の拡大が可能となり,律令国家による土地支配がより強固なものとなったとするのである。