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あの人の影

私は、あの人の影を、ずっと追っている。

あの日、彼は何も言わずに、何も残さずに、去っていた
私一人を残して、どこかへ行ってしまった
彼の痕跡が色濃く残る部屋はやけに広く感じた。
どうして、どうして一人で行ってしまったの
どうして私を連れて行ってくれなかったの。
この言葉は、彼には届かない。
送る手段もない。

どうにか忘れて、新しい人生を送ろうと思ったが
彼のことはどうにも消せなかった。

日常の中で、彼がいるんではないかと探すようになってしまった

街の雑踏の中、駅のホーム、いつか行った海辺

どこにも彼はいない

私は、今日もあの人の影ばかり追っている。

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