言葉を大事にしているバンド
2023年 8月13日 ell.FITZ ALL
「TREASURE05X 2023-YOUTH GONE WILD-」
夏がやってくるとBBQや、夏フェスがあったりと、楽しいイベント続きである。
同時に、お盆を迎えては、故人を思い出すきっかけにもなる季節でもある。
そんな季節にリリースされた、Hakubiの新曲「拝啓」を聴いてみた。
これが心に突き刺さるグッドミュージックとなった。
「あぁ、生の音で聴いてみたい」
音楽好きには、勝手によくあると思っている衝動だ。
今聴きたい一曲の為に、お金も時間も気にせずに、ライブハウスに駆けつけてしまうのだ。
結婚式でよく聞くお祝儀貧乏と同じで、幸せを分かち合う為には、ライブ貧乏になる事に恐れを抱く事はない。
衝動に駆られるままに、愛知に住んでいる小太りおじさん(かつての会社の先輩)を誘い、大須にあるライブハウスに向かった。
この日は、Hakubiの他にも、最強にカッコいいバンドが出演していた。
正しくは覚えていないが、8年くらい前に渋谷のライブハウスで観たircleというバンドだ。
今年はircleもよく聴いていたので、とても楽しみであったが、容易に想像を超えてきた。
私自身、言葉を大事にしているバンドがとても好きである。
揺るぎない気持ち一つにステータスを全振りしている、泥臭いバンドに心を掴まれる事が多く、ircleもその一組である。
音楽に対しての揺るぎない信念が、楽曲に対してのこだわりにも通じている。
結局は、気持ち一つが全てを形作っているのだ。
『セブンティーン』では「貰った命を拾った時間で」と歌いながら
「このライブハウスでの時間も、あんたが拾った時間なんだ」と訴えかけてくれる。
自分の気持ちを大切に、好きなように生きていいのだと肯定してくれる音楽でもあり、それだけではないと教えてくれるのだ。
自分の気持ちを大切にするのは大前提であり、その気持ちに気づけたきっかけはなんだろうか?
自分の心に種を蒔いてくれた人がいれば、水を撒いてくれる人もいるはずだ。
太陽のように光を注いでくれる人もいて、やっと芽が出ては、どんな花を咲かすのかと希望を持てるのだ。
拾った時間で、出会った人たちの気持ちも大切にしなければ、花は枯れるし、咲く事ですら叶わないのだと伝えてくれている。
終盤での『あふれだす』でも「あなたが生きているその一瞬と、わたしが生きているこの一瞬は、何分の何の確率だとかそんな話じゃなくて」
「絶対必然だったんだって言い切れるんだ」と、自分と自分以外の人の在り方を示してくれるのだ。
こんな泥臭い事を思っていても、シラフで中々言えるものでないよな(笑)
そう思うと愚直に気持ちを乗せられる音楽って素晴らしい。
最後は私の大好きな曲『本当の事』を歌ってくれた。大好きな曲が来た時の、胸の高鳴りは音楽好きにしかわからないような感覚なのかな。
体内で心臓が、縄跳びをし始めるの。
しかも、3重飛びを100回くらい連続でくり返す感じ。
意外と私の心臓も、運動神経がいいのだと感心してしまうよ。
本当の事は、自己愛そのものを歌っている楽曲であり、自分の理想像を映し出してくれる。
人間はデフォルトで自信のない生き物だと思っているが、そこで悲観的になって人生終えるのは、何か違うだろう。
自分の事を好きになるのって簡単な事ではないのだが、少なからずとも愛されていると感じた時に、胸を張っていたいよなって話です。
他人から見た自分では無くて、自分自身で本当にカッコいいと思っていたい。
私がそう思えたきっかけは、きっとお爺ちゃんだったなと思う。
何もできない、何も成し得ていない、そんな自分を愛してくれた人がいた事実。
自信のないカッコ悪い自分のまま愛情を受け取るより、カッコいい自分でありたいよな。
そんな自分でいて、愛すべきもの全部に愛情を注げられたら、空の色すらも変えられたりもするのだ。
久しぶりに生で観たircleに活力を満タンにさせられた後は、小太りニキ(先輩)とカフェにて休憩し、Hakubiに備えた。
Hakubiもircleと同じ会場のell.FITS ALLでのライブだったのだが、同じ会場でも当たり前に雰囲気が変わる。
ただ、共通して言えるのは、言葉に込める気持ちの熱さがあるバンドだ。
Hakubiのボーカル片桐さんが、こうやって面と向かって歌い合える事も普通じゃなくて、私たちが歌って、演奏して、あなたが聴きたいと思って来てくれて、ライブハウスがあって、ようやく成り立つのだとMCで仰っていた。
「本気で音楽をやっている人は見たらわかる」
片桐さんの言葉通りだと思った。
きっと何事にも意志みたいなモノは、内面から滲み出てきて見えるようになるのだろう。
そういったバンドだけが残って、心が豊かになる音楽が拡がればいいなと思う。
新曲「拝啓」もしっかりと歌ってくれた。
この曲は、ボーカル片桐さんが亡き祖母への思いをつづった楽曲になっている。
聴いた人は、それぞれに思い浮かべる顔があるのではないだろうか。
家族や友人を亡くす事は、誰もが経験する事で、何年経っても寂しい気持ちは消えなかったりする。
一生会えないのなら、自分の人生なんて放り投げて、会社なんて辞めて、ずっと寄り添っておけば良かったと思う事もある。
それでも大切な人は「そんなに毎週、会いに来なくていい」なんて言っていたのだ。
その言葉に込められた気遣い、優しさ、温かさは、普段の生活の中でもいくつもあったのだと気づく事になる。
言葉は時に真っすぐであったり、時に裏の意味が込められていたりと難しいものだ。
出会いの中で「ありがとう」と「ごめんね」だけは愚直に伝えられるような人でいようと、改めて感じさせられた。
ircleもHakubiもラグーナの舞台に相応しいバンドだと思っているから、来年に期待です。
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