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開発日誌:勇者
傭兵の皆様、おはようございます
このゲームはオリジナルキャラクターを登録して人型戦闘兵器に乗せて戦えるゲームであり、そんなオリジナルキャラクターが参加できる企業の一つ、「デミメサイア社」について、本日は紹介します
デミメサイア社
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ナラティブダイバー財閥の企業の一つで、公益活動や慈善活動も積極的に行っている。比較的自由なナラティブダイバーの傘下で自由に手広く社会のために働くが、その理想はどこか混沌としている
それぞれが理想を持ち、その理想へと至る道を目指しているようであり、集団としての思惑は必ずしも一致しない。悪く言えばボランティアサークルの集まりであり、よく言えば多様性を尊重し、互いの理想に影響しないように活動している
その社訓は「勇者たる君よ、剣を取れ」
特許技術
デミメサイア社は「限界突破」という機構を特許として取得し、他の社が使用することに制限を課している
限界突破はその名の通り、エネルギーの高まりとともにスペックを越えた性能を発揮するというシステムであり、その反動はなく、高いレベルで攻撃、防御共に高性能を示す
一点突破する性能はビーストシャフトのエネルギー暴走に劣るが、安定性においてはそれ以上の特筆すべき性能と言える
筆頭戦力
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アッシュ・ホーリー。呪われた子と言われた男。デミメサイアに所属する前は、気弱でいつも怯えていた少年だった。教導施設で過ごす中で、誰とも交流せず、誰とも笑わず、誰からも逃げて生きていた
本質的には彼はそのままなのかもしれない。実際、彼の戦闘スタイルは慎重かつ地味で、堅実である。危なくなったらすぐに逃げ、ミッション達成よりも生存を重視する
ある事件をきっかけに、彼は教導施設を追い出され、デミメサイアの所有となり、そのまま就職し……今に至る
同じく教導施設にいた少女――今ではその名を覚えているのもアッシュしかいないが――少女が「発現」した性能は特筆すべきものだった。失われたデータベース「ロストサマー」接続能力の開花である。話が動くのは早かった。教導施設から「転校」することとなるのは次の日だった。少女はアッシュに助けを求めた。転校した先に何が待っているか、知っていたからだ
アッシュは教導施設では操縦技術において強者であり、少女とも幾度か話した程度だったが、藁にもすがる思いだったのだろう。アッシュははじめは何もできなかった。できなかったが――激しく苦悩した
何もできず、転校していく少女から目を逸らすことしかできなかった自分を恥じ、大いに悔やんだ。安寧か、勇者となるか――勇者となった先に、未来はない。しかし、安寧の先の未来に一体何があるのだろうか?
次の日、アッシュは教習用グレムリンの中にいた。恐ろしくて、機体を動かし少女を助けることはできない。できないが、黙ってベッドに横になっていることもできない。激しく悩み、宙ぶらりんになった結果逃げ込んだのは、操縦棺だった
操縦棺にふと、ひとりでに電源が入る。モニターに文字が映される
「どうしたい?」
謎や不思議を無視して、アッシュは震える声を絞り出した
「助けたいよ」
「ならば、グレムリンは応える。君の思念のままに」
「君は……」
「narrativeDiver」
次の瞬間、グレムリンは暴走状態に陥った。ひとりでに各部のスイッチが入り、前進を開始する。アッシュは最後の瞬間、もうどうにでもなれと、動き出した。少女を連れ去った車を追ってブースターで飛ぶグレムリン
「後方、接近するグレムリンが!!」
「情報がバレたのか……!? ロストサマー接続を急げ!」
「被検体が損傷する可能性が……」
「奪われるよりはマシだ。急げ!!」
アッシュの目の前で急停止する、研究車両。アッシュは訓練用ライフルを構えて、車両ににじり寄る
「止まれ、止まってるか……女の子を渡せ!」
静かすぎる
アッシュは拳銃を手に、グレムリンのハッチを開ける。車のドアが開いた。誰の気配もない。恐る恐るのぞき込む。その中は、血だまりだった
何か生き物が爆発したような血だまり。アッシュはめまいを覚えた。遅かったのだ。何もかもが……研究車両のモニターに文字が打たれる。今まさに、文字が打たれている!
”来てくれたんだね、アッシュ”
「何も間に合わなかった。遅れすぎたよ」
”遅くはないよ。私も今来たところだから”
”私は、ロストサマーとひとつになった……”
「そんな……僕は一人になってしまった」
”一人じゃないよ、アッシュ。私はここにいるし、あなたもそこにいる”
”あなたがそこにいてくれたから、私はどこにも行ける”
「僕はもう、どこにも行けなくなってしまった」
”どこへだって行けるよ。どこへだって、私はいるから”
モニターの電源が落ちる。だが、少女の気配をどこかに感じる。そんな出来事があった。そしてアッシュは教導施設を追放され……ある日、デミメサイアのエージェントが彼の前に現れた
エージェントは、アッシュがロストサマーに接続する物理キーとなる、などと言っていた。それが少女との繋がりを意味するのだろう、そう感じた
たまに、少女からのメッセージが彼のグレムリンのモニターに映るのだ
”アッシュ、幸せになりなよ。恋をして、夢を叶えて、笑おうよ”
”アッシュ、あなたの行く先にどこへだって、私はいるから”