2024年|オランダのSearch Year Visa(オリエンテーションイヤー許可証)申請ガイド―申請の実体験から書類準備まで―
なぜオランダのSearch Year Visaを申請したのか?
2023年6月、職場での人間関係に悩まされ、毎日怒りを感じる日々を過ごしていました。そんな不健康な環境にいた時、以前日本で知り合った友人が、あるPodcastで聞いたオランダの「Search Year Visa」について教えてくれました。その時は特に気にも留めていませんでした。
2024年2月、新しい職場でも私の専門性が尊重されないことに悩み始め、休職して海外で新たな経験を積むことを考え始めました。当時、多くの国のワーキングホリデービザの募集がすでに締め切られていましたが、アイルランドには抽選も年齢制限もない「25+8ビザ」という制度があることを知りました。このビザがあれば、正式に滞在・就労ができ、英語環境で生活できることに魅力を感じ、申請を決意しかけていました。しかし、先輩方の体験記を読んでいくうちに、アイルランドの長雨の多い気候や深刻な住宅不足の問題を知り、次第に躊躇するようになりました(当時、オランダにも同じような気候や住宅事情の問題があることを知らなかったのです💦)。
2024年2月1日の旧正月前夜、ふと友人から聞いていたオランダの就職活動ビザのことを思い出しました。調べてみると、2024年が私にとってこのビザを申請できる最後の年だと分かり、これは運命的なタイミングだと感じました。いつも物事を後回しにしがちで、締切が迫らないと動き出せない性格の私ですが、この「ラストチャンス」という状況に、むしろ心が躍るのを感じました。成功するかどうか分からない挑戦ではありましたが、その不確実さがかえって私の好奇心を刺激し、「やってみなければ分からない」という思いで申請に踏み切ることにしました。
オランダのSearch Year Visa(オリエンテーションイヤー許可証)とは?
前置きが長くなりましたが、ここからオランダの就職活動ビザについて具体的に説明していきます。
オランダ移民帰化局(IND)によると、就職活動ビザ(オランダ語でzoekjaar)は、EU圏外の学士号・修士号取得者、および研究者を対象に、最長12ヶ月のオランダ滞在を認める制度です。このビザの特徴は、別途就労許可を取得することなく、求職活動や就労が可能な点にあります。
つまり、このビザを取得すれば、オランダに合法的に滞在でき、正社員として働くこともできるのです。これがワーキングホリデービザとの大きな違いです。INDの公式サイトでは、以下のように明確に区別されています:
実際、オランダの企業の求人情報には「ワーキングホリデービザ保持者不可」という条件がよく見られます。一方、就職活動ビザにはそのような制限がないため、オランダでの長期滞在を考えている方に特に適しています。
オランダのSearch Year Visa(オリエンテーションイヤー許可証)の申請について
まず、オランダの大学(学士・修士課程)での留学経験がない場合の申請条件を説明します。
申請に必要な条件:
有効なパスポートを所持していること
犯罪歴がないこと(申請時に宣誓書の提出が必要)
世界大学ランキング(Times Higher Education、QS、Academic Ranking of World Universities)で上位200位以内に入る教育機関で、修士号、博士号、またはポストマスター課程を修了していること
※重要:卒業または学位取得時点で、自身の卒業校が上記3つのランキングのうち、少なくとも2つで200位以内に入っている必要があります
※教育機関での使用言語について:
英語またはオランダ語で授業が行われていた場合:追加の語学要件なし
上記以外の言語の場合:以下いずれかの英語力証明が必要
IELTS(AcademicまたはGeneral Training):6.0以上
TOEFL iBT(従来型・ペーパー版):80点以上
TOEIC:Listening & Reading 865点以上、かつSpeaking & Writing 335点以上(2024年10月時点の換算基準)
申請資格の確認は、実は思ったより簡単です。まずは上記3つの世界大学ランキングのウェブサイトにアクセスし、自身の卒業年度と母校の所在国を選択してください。そこで、少なくとも2つのランキングで200位以内に入っていれば、この条件はクリアです。
申請に必要な書類 ― IDWによる学歴認証について
申請資格の確認が済んだら、次は必要書類の準備です。世界ランキング上位200位以内の教育機関を卒業していても、ベルギーの大学を除き、すべての高等教育の学位証明書は、オランダ国際教育協力機構(Nuffic)による評価を受ける必要があります。
修士号取得者の場合、評価に必要な書類は以下の通りです:
学士号の学位記(大学卒業証書)のコピー
大学の成績証明書のコピー
修士号の学位記(大学院修了証書)のコピー
大学院の成績証明書のコピー
パスポートまたは在留カードのコピー
提出書類が、オランダ語、英語、ドイツ語、フランス語以外の言語で発行されている場合は、公証翻訳が必要です。ただし、大学が公式の英語版文書を発行している場合は、公証翻訳は不要です。その場合、原本のコピーと大学発行の英語版文書のコピーを提出するだけで構いません。
IDWの申請から認証取得までの実際の時間経過をお伝えしますと、私の場合は2024年2月8日に申請を提出し、3月1日に最初の連絡を受けました。その後、日本の修士号の英訳版を追加提出し、2024年3月8日に学歴認証の承認通知を受け取りました。コロナ禍が落ち着いたこともあり、IDWの処理はかなりスピーディーでした。
ここで重要な注意点があります。私は当初、就職活動ビザは卒業年から数えて3年以内の年であれば申請できると思い込んでいました。しかし実際には、正確な日付で計算する必要があります。例えば、2021年3月24日に修士号を取得した場合、オランダ大使館への申請期限は2024年3月24日となります。この期限を見落とさないよう、しっかり確認することをお勧めします。
申請に必要な書類 ― 英語資格証明について
次に英語資格証明についてお話しします。私の場合、英語で授業を行う大学の卒業ではなかったため、英語能力試験のスコアを提出する必要がありました。
ここで気づいた方もいらっしゃると思いますが、私がIDWの認証を受けたのは3月8日で、申請期限は3月24日でした。実は当初、申請完了は難しいだろうと思っていました。というのも、ネット上では「IDWの認証には非常に時間がかかる」という声が多かったからです。しかし幸運なことに、私の担当窓口は非常に効率的に処理してくださいました。
IDWの学歴認証を受け取った時は、喜びと同時に新たな不安も生まれました。前回英語試験を受けたのは高校生の時で、残り2週間という短期間で英語試験を受けて結果を受け取る必要があったのです。そんな中で救いとなったのが、IELTSのコンピューター版テストでした。このテストは受験後3〜5日で結果が出るという大きな利点があったのです。
申請に必要な書類 ― 申請書の記入について
申請書は指示に従って記入すれば、特に難しい部分はありません。ただし、最後の「MVVと在留許可」の項目では、オランダへの入国予定日と在留カードの受け取り機関を記入する必要があります。
申請が承認された場合、IND(移民局)の担当官から、入国日と受け取り機関の確認メールが届きます。後で変更可能なため、この部分は概算の日程を記入しておけば問題ありません。
申請に必要な書類 ― 提出書類一覧
オランダ大使館への申請時に必要な書類をまとめました:
証明写真 2枚
パスポートのコピー(顔写真ページ、スタンプが押されているページすべて)
世界大学ランキング上位200位以内の証明(該当ウェブページをPDF保存したものでOK)
IDW学歴認証書のコピー
最終学歴の卒業証書のコピー(私の場合は日本語版と英語版の両方を提出。学位取得日が記載されているものが必要)
英語能力試験の証明書のコピー
これらの書類を提出すると、審査後に受領書とV番号が記載された申請書のコピーが手元に戻ってくるはずです。私の場合は台湾のオランダ貿易産業事務所で申請を行ったため、日本での具体的な手続きについては確実なことが言えません。日本在住の方が申請をお考えの場合は、事前に在日オランダ大使館に確認されることをおすすめします。
申請費用について
オリエンテーションイヤービザの申請費用は年々上昇しています。2023年は210ユーロでしたが、2024年には228ユーロに値上がりしました。
INDは毎年料金を改定しているため、2025年以降にこの記事をご覧の方は、INDの公式ウェブサイトで最新の料金をご確認ください。確認の際は、国籍を入力し、「居住許可証なし」「BSNなし」を選択した上で、「Process and costs」の「Pay for application」セクションをご確認ください。
申請費用の支払い後、銀行から「外国送金依頼書」の控えが発行されます。この控えは他の申請書類と一緒にスキャンして保管しておくことをおすすめします。
申請書類の提出方法
多くの方が書類を郵送で提出されていますが、私は追加の費用を抑え、郵便物紛失のリスクを避けたいと考えました。申請書類をスキャンしてINDにメールで提出することにしました。
メールには必ず申請番号(Application number)とVナンバー(V Number)を記載する必要があります。以下に、私が使用したメールの件名と本文のテンプレートを参考までに共有させていただきます:
このようにシンプルな内容で問題ありません。メール送信後は待つだけとなります。INDからの受付確認の返信はありません。
私の場合、2024年3月27日に申請を提出し、6月13日に「オリエンテーションイヤービザが承認された」という通知を受け取りました。約90日かかりましたが、これは通常の処理期間内です。90日を過ぎても連絡がない場合は、INDに問い合わせることをお勧めします。
申請にかかる期間について
最後に、私の申請準備から取得までの具体的なスケジュールを共有させていただきます。
2024年2月8日:IDW(学歴認証)の申請提出
2024年3月8日:IDW学歷認証の承認取得
2024年3月13日:IELTSコンピューター試験受験
2024年3月15日:IELTS成績取得
2024年3月20日:台湾のオランダ代表部へ申請書類提出
2024年3月27日:申請料金の支払いとINDへの申請書類提出
2024年6月13日:INDから承認通知受領
私の場合、期限の2ヶ月前から申請の準備を始めましたが、余裕を持って4〜6ヶ月程度の準備期間を設けることをお勧めします。特にIDWの審査期間は予測が難しく、申請から承認まで2ヶ月近くかかったケースも多く報告されています。
オランダのSearch Year Visa(オリエンテーションイヤービザ)は誰に向いているか?
最後に、このビザが誰に向いているのかについてお話ししたいと思います。
私自身は、就職目的というよりも、ヨーロッパでの生活を体験したいという思いでこのビザを申請しました。それまでヨーロッパを訪れたことがなく、オランダは欧州で最も英語が通じやすく、治安も良いと聞いていたことから、今までの快適な環境を一歩抜け出し、休養と学びを兼ねたギャップイヤーを過ごそうと決意しました。
ただし、オランダはドイツと比べて物価が高く、申請過程でも学歴認証や英語認定など、様々な費用がかかります。そのため、ある程度の貯金があるか、安定した収入源がある方に向いていると言えます。経済的な負担が大きくなりすぎないよう、事前の資金計画は重要です。
多くの方は就職を目的としてこのビザを申請されると思います。現地の友人によると、オランダの就職市場は比較的厳しい状況にあるようです。特に、人文科学、法学、商学系のバックグラウンドをお持ちの方は、英語に加えてオランダ語、フランス語、またはドイツ語のスキルがあると、就職の機会が広がるでしょう。
現在、私はオランダで生活を始めています。この記事を読んで、オリエンテーションイヤービザの申請に不安や疑問をお持ちの方は、ぜひコメント欄でご質問ください。皆様がオランダでの新生活を順調にスタートできることを願っています!
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