国民に戒厳を課すには相応の理由が必要
朝晩は冷えるものの昼には温かい日が続いています。コートを着る時間はそれ程長くないとは分かっていますが、それでも着て出るのは致し方ないですね。
さて、……。
特に私に連絡はなかったことだけどw、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日午後10時半に非常戒厳を宣布した。
これに対して韓国の国会は4日未明に本会議を開き、非常戒厳の解除要求案を出席議員190人の全会一致で可決、爾後閣議を経て、4日の4時半に尹大統領は非常戒厳を解除した。
これらは深夜帯の6時間のできごと。私的には夜中の寝ている間に何かあったんだな、くらいの感覚。でも、韓国国内では大騒動になったことと思われる。
率直に申し上げて、本件は一国の大統領の振る舞いとしてあまりにも軽率かつ無様だったと感じている。
韓国の非常戒厳がどのようなものなのかは不詳。だけど、基本的にはかつて日本でも発令された戒厳令のようなものだろう。
だから、それを宣布するからにはそれなりの理由がいる。基本、戦争や内乱、テロ等、通常の治安組織だけでは秩序維持ができないと判断した時に、やむなく軍の力を用いて秩序を保つ最終手段であること、だからこそそのために国民の自由や権利に対して大きな制限をかけることを踏まえれば、理由が要るのは当然である。
しかるに尹大統領は、来年の予算案に合意しない野党側の対応等を理由に「国政はまひ状態にある。憲政の秩序を守るために非常戒厳を宣布する」ことを選択した。拍子抜けするくらいの軽い内容で、これが宣布理由になるとは到底思えない。
そもそも尹大統領はかつて検事総長だった人物。法律の専門家である。法律にはかなりの知見があるはずなのに、このような無理筋の法的対応をしたことに、率直に驚きを禁じ得ない。
韓国も日本同様少数与党で、予算案審議等で国会運営に苦しんでいたようである。でも、だからと言って国の最高権力者がこのような短絡的な思考に救いを求め、一般的な感覚に照らして最悪と思われる決断をしてはなるまい。
軍が動き始めた中、我が身の危険を省みず毅然と対応した国会議員達の態度は、立派だったと思う。
既に国会には野党から大統領の弾劾訴追案が出されている。ハードルは高いけれど、与党の一部が賛成すれば可決される可能性がある。可決されると大統領の職務停止⇒憲法裁判所による180日以内の罷免判断となる。罷免となれば大統領選が行われる。
今回の件は、私たちも他山の石として捉えるべきもの。有事の際に国民の自由や権利を制限しようという動きは、これまでもあったからだ。
現代日本には戒厳に関する法律はない。だから、このようなことは起こらないと言える。それでも、緊急事態には対応できる法律はある(事態対処法、災害対策基本法等)。
世界がきな臭さを増している昨今、何をどこまでなら認めてもよいのか、頭の体操くらいはやっておくべき。私はそう考えている。
お読み頂き、ありがとうございました。