こんなん書いてましてん『居場所』(薄桜鬼 沖田 千鶴)
今日は朝から騒がしかった。
千鶴は少し疲れていた。
いつも通りに洗濯や雑務を手伝っていた・・・はずだった。
でも、今日はいつもより頼まれる事が多くてバタバタと屯所内を走り回った。
やっと今、開放されたところだった。
縁側で一人ぼ~っと座り夕日を眺めながら呟く。
「忙しかったけど、少しでも役にたちたいもの。」
「へぇ、君は自分が役にたってると思ってるんだ。」
背後から声がする。
千鶴はビクっと体が跳ねる。振り返るとやっぱりその人だった。
「おっ沖田さんっ!!いつのまに。」
そう、声の主は新選組一番組組長沖田総司だった。
いつも気がつくと沖田は千鶴の背後にいる事が多い。
それも、足音とか気配とか感じる間もなく。
千鶴が鈍いのではなく、沖田が気配を消す事に馴れているからだろう。
「君は僕達の役にたってるって思ってるの?」
意地悪な笑みを浮かべ沖田は問う。
「いえ・・・それは・・・。」
「どうなの?ちゃんと聞きたいなぁ、君の口から。」
「お役に立ってるなんて思ってません。ただ、みなさんのお手伝いができればそれは嬉しい事なんです、私にとっては・・。」
「ふ~ん、そうかぁ。単に居場所が欲しいからどんな頼まれ事でも引き受けるわけだ君は。」
沖田の言葉に千鶴の胸がざわつく。そうかもしれないと。
「ねぇ、千鶴ちゃん。」
「はっ、はい。」
「君、自分の体の事とか疎いみたいだね。」
「へっ?」
「居場所を見つけたいのは、まぁ、百歩ゆずってわからないこともないけどさ無理して体壊すほうがはっきり言って迷惑なんだけど。」
沖田の言ってる意味が理解できないわけじゃない。でも、千鶴は自分の体に異変があるとは思わない。
「だっ大丈夫ですよ。私、何ともないですよ。」
「素直じゃないと言うか、疎いと言うか。君、今すごく熱っぽい顔してるんだけど?」
そういうと沖田は千鶴の額に手を置く。
「あっあのっ沖田さん?!」
「ほら、やっぱり熱があるじゃない。こんなとこで外眺めてる場合じゃないでしょ。さっさと部屋に入って寝てなよ。」
「でもっ、まだ夕餉の支度の手伝いもありますし。」
「そんなの、君がいなくてもできるから心配いらないよ。それとも、君がいなかったら僕達は夕餉の支度もできないとでも思ってるの?」
また、沖田の言葉に心が沈む。
「いえ、そんな事ないです。」
「だったら部屋に戻りなよ。土方さんには僕から言っておくから。」
千鶴は沖田の言葉にしぶしぶ従う。
心の中はぐちゃぐちゃのまま、自分の部屋に戻ると布団を敷いて横になる。
「じゃぁ、僕は土方さんのところにいってくるよ。大人しく寝ててね。うろうろされて他の隊士達にうつされても困るしね。」
「はい・・・。」
沖田は千鶴に念おしすると襖を閉めていってしまった。
熱があると言われて気づかされるとだんだんと具合が悪くなっていくのがわかった。
「何やってるんだろう私・・・。」
千鶴は熱があがっていく中うとうと眠りにおちていった。
続く・・・・。