某ゲームの妄想恥文
君と共にいきること(薄桜鬼短編小説 沖田 千鶴)
「千鶴」
優しく呼ぶ声。声の主は千鶴の背後に近づきギュっと後から抱きしめてきた。
「そ、総司さんっ、あぶないですよ、お湯かかるとこだったじゃないですか。」
「だってさ、急に君を抱きしめたくなったんだからしょうがないでしょ。」
そう言って総司は千鶴が困っているにもかかわらず離してくれない。
最近の総司はやたらと千鶴に触れたがる。
そんな総司に千鶴はにわかに不安を覚える。
”変若水の効果は薄れて羅刹の衝動も起きない。
でも、彼の体は死病に侵されている。”
「ねぇ、千鶴。」
「はい?」
「僕が君と生きる事を望んでいるように君も僕と生きる事を望んでくれてるよね。」
総司の声が震えている。
泣いてしまいそうなほどに切ない声で言う。
「もちろんですよ。私は貴方と共に生きる事を選らんだんです。今もその心に変わりは無いです。」
千鶴が確かな声で答えると総司の抱きしめる力が少し強まる。
「僕も君と共に生きたいと思ってる。でも・・・。」
「総司、さん?」
「・・・っ・・・でも・・僕はっ・・・君を・・・・。」
千鶴の首元に雫が落ちる。
千鶴は総司の力が緩んだ隙に体を反転させて彼の方をみた。
総司は泣いていた。
彼もまた、いつ自分がどうなるかわからない運命にある事を不安に思っていた。
「総司さんっ」
千鶴は今度は逆に総司にすがる。
「総司さん、泣かないで下さい。私は貴方を選んだ時からどんなに心に大きな穴を開けられようと貴方と共に貴方が生き続けるかぎり傍にいるって決めたんです。」
「ち…千鶴っ。」
総司は千鶴を再び正面から抱き締める。
「ごめんっ…君に寂しい思いをさせてしまう。僕をっ…っ…許してっ・・・。」
「許します。私はどんなに悲しくても貴方を憎む事なんてできません。だって、私は貴方を愛しているから。」
「千鶴・・・。そんな事言って・・・君はっ・・・僕を泣かせるんだから・・・。」
総司は千鶴の肩に顔を埋めて声を殺して泣く。
千鶴は自分も泣きそうなのを堪えて総司の背中を子供をあやすようにぽんぽんと叩く。
”一番生きていたいと思ってくれているのは彼なのだ。
自分のために少しでも長く生きていたいと願ってくれている。
私は貴方が少しでも心安らかでいられるように力をつくそう”
しばらくの間、総司は泣いていたがやがて顔をあげると千鶴をまっすぐにみつめる。
「僕は君が好きだよ。とても愛してる。君を泣かせてしまうことになっても君を手放す事なんてできない。君が僕と共に生きると言う事は辛い思いを抱える事になるけどそれでも君と共に命あるかぎり生きていきたい。」
「私もです。貴方と共に生きていきたいです。どんなに悲しみに包まれる事になっても私は覚悟しています。」
「君は・・強くなったね。」
「総司さんに鍛えられましたから。」
千鶴がそう言って微笑むと総司は声をあげて笑う。
「あはははっ、そんな事言ったら僕は僕が死ぬまで君をからかい続けなくちゃいけないじゃない。あははははっ。」
「そうですよ。私を強くしてくれないと困ります。」
「うんっ、そうだね。僕は君を強くしてあげる。それが君といきていく僕の今できる事だから。」
そう言うと総司は千鶴を抱きしめる。
「ありがとう、千鶴。」
「はい。」
千鶴が返事をすると総司は千鶴の顎に手をかけ優しく啄ばむように口づけをした。
唇がはなれると総司はにこりと笑い言う。
「ああ、お腹すいちゃったなぁ。早くご飯つくってよ千鶴。」
「んもうっ、総司さんが邪魔するからです。もう少しまってください。」
「ちぇっ、しょうがないなぁ。」
総司はにこりと笑うと千鶴が料理を作る姿をじっとながめるのだった。
END
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