ガスコンロで「手を離すと火が消える」という症状について
東北にある某田舎町で設備屋をやっている鈴木だ。今回はガスコンロの故障の中でも非常に多い「手を放すと火が消える」という症状について解説したい。
ちなみにこの症状は卓上コンロもビルトインコンロも原因が同じであることが多く、結論から言うと「ユーザーの方で調整して応急処置をすることが難しい」ことが多い。
もしかするとユーザーの方で直せる可能性がある部分を含め、ここではガスコンロで「手を離すと火が消える」と言う症状の原因と対策について書いていく。
ガスコンロで手を放すと火が消える時に起こっていること
ガスコンロでは点火させようとした時にガスの通路が開き、熱電対という部品に火があたることでガスの通路を開けたまま保持する作りになっている。
1.点火スイッチを押すとガス通路部が開く
2.火花が飛んでいるところにガスが出てきて火が付く
3.熱電対に火があたって電気が発生する
4.熱電対から発生した電気がマグネットに供給され、そのマグネットが吸着してガス通路を開けっ放しにする
こんな感じで火が保持するような流れだ。この順番のどこかに不具合があると、手を離すと火が消えるという症状に繋がってしまう。
今回問題になっている症状は「手を離すと火が消える」だから、最初の「ガス通路部が開く」という部分と「火花が飛ぶ」という部分は問題なさそうだ。それでは3と4について詳しく見ていこう。
熱電対に火があたって電気が発生する
まず熱電対についてだが、ガスコンロのバーナー付近には2つほどガスコンロ内部から飛び出ている部品が確認できると思う。
1つはスパーカーとか点火プラグと呼ばれる部品で、点火スイッチを押した時に「パチパチ」とか「チチチ」と音を立てながら火花を飛ばす部品だ。
そしてもう1つが、熱電対とかサーモカップルと呼ばれる部品である。この部品に火があたることで電気が発生して、先のマグネットを開きっぱなしにさせるため、まずこの部品に火があたっていない場合は問題外である。
料理を拭きこぼしてしまった際にバーナーキャップが目詰まりし、熱電対がある部分だけ火が出ていないとか、ゴミなどが原因で火のカタチに乱れがあり、熱電対に火が当たっていないということがないかを確認して欲しい。
ちなみに火が熱電対にちゃんと当たっているのに、手を離すと火が消えてしまうという場合は、熱電対の故障によって「火が当たっているのに電気が発生していない」という可能性がある。
これは実際に熱電対に火を当ててテスターで電圧を調べればはっきりするが、ここはプロに任せた方がいい。ユーザー自身でどうにかできるとすれば「熱電対にちゃんと火が当たっている」ということを確認するまでだ。
マグネットがガス通路を開けっ放しにする
熱電対に火が当たることで電気が発生するという仕組みは理解してもらえたと思うが、熱電対が悪くて電気を発生させられないパターンもあれば、逆に「マグネットが電気を受け取っているのに吸着できていない」というパターンもある。
スイッチを押した時や手でボタンを押している時は力で抑えているからガス通路部が開くが、手を放した時に本来なら磁力で開けっ放しにしなきゃいけない部分が、マグネットの磁力が弱まっているせいで閉じてしまうというケースだ。
この場合は磁力の強いマグネットに交換してやれば、ちゃんと吸着できるようになり解決するだろう。
修理費用は高くないが注意は必要
ちなみにこの熱電対とマグネットはそこまで高くない部品だ。ただしマグネットはマグネットだけを交換するということはせず、マグネットを含むブロックごと交換するケースが多い。
それでも部品代はそんなに高くないことが多くて、機種にもよるがマグネットのブロック部品が5000円~6000円程度だろうか。熱電対は1500円前後が多いと思う。それに出張料と作業料を足して、高くても20000円前後になることが多いはずだ。
ただし、この熱電対とマグネットはバーナーの数だけ搭載されている部品のため、今回高火力バーナーの部品を交換したとしても、次は別のバーナーで同じ部品が壊れてしまう可能性がある。
おそらく大抵の家では1番使う箇所(キッチンに近い高火力バーナー)が先に壊れてしまうんじゃないかと思うが、次はもう片方のバーナー部で故障が出ることは想像に容易い。
最後に
今回の症状については、筆者のブログにも写真付きで掲載している。もし文章だけでイメージが湧かないという読者がいたら、覗きに来てもらえると嬉しい。
もし「ガスコンロで手を離すと火が消えてしまう」という症状で修理をする場合は、修理の金額プラス「次に他の部分でも似たようなことが起きるかもしれない」という可能性を考えて、検討することをおすすめする。
場合によっては騙し騙し使うことにして、いよいよ他のバーナーもダメになってから修理や買い替えを検討するというのもアリだろう。ぜひ、参考にしてくれ。
【参考記事】