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ぼくはくま | #青ブラ文学部
僕はハート柄の青くて小さな熊の人形だ。
体は柔らかくてふにゃふにゃしているから、お座りだって簡単さ。
結婚式の二次会で行われたビンゴ大会の景品として景品の山の中にいた僕は、どんな人のところへ行けるのか楽しみにしていた。
大勢の中、七番目に「ビンゴ!」と声をあげたミサキさんは小さな僕を手にし、
「幸福の熊くんだわ♡」
と大喜びしてくれたんだ。
◇
ミサキさんの家へ連れていかれた僕は、テレビの下にちょこんと座らされている。
テレビの下にいるから、残念ながらテレビを観ることは出来ないけれど、音だけは聞こえているよ。ミサキさんは映画ってものをよく観ているみたいだ。テレビを観ながら笑ったり泣いたりしているミサキさんを見つめていると、僕は幸せな気持ちになるんだ。
「二次会でもらった熊くんだもの。私も幸せになれそうな気がするわ」
ミサキさんが僕を手に取り、そう呟いたことがある。
僕はミサキさんのお気に入りなんだなと実感した瞬間だった。
◇
ある日、ミサキさんと一緒に見知らぬ男性がテレビの前に座ったから、僕はすぐにわかったんだ。ミサキさんに恋人ができたんだなって。それで嬉しくなって万歳をしようとしたら、コトンと横に倒れてしまった。
「大丈夫?!」
ミサキさんは僕を手に取り、その男性にこう言ったんだ。
「この子は私に幸せを運んでくれた熊くんなのよ」
◇
あれから数年間、テレビの下にいたけれど、とうとう家を出る日がやってきて、それはミサキさんの結婚披露宴に出席するという任務だったんだ!僕は花嫁姿のミサキさんの前に座らされ、招待客の方をずっと向いていたから、あまりミサキさんのことを見れなかったのは残念だったな。
ミサキさんは男性と引っ越したから、テレビの下から見える景色は変わったけれど、今でもミサキさんの笑顔が見えるし、男性もとてもやさしいから僕は幸せだよ。
◇
僕はハート柄の青くて小さな熊の人形なんだ。僕を大切にしてくれる人には幸せが訪れるって言われているらしいよ。
青ブラ文学部の企画に参加します。
山根あきらさん
よろしくお願いします。