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『バチェロレッテ』杉ちゃんとの未来 乗り越えられない価値観の差

バチェロレッテに関するネタバレを含むため、最終回目前までご覧になっていない方は引き返してください。


前エントリーではもう一人の最終候補者、黄さんと萌子氏との噛み合わせについて若干辛目に書かせて頂いた。では、この企画を通して超自然的に魅力が開花している杉ちゃんこと、現代美術家・杉田陽平氏とならば、萌子氏は幸せになれるのだろうか。

二人の相性を見る前に、バチェロレッテの色々な方の感想記事を読みながら興味深いと感じるのが、杉ちゃんへの男性視聴者と女性視聴者の評価のギャップである。番組内でも杉ちゃんが最終盤まで他候補者男性から「戦力外」だろうと舐められきっているように、男性視聴者は総じて杉ちゃんが男性として愛されているイメージが掴みにくいらしい。人間的には魅力的で、面白みもあって、バチェロレッテへの本気度も高い点について一定の評価はしているものの、何ならバチェロレッテの「好感度維持枠」として残されていると思っている人が多い。キャラクターや動物を愛でるように、杉ちゃんが女性票を集めていると。

声を大にして言いたい。「杉ちゃん、めちゃくちゃセクシーやんか!!」と。「愛とは、花びら」発言あたりから個人的は身悶えするほどはまっているわけだが、言葉一つ一つがずしんと重みをもって、お腹に落ちてくる。難しいことを言っているようで、すごくシンプル。独特なようで、普遍的。台詞だけでなく、普段は目線を合わせて人と話すのが苦手な彼が、多少無理しながらも目を見て話そうとする姿勢や、実家の家族との愛と尊敬に満ちた関係性など。彼のことをもっと知りたい、教えてほしい、という気になる。そして彼をちょっと困らせてみたい欲を掻き立てる!杉ちゃんへの女性票の高さは、「なんかすごくいい人」みたいなつるっとした評価ではなく、「子宮の底から好き」的な女性的業の詰まった熱量の高い本音である。杉ちゃんの雄としてのパワーにピンときていない男性視聴者とナインティナインのお二人に強くお伝えしておきたい。

さて、本題は萌子氏との相性と、結ばれた場合の予測されうる将来である。

黄氏とは上手くいかないと断言するなら、杉ちゃんを萌子とのパートナーとして推しているかというと、実は複雑な思いでいる。前回の記事でも書いているように、萌子は黄氏と同様に、欲しいもの、魅力的なもの、自分にないものはたゆまぬ努力によって獲得しようとするタイプだ。自分が憧れる何かがあったとき、そこに壁があるとしても、何とかして打破し、目的を達成する方法を見つけ出そうとする。そのこと自体は非常に尊敬できる姿勢だし、実を言えば私もそちらのタイプに近い。というより、ほとんど全ての人間は、この価値観が最も正しく、建設的で、生産的だと考えている。影の薄かったサーファー、萩原氏との華道デートの後のツーショットにて、突如「そのアスリートの教育を変えたら良いんじゃない?」と萩原氏がある程度折り合いをつけながらハッピーに生きようとしている現実的制限を取り上げて、改善命令を出したのが良い例だろう。リミッターを受け入れる事を許さないのである。それこそが彼女が信じる正義なのだ。

本企画への所信の一つとして「この世界の美しい瞬間をすべて見て、終わりたいんです。この人生」と萌子が述べているが、全ての美しいものに実際に触れ、味わい尽くすのだ、という人生観が見て取れる。

対して杉ちゃんは、美しいもの、魅力的なものに対して逆に距離をとる。手に入れられないからこそ「憧れ続ける」というスタンスを取る。遠くから眩しそうに見つめながら。繰り返しになるが、台湾でのデートにて「愛とは?」という問いに対して、萌子はランタンに「生きる」と書き、杉ちゃんは「花びら」としたためた。萌子の食などを含めた生活すべてが愛だというこれまた超実践的な(萌子らしい)答えは、萌子は「自分なりのアプローチで既に愛を獲得している」という前提からきているが、杉ちゃんは「簡単に触れられないもの、ままならないもの」として愛を捉えた。美しいものに憧れ、触れられないものだからこそ、想像を膨らませ、表現する。これこそが杉ちゃんの芸術家としての価値の源泉であり、彼の抗えぬ魅力である。

しかし、そんな杉ちゃんが恐らく初めて、「福田萌子」という眩しい一人の女性に対して、全身全霊の努力でもって、手に入れようと奮闘している。彼はそんな自身の変化に対して「毎日成長している」と実感し、「萌子さんと一緒なら想像できないような明日が来る」と期待感を口にした。番組を見ていても、彼が自信と、萌子氏への揺るぎない愛によって男性的に変化していく様子がはっきりと映し出されている。恐らくそれこそが杉ちゃんの「成長」だと目を細める向きもあるだろう。

しかし、私は少しだけ心配になるのだ。

美しいものを獲得するために、障壁を薙ぎ払い、自分を高める、その努力志向は、杉ちゃんの表現者としての魅力、眩しそうに憧れを見つめる視線の価値と比べたら、まったく凡庸で野暮なものではないだろうか、と。

もし萌子と杉ちゃんが結ばれたとして、この価値観の違いは会話の端にチリっと顔を出し、二人の溝を生むのではないだろうか。例えばサーファー萩原に言い放ったように、杉ちゃんが大切にしている憧れに対して、萌子は無粋に努力や個人の意思を貫くことの尊さを唱えやしないだろうか。

杉ちゃんと萌子氏の間に広がる価値観の差はあまりにも大きい。だからこそ惹かれる、杉ちゃんの思いは痛いほど理解できる。でも。理解しえない、むしろ交じり合ったらお互いの尖った個性と魅力が掻き消えてしまう、そういう歴然とした違いもあるのだと、二人を見ていると感じてしまう。

わー!!!どうなる!!!!でもどっちかといえば杉ちゃんを選んでほしい!杉ちゃんが一瞬でもハッピーならいいんだ!!がんばれ杉ちゃん!!


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