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保護犬を引き取る覚悟と幸せ

始めてリクをホテルに預けた。預ける前はとても不安だったが(ちなみに不安の91.4%は取り越し苦労らしい…)、穏やかな笑顔の優しい方で、安心して預けることができた。きけばペットホテルを経営する傍ら、引き取り手のない保護犬たちを何十年も引き取り続けているとのこと。最近、散歩中やドッグランで保護犬を連れた人によく出会う。多くの人が保護犬に関心を持ち、保護犬を引き取っていると思うとなんだかホッとする。保健所に収容され、飼い主をひたすら待ち続け、そのまま殺処分なんて本当に悲しい話で、一匹でも多くの保護犬に引き取り先が見つかることを心底願っている。

一口に保護犬といってもそれぞれ犬ごとに異なった過去を持ち、中には心に深い傷を負った犬もいる。すぐに新しい環境になじめる子もいるが、そういった子は、飼い主も犬もかなり苦労するようだ。が、みんなそれを承知で引き取り、愛情をかけ、一緒に暮らす解決策を探していると思うと、まだまだ世の中捨てたもんじゃないという気がしてくる。

リクの前にも2匹、保護犬を飼っていた。一代目は柴犬だった。推定5歳。名前はソラ。初めて犬を飼うし、犬といえば柴犬だろうと思い、何の予備知識もないまま、保護団体から譲り受けた。ソラは子どもにいじめられた過去を持っていたようで、子どもが近寄ると問答無用でかみついた。どうやって矯正したらよいのかもわからず、悩んでいるうちにいつのまにか子どもたちの瞬発力が増し、ソラの牙をかわせるようになっていた。結局なんだかんだ折り合いをつけながら、それなりに楽しく、10年以上も我が家で過ごし15歳で天寿をまっとうした。旅行にも行ったし、ソラの存在に癒される毎日だった。子どもたちは仕事から帰った私に、代わる代わる今日ソラがどうだったか報告してくれ、それも楽しいひと時だった。
2代目のカイチャンはとてもおとなしい子で、耳が聞こえず、後ろ脚もひきずっていた。前の飼い主は人間の食べ物を与えていたようで、体重はかなりオーバーし、胆泥症で薬を飲み続ける必要があった。体力がなく、たびたび皮膚炎にかかり、前庭疾患にもなり、うちにきて4年もたたずに、病死してしまった。寝ることと食べることと散歩が大好きで、あまり人には甘えてこなかったが、でも死ぬ間際に私を気遣ってくれていた様子がたまらなく切なかった。
そして、三代目のリク。元気だとはきいていたが、本当に元気がありあまっている。散歩のひっぱりは半端じゃない。陽気な犬で、人とも犬とも遊びたいだけなのだとは思うが、飛びつくのが危なくて絶対にリードを持つ手をゆるめることができない。先日は他の犬をみつけた途端にベランダのドアから、すっ飛んでいってしまい、その犬に怪我をさせてしまった。その後、私の方がリクを外にだすのが怖くなってしまった。散歩も他の犬に会わないかとびくびくしてしまい、わずか15分程度しかできず、リクが可哀そうで思わず涙ぐんでしまったら、リクはそんなことないよ楽しかったよっていわんばかりに、ベロを出して両足で私をとんとんとたたいておどけてみせた。一生リクに捧げようと真剣に思った。

犬は現在に生きていて、新しいルール、新しいリーダーを幸せと受け入れるそうだ。保護犬もつらい過去があっても新しい環境を受け入れ、必死で幸せになろうとしているのだと思う。切ない…。
一方、最初は馴染まなくても、愛情と時間をかけて信頼関係を築き上げた時の幸福感は半端ない。犬を世話しているつもりでも、実は犬が心の支えになっていることに気がつく。

この先もずっと保護犬を救う活動に関わりたいと、毎日リクの散歩の特訓を行っている。特訓の成果よりも私がマッチョになる方が早そうだ。

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