父、暴走。骨董にはまる。
凝り性の父。
焚き付けられたら勢いよく炎を上げる。
そう…燃え尽きるまで。
きっかけは父の実家である母屋を片付けていたときだった。
脱穀機やら、蓑笠やら、千歯こきやらが続々と出てきたことがあった。
もう使われていないものだったが、祖父母が納屋にしまっておいたものだろう。
そして、それと同時期に我が家の増築の際に古銭やら陶器などが出てきたことである。
そこから、何やら、不穏な動きがはじまった気がする。
古くて珍しいもの…つまり骨董というものに確実に目覚めはじめたのだ。
それまでは、珍しいものがあれば飛びつく程度であった。
しかし、見事に…
珍しいものを見つけ出しいかなる手段を使っても手に入れる方向に見事シフトチェンジした。
何が問題かというと…父の個人だけの趣味ならいいが、それを…押し付けてくることがあるのだ。
一例であるが…
割れたラムネ瓶(父評定価格・10万)
悪趣味極まりない金時計(父評定価格・時価←もちろん父の中では天井なしの値段である)
瓢箪のループタイ(父評定価格・5万)
その他にも混ざり物満載だと思われる純度の限りなく低そうな金の塊。
どこかで拾ったとしか思えない汚い花瓶。
などなど…実家に帰るたびに恩着せがましく渡された。
持たされたものの、どうしていいかわからない。
そう、骨董などは興味ない者にとってはただのゴミなのである。
父は形見分けのような気持ちもあったのかもしれないが、私はひとまず「大黒屋」で価値を調べてやった。
金の時計はたしかにシリアルナンバー入りだったが、あまりにマニアックな時計すぎて、価値はないとのこと。
(大抵、金色のものを渡されたときは、疑ってかかることを学んだ)
瓢箪は無言で差し返される。
混ぜ物満載の金塊は…海に沈めてしまいたい。
ラムネの瓶に関しては…こっそり実家に返した。
そもそも割れたラムネの瓶が10万もするものか。
それからもいまだに父は骨董には目がない。
いつのまにか、色んな骨董屋のかっこうのカモとなり、なぜか近所の骨董屋の店番をしていることもある。
楽しくてしようがないらしい。
本物を見る目はないが、偽物を集める度胸は抜群だ。
しかし、何が一番面倒かといえば、一度渡したこれらの品物を、思い出したように、
父が「返してくれ」と電話してくることである。
処分するに処分できないという…辛さ満載である。
そして、骨董と共に渡され、手放せずにいるものがある。
刀である。
もちろん模造刀である。
実家を出る私に 父はこの刀を差し出し、一言いったのだ。
「これを持ってゆきなさい」
は?
は?
は?
刀を持っていけと?
な、なんのために?!
(断ると面倒なので、もらった…)
流石に、刀を車に積み込んで車で高速を走っていたときには、銃刀法違反で捕まるんじゃないかと気が気でなかった。
そこからまたひと波乱ふた波乱をのりこえて我が家はおそろしい道へと踏み出してゆくのである。