夫婦不和の意外な原因:教育虐待の深刻な影響
教育虐待は、親が子どもに過度に学業を課し、過剰な成果を求めることによって子どもに心身の苦痛を与える行為を指します。この現象は、単に親子間の問題として捉えられがちですが、実は夫婦関係にも深刻な影響を及ぼすことがあります。
例えば、以下のような言動は教育虐待になる可能性があります。
朝5時に未就学児を起こして勉強させる
勉強が終わらないと深夜まで寝かさない
テストの点数が悪いと子どもにダメージの大きな罰を与える
「どうして頭が悪いの」「こんな子どもを産んだのは失敗だった」等と過酷な言葉を投げる
このような状況は、子どもだけでなく、夫婦関係にも影を落とします。例えば、一方の親が子どもに過剰な期待を寄せる一方で、もう一方の親がそれを問題視することで意見の対立が生じ、夫婦間の緊張が高まる可能性があります。また、教育虐待が原因で離婚を考えるケースも少なくありません。次は、そんな事例(あるあるを詰め込んだ典型事例)を紹介します。
教育虐待の影に潜む夫婦関係の闇
朝5時、まだ街が静寂に包まれている時間に、Aさん家の息子、5歳のケンジはすでに起床しています。彼の一日は、多くの子どもたちがまだ夢の中にいる時間から始まります。
リビングでは、米が炊けたいい匂い、そして味噌汁の鍋からは湯気。完璧な日本食の朝ごはんが用意され、まさに幸せの象徴のような食卓の風景です。
しかし、ケンジにとってはただの試練の始まり。手作りの朝食を前にして、Aさんは、「お味噌汁の具は?」「お出汁の取り方は?」。こうした質問が続きます。ケンジは、毎朝のことにもううんざり。食欲のかけらもなくなってしまいます。
幼稚園から帰宅すると、ケンジのスケジュールはお教室と復習でびっしり。彼には自由時間がほとんどありません。体操、水泳、英会話と、将来のためと称して毎日がスケジュールで埋まっています。夜の食卓でも家庭学習が続き、「カレーライスを作る材料で何が作れる?」など、絶え間ない問いかけが彼を追い詰めます。
しかし、最も心を痛めるのは、Aさんの言葉です。「どうしてできないの!」という非難は、ケンジの小さな心に深い傷を残します。彼は、毎日が試験で、毎晩が罰ゲームのように感じています。
この厳しい教育方針は、夫婦間の溝を深める原因にもなっています。Aさんの夫は、子どもへの接し方に疑問を抱いています。「やりすぎじゃないか」という彼の問いかけは、Aさんにとっては理解不能なもの。夫婦の間には、子育て方針を巡る大きな隔たりが生まれています。
しかし、ここで注目したいのは、Aさんが単なる悪役ではないということ。実は、Aさんも被害者だったのです。
Aさんの夫は、「まだ5歳の子どもにやりすぎでは?」ともっともらしいことを言います。一方で、Aさんが疲れ果てて受験を辞めようとすると、追い詰めるようなことを耳にささやくのです。
「お前、これまでにいくらかかってると思うの」
「子どもに失敗体験を植え付けるな」
「受験に失敗したら母親失格だ」
「お前のせいでバカな息子が生まれた」
「専業主婦のくせに子どものこともまともにできないのか」
Aさんの夫は、「おれは受験をやめてもいいと思う」という前置きをした上で、こんなこと言うのです。
賢明な読者の方は分かったと思いますが、Aさんの夫はモラハラ夫だったのです。こんな風に、教育虐待は、一方の親だけが悪いわけではなく、夫婦関係がとてもいびつであることが裏の要因になっていることもあったりします。