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子どもから、安全に「感染を許容」していくという議論

昨年9月、ワクチン接種率72%に達したデンマークは「新型コロナはもう脅威ではない」として、マスク、ワクチン接種証明の提示など、それまで行っていた新型コロナに関する行動制限を全廃することを発表しました。


集団免疫成立ラインと言われていた70%接種率を達成してからは、感染をある程度許容し、ワクチンを打たない人は重症化や死亡のリスクが高いが自己責任で、ワクチン接種者や若い人などリスクの低い残りの人は、感染とワクチンで随時免疫を更新していくというアプローチに切り替えたのです。
 
同じ9月、同じ北欧のスウェーデンは「子どもや若者の新型コロナ感染による入院患者は、将来的にも医療を圧迫するようなものとはならない」との評価から、子どもや若い世代の感染を許容していく方針を発表しました。
 
その後、北欧諸国もほかの国と同様、感染力の極めて強いオミクロン株に見舞われ、さまざまな批判も被害も出ましたが、けっきょく医療が崩壊することはありませんでした。この冬についても、「感染者は増えても、医療がひっ迫することは無いだろう」として、現段階では行動制限を戻す予定のない旨を発表しています。

黙食にマスク…不動の「行動制限」偏重


 一方の日本では、北欧から1年遅れの今でも「安全に感染を許容していくこと」に関する議論が一向に進んでいません。
 
国も市民も「経済か行動制限か」「コロナは風邪か脅威か」の二択で考える単純論から抜け出せていない印象です。
 
先日もツイッターで「日本の学校では子どもの黙食とかマスクって、まだ続いているんですか?」と投稿したら、コロナはただの風邪だとマスクにもワクチンにも反対している人たちから、「今さら逆サイドに寝返ったのか!」とか「それでもワクチンは勧めるのか」といった批判の嵐が殺到して驚きました。
 
国は国で、大人数での会食や大規模イベント参加などを控えるよう要請するための新しい宣言をまた作ると言ったかと思えば、尾身氏は「(行動制限を要請する)緊急事態宣言や重点措置は意味がないと思う。一番はワクチン。若い人は換気の悪いところではマスクをするということ」と発言するなど足並みはそろわず、それでいて、マスクなどの行動制限に重きを置く姿勢、および、若い世代が感染を広げる根源であり、それをマスクで防ぐべきとの認識は不動の状態です。

海外に暮らす私には、学校での黙食やマスクの話は、日本のニュースでしか知りようがありません。それが今でも続いているのかも、それは建前で、実際には以前と同じように食事中おしゃべりを楽しんだり、マスク無しで遊だりしているのかも分かりません。
 
ただ1つだけ言えることは、日本には、国として社会として、子どもたちに一刻も早く、友達の顔が見える、食事中もおしゃべりができる当たり前の学校生活を戻してあげようという気がないことです。

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